ごく僅かに残された痕跡を慎重に辿った。その先に何が仕掛けられているかもわからない。 …相当怒らせてしまったから。 足跡もチャクラも…簡単に完全に消すことができるのに、それをわざわざ残しているという時点で、恋人の本気をひしひしと感じて冷や汗をかいた。 この糸のように細く、それでいてわざとらしく残された気配にはきっといくつかのフェイクも混ざっているはずだ。 トラップに誘い込むために自分自身を餌にすることくらい平気でやる。 場合によっては死ぬか生きるかってとこまで行く可能性だってある。 手加減無しの本気の恋人を相手にするのは、二つ名もちの俺にとっても分が悪い。 惚れた弱みってやつ抜きにしても、だ。 「もー…折角休みでいちゃいちゃできると思ったのに…!」 自業自得とはいえ、悪態をつきたくもなる。 啖呵切って飛び出した恋人を追いかけて初めてから、これまで何個のトラップをみつけたことか。 相変わらずの手際の良さには舌を巻いたが、なによりその凶悪さが恐ろしい。 殺傷力もさることながら巧妙に仕掛けられたそれらは見事に景色に溶け込み、真剣にならなければ見つけることすらできない。 引っかかれば俺でも確実に行動不能になる。それもきっちり死なない程度に。 これら全てを解除したのはもはや意地だが、相手もそれを分かっていて仕掛けているに違いない。 チャクラも精神力も消耗した体に鞭打って、それでも俺がこの勝負から降りないことも読まれている。 ほんと…なんで中忍やってるんだか。 元々は俺の背を預けられるほどに強い人だというのに、己の信念の為にあの深い闇の中から…俺のそばから、一度は逃げられてしまったとはいえ、その腕は少しも衰えていない。 いや、いっそ鋭さと巧妙さの中に、こっちの心理を読んだように挑戦的な仕掛けまで仕込んでくるなんて、アカデミーってのはひょっとして恐ろしい所なんじゃないだろうか。 普段あんなに鈍いくせに。気づいて欲しいことには気づかないくせに、気づいて欲しくないことには必ずといっていいほど気づかれてしまうのだ。 元々負けん気が強くて情に厚くて、悪く言えば短期、よく言えば…即断即決の人だ。 今回の件だって、いい訳も聞かずに怒鳴られて逃げられて…そりゃ、俺にも非はある。 今も昔も…あの人が一番嫌っていたことをしてしまったのだから。 「だからって、怪我人相手にやりすぎでしょ…?」 途切れることの無い罠にはいい加減飽き飽きした。 欲しいのはこんなんじゃなくて、あの人の…。 「怪我人だっていうなら、こんなんで根ぇ上げる位なら、隠すんじゃねぇよばーか」 ふわりと背後に降り立ったのは、あの頃からずっと恋焦がれている人。 「だって…」 「心配させんなって言いましたよ?確かに。だからって隠せなんて言ってねぇ。怪我すんなってことです!」 どうしてこうも男前でかっこいいんだろう。…言ってることはむちゃくちゃだけど。 「それじゃもう怪我しちゃってるのにどうしたらいいのよもう」 「…次が無いようにがんばってください」 アレだけ勇ましく文句も言えばトラップだって随分とえげつないことしてくれたのに。 とたんにしょんぼりして泣きそうな顔なんてされたら、そんなこといわれたら…がんばるしかないじゃない? 「がんばるから、それでも怪我はしちゃうかもだけど」 「そうしてください…!」 ぎゅっと抱きすくめられて、アンダーにしみ込む水気に、大事な人を泣かせてしまったことに気がついた。 欲しかった体温。…でもこんな風に泣かせたかったわけじゃない。 「泣かないで?…ベッドの中でならいくらでも泣いていいけど」 「馬鹿野郎…!反省、してますね?」 「うん」 「…じゃあ、帰りますよ。飯食って風呂入って、手当てしてやるからとっとと寝ろ!」 「えー?」 「つべこべいうんじゃねぇ!」 「はい…」 どうやら夢にまでみたいちゃぱらは残念ながらお預けになりそうだ。 でも。 「おかえり」 泣き笑いを浮かべた恋人を今度こそ抱きしめ返して、それから。 「帰ろ?それから…いっしょにいて?」 うなずいてくれた人が愛おしくてならない。 …ああ、愛されている。 ちょっと愛情表現が過激だけど。 この人と共にあるために、これからも色々気をつけなきゃなぁと思ったのだった。 ********************************************************************************* 適当。 いちゃいちゃしてるうちに押し倒しちゃってまた大変なことになればいいと思います(*´∀`) なみに変態さんなアンケート実施中です。お気が向かれましたらご協力をお願いいたします。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |