誕生日特権7(適当)


これの続き。




ケーキ片手に息せき切って男が帰ってきたのは、それからすぐのことだった。
「ケーキ買ってきました。あ、あとらーめん好きなんですね?一楽ってとこがいいって。怪我が治ったら行きましょうね?出前はやっていないらしいので」
にこにこしながら買い込んだものをせっせと片付けている。
探るまでもなく、態度には一切の変化がない。
出かけたときの舞い上がり具合そのままに、冷蔵庫にケーキが入っているらしい白い箱と、それかららーめん…か?あれは。
どこまでも予想外な人だ。
「あの、俺が祝う側ですから!…これからちょっと家に帰ってお祝いに使えそうなものを取ってきます」
自分で自分の誕生祝い買ってきちまうなんて本末転倒もいい所だ。
せめて最後まで話を聞いてもらえればなんとかできたんだが、あっという間に飛び出してったからなぁ…。
とにかくこんなに楽しみにしてるみたいなのに、なにもなしってのは流石にかわいそうだ。
この人とは名前すらきちんと知らない関係だし、当然好みなんて知らないが、せめてもう少しだけ祝ってあげたかった。
確か三代目はカカシと呼んでいたっけ?
「あ、駄目ですよ!そういえばちゃんと寝て…ませんでしたね。食器なんて俺が洗うから寝てなきゃ駄目でしょ?」
いいざま抱き上げられていた。
上背のある方だから、勿論目方もそれ相応にある。このひょろっとした人よりもしかして重いかもしれないくらいだ。
それをぬいぐるみのように持ち上げて…まあこの人上忍かなんかなんだろうけどな…。
ベッドにそっと下ろされて布団もかけられ、大事に大事にされているのは分かるんだが、別の意味で辛くなってきた。
情けない。怪我をしたことも、祝えないことも、あの子を守りたいのにあがくことしかできないことも。
自分が何も出来ないような気がしてきて、視界が滲む。
なにやってんだ俺は。こんな所で挫けてられないってのに。
「やっぱり熱でちゃいましたね。ま、あれだけ怪我してれば当然でしょうが」
首筋に手を当てた男が、撫でた忍の顔で俺を見る。
おかげで情けなさも倍増だ。この人はこんなにも冷静なのに。俺は。
「熱…?」
思考がどうにもまとまらない。
ふわふわと地に足が着かない、むずがゆいようなこの感覚。
「はしゃぎすぎましたね。薬飲んで?…起きたらお祝いしましょうね…?」
薬を取り出し口に放り込まれても、口移しで水を与えられても、もう動揺することもできなかった。
この人キスが好きなのかもしれないと思うくらいで。
「おい、わい…名前…ケーキに…」
薬のせいか急激に意識は散乱し、残ったごく僅かな思考力でのは祝わなくてはとだけ思った。
「ああそういえば、名前。ちゃんとバースデープレートっていうのつけてもらいましたから」
安心して寝ろとばかりに頭を撫でられた。じいちゃんには昔から良くこうして撫でてもらってたけど、こんなにでかくなってからされたのは初めてかもしれない。
「さ、眠って?…色々準備もしておきますから」
準備、準備ってなんだ?
この人にそんなことさせて大丈夫だろうか。
不安すらもじわじわと侵食され、少しずつ意識が沈んでいく。
…結局、俺はその抗いがたい眠気に屈服した。


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適当。
ねむいです。
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