誕生日の被害者(いじめっ子)

そのまんま、いじめっ子の誕生日計画に巻き込まれた被害者の独白編をそっとおいときます。

確かに頼まれたことは頼まれた。
「ココ行って、ソコにある荷物をうみのイルカの家まで運ぶこと。」
…それが賭けに負けた俺への命令だった。
今考えると最初から仕組まれてたにちがいねぇ。
ただ…あいつの性格を知ってて、それでも下らない賭けに乗ったのは、最近の様子がおかしかったからだ。
子どもたちのなんとなく察知して、不安そうな顔で俺に相談にきやがった。
…だから、任務帰りのアイツを捕まえて飲みに誘った。
こいつのことだから、上忍師のことでも任務のことでもなく、…イルカのことでうだうだやってるのは想像がついた。
飲みに誘っても普段なら着いてこないくせに、その日だけはついてきて、騒ぐでもなくただ静かに酒を飲んで…欠片もたのしそうじゃねぇから面度くせぇと思いながらイルカの方に掛け合ってみようかと思っていたら…。
「ねぇクマ。賭けしない?次店に入ってくるのが女か男か。」
チラッと見ると、こっちに視線もよこさずにただ淡々とソレだけ口にして、カカシは手に持った杯を弄んでいた。
「なんだよ?別にかまわねぇけど。」
「じゃ、俺は女。」
「なんだよ選べねぇじゃねぇか?」
「別に。いやなら止めれば?」
「わかったよ。…なら、俺は男だ。」
正直こんな賭けどうでも良かった。ただ少しでも頭を冷やすきっかけになればそれでいい。
賭けなんか言い出すくらい、ちったあ回りに目がいったんなら、先に答えを選ばれて、真っ当な賭けじゃないのがばればれでも乗ってやる。
…その余裕が結果的に面倒ごとを引き寄せたんだけどな…。
「あら。珍しいわね?」
「紅!」
店に入ってきたのは、いたずらっぽい笑みを浮かべた紅だった。
ってことは…。
「俺の勝ちね。じゃ、これ。」
「…何だよコレ?」
確かにカカシの勝ちだ。だが、手渡された紙切れには木の葉のどこかの住所が記入されていた。これが賭けと何の関係があるのかさっぱり分からない。
「賭けって言ったでしょ?ココ行って、ソコにある荷物をうみのイルカの家まで運ぶこと。」
命令しなれたカカシらしい物言いだが、ようするにこれは…。
「罰ゲームか?まあいいけどよ。何で…」
「じゃ、帰るけど。それちゃんとやってよね。」
「あ、ああ。」
事情を聞きだす前に、カカシはさっさと帰って行った。
手の中の紙切れには、何度見直しても知らない住所しか書かれていない。
それだけでもイラつくのに、ソレを横から覗き込んで、紅がイタズラした子どもを見てるみてぇにくすくす笑ってるのも気に食わねぇ。
「なんだよ?グルなんじゃねぇだろうな?」
「子どもの相手も大変ね?」
その笑顔が呆れたようでいて慰めを含んでいて…まあそれから紅とそれなりに楽しい時間を過ごした。
仏頂面のガキと酒を飲むより、惚れた女と飲む方がいいに決まってる。
だからまあ…アイツのことは一応許してやるつもりだったんだが…。
*****
「誕生日プレゼントだから大事に運べ。…なんだこりゃ?」
注意書きらしきものはそれだけだ。
目の前の箱は確かにプレゼントらしく赤いリボンが巻かれているが…。
中から感じるのは誤魔化されてはいても生き物の気配。
…ってことは、コレは十中八苦。
「アイツか…!」
何を考えてこんなコトをしでかしたのか分からないが、できれば係わり合いになりたくない。
きびすを返そうとした途端、箱から殺気が噴出さなければそのまま帰っていただろう。
「ちっ!」
このままだと、最近イライラし続けていたカカシの餌食にされかねねぇ。
そもそも強い分頭の螺子がどっかぶっ飛んでる相手に、無駄な仏心出したのが間違いだった。
…そう後悔しても目の前の現実は変わらない。
俺が運ぶ先にいるだろう気のいい中忍を思い浮かべると、それだけで良心がうずいた。
それでも…俺には箱を運ぶ選択肢しか残されていなかった。
*****
驚いた顔で箱を受け取った…というか、押し付けたんだが。
まあとにかく、その時のイルカの様子が心配でついつい慰めの手がでたら、それだけで箱の中のアイツが暴れだした。
そういや、あいつの前でイルカの名前呼んだだけでも殺気飛ばされるからな…!
自分のしくじりをしみじみ感じつつ、とにかくさっさと逃げるコトにした。
「誕生日プレゼントだってよ!開けるだけ開けてやってくれ!」
…きっとあとはイルカがなんとかするだろう。
狐っこもカカシも、アイツの前じゃただの子どもだから。
寂しそうにしてたイルカも、多分あいつを待ってたんだろう。
なるようになる。そう思って肩の荷が下りたと思ってたんだが…。
*****
俺はアイツの中身は子どもでも、身体はしっかり大人だってことを忘れてた。
あれからイルカは何日か休みを取らされてたあたりからもその辺は良く分かってたつもりだったんだが…。
あれ以来、カカシの殺気が無駄に俺に向けられるようになった。
またイルカがそれに気を回すもんだから、ムキになってんだなあの馬鹿。…無駄に威嚇してきやがる。
まあ、それなりにイルカもしょうがなさそうな顔しちゃいるが、概ね幸せそうにしてるし、何よりあの馬鹿が落ち着いたから面度くせぇけどいいってことにしとくさ。
俺の傍らで…
「馬鹿ねぇ?でも…そういうとこも、好きよ。」
なんて笑ってくれる女がいるからな。

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本編に入りきらなかった何かを拍手ド粗品にぶっこんでおきます!←相変わらず適当。
…もしもご意見ご感想がございましたら、お気軽に拍手などからどうぞ…。

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