炊き出し(適当)


「ねぇ。もっと頂戴」
「は、はいどうぞ」
「ん」
炊き出しは基本的には平等だ。
食いたいだけ食えるかっていうと流石に無理だが、上忍だろうが下忍だろうが区別なく同じものを食うし、おかわりをしたい時は各自に回った後なら自由にできる。
秋道一族がいるときはそれを見越して多めに作ることもあるほどだ。
ただその平等は…まあ建前上はってやつなんだが。
上に立つ忍ほど警戒心が強い。
つまりわざわざこんな所にまで出てこないことの方が多いわけだ。
毒見はきっちりするし、匂いの強いものなんかまず作らない。
だがそれでも大抵の上忍は、兵糧丸にたよるか、携帯食を選ぶ。
全員が同じもの食って倒れたら危険だからある意味利に適っちゃいるんだが、常々もったいないと思っていた。
ほっくほくの芋、あつあつの汁物、そして炊き立ての飯。
その全部を諦めなきゃいけないなんて。
食い意地の張った自分には、到底我慢できそうにない。
でもだな。普通に考えて今回の客はちょっと所でなく驚かされた。
…暗部が炊き出し並んでるのなんて始めてみた。中忍暦は結構長いのに。
まあ見たところ若そうだし、育ち盛りに飯って重要だよな。っていっても、面かぶってるから怪しいもんだ。実際のところは年なんてわからない。
でもほそっこいもんなぁ。この人。ちゃんと食ってんのかなぁ。
なんとなく不憫に思って、盛りは大分おまけしておいた。
暗部が怖いからってわけじゃないぞ!確かに声を掛けられたときはちょっと怖かったのは否定しないけど!
「はいお待たせしました!」
お椀を手渡してみたものの、これからどうするんだろう。
よく考えるまでもなく、面なんかつけてたら食えないだろうに。
この人たちは完全に別部隊扱いというか、野営している場所も違う。
冷めちゃわないといいなぁ。
不憫に思って思わずじっと見つめすぎたかもしれない。
「どしたの?」
「あ、ああいえ!なんでもありませんです!」
慌てるあまり言葉が変になったが、驚かれることに慣れているのか、暗部の方は特に慌てるわけもなく話しかけてきた。
「ごはん、ちゃんと食べてる?」
「え、ええはい。大丈夫です!」
というか炊き出し担当に回ると、こういうとこじゃ偵察だの見張りだのの関係で時間差で飯を食うことが多いから、延々と飯を作ることになる。
そしてその都度大なべ一個一個味見して回るから、結構腹は膨れる。毒見もかねてるからサボるわけにも行かないしな。
…とかいいつつ自分の分はちゃっかりキープしてある。空腹は敵だ。満腹も動きが鈍くなるから敵だけど。
「そ?ならよかった。じゃ、貰ってくね」
「はいどうぞ!足りなかったらまた取りに来てください」
そうか。俺のことまで気遣ってくれるなんていい人だなぁ!
なんとなく和んでしまった。今度もまた大盛りにしてあげよう。
そう独り決めしたんだが。
…翌日から毎日きっちりやってくるようになるとは思わなかった。
仲間のための食事だから手を抜いた覚えはないが、毎日毎日けなげな暗部がやってくると思うとなんとなく気合が入る。
「はいどうぞ!」
「ありがと」
今日も今日とてたっぷり盛りだ。おかわりにくることも少なくないが、やはり俺たちより多忙なのかこないときもある。
そういう時は次にきたときしょんぼりしてる気がするから、ついつい盛が多くなりがちだが、特に文句を言われることはないからいいんだろう。上官にもアレはうみのに任せたとか言われたのには腹立ったけどな。
「ねぇ。明日でここ、終わりだよね」
「え!あ、あぁ。そうですね。その見込みです」
作戦も終盤に向っている。あと少しでこの部隊も帰還できる。
「…俺の飯、これからも毎日作ってくれる?」
傍若無人な依頼だと言えなくもないんだが…そのときの暗部があんまりにもしょぼくれた気配がしたから、つい頷いていた。 通常部隊に飯を食いにくるほど飢えてるんだもんな…。俺の男料理でよければ食い扶持一人位ならなんとでもなる。一楽ラーメンにも連れて行ってやってもいいし。
「俺で、良ければ」
笑顔で快諾したのはその程度の理由だったのに、なぜかは知らないが、どこからともなくわらわらと暗部が湧いて出るとは思わなかった。
「おめでとうカカシ!」
「先輩!よかったですね!」
「成就した…!感動だな!」
なんだこれ。一匹見たら三十匹なのか。獣模様の面っていろんな種類あるんだなぁ…。じゃなくて!
「あのう。どうしたんですか?」
「んー?ま、それはまたおいおい。…いくぞ。とっとと片付けて里へ帰る」
「へーへー」
「そうですね!あとちょっとがんばりましょう!先輩のためにも!」
「すばらしい!さあゴミ掃除だ!」
口々に好き勝手なことをいったと思えば、あっという間に姿を消していた。
…なにがなんだかわからないが、まあとにかく飯を食いにくるのは確実だということは分かった。
「なんだったんだ」
呟きはふわりと漂う湯気の中に消えて、俺の疑問は晴れそうにもなかった。


その後、どうやらそれがプロポーズのつもりだったらしいことを、夜這いに来た暗部のおかげで身をもって知ることになった。
もっと分かりやすく言えよ!
思わずぶん殴りながら怒鳴りつけてしまったものの、そこから気付けばじわじわと外堀を埋められ、なんだかんだと今に至るまでお付き合いってやつが続いている。
まあ最近じゃ交代で飯を食い、お互いの手料理に…愛情たっぷりのそれに満足してるから、縁ってのは不思議なもんだなぁと思っている。


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適当。
ねむい。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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