「食べ過ぎは体によくないんだっけ」 ぐったりと体を投げ出してベッドの上で伸びている人には、この呟きも聞こえていないだろうか。 本当は体を清めてあげた方がいいのは分かっているのに、太腿を伝う白い液体や、体中に散った赤い痕、それから鳴かせすぎて赤く染まった瞳の縁…情事の激しさを物語るそれらを洗い流して覆い隠してしまうのが勿体無くて中々動く気になれない。 人を食べ物にたとえるなって怒られそうだけど、この人はあまりにもおいしすぎるから。 俺自身を奥深くまで飲み込み、出て行くなとばかりにきつく締め付け引き止める体は勿論、いつだって我慢できずに半ば強引に押し倒して好き放題にする俺を受け入れてくれる心も、俺が上忍で写輪眼もちでも、容赦なく説教してくるそのまっすぐさも…それから、何があっても諦めないでくれるその強さもその全部が俺を捕らえて離さない。 心が先につかまって、体でそれを無理やり伝えた。…っていうか、押し付けた。 好きだと囁き、強引にその体を開いた俺に怯えるでもなく、翌日一番に俺に投げかけられたのは怒りだった。 殴られたし蹴られたし、まあよろよろしてたから痛くもなんともなくて、むしろ痛そうに顔をしかめるのが心配で、ついつい抱きしめてかみ疲れたりもした。 そんなことされたら思わずまたその気になっちゃって。…きっとそれが顔に出てたんだと思う。 でも、そのときだけだ。一瞬だけ怯えた顔をされたのは。 その後すぐに怒号とともに拳が振り下ろされて、朝まで説教されたっけ。 …なんでそんな状況でこの人がほだされてくれたのか、今でも不思議でならない。 説教されながら壊れた機械みたいに好きですって言ってたせいだろうか。 怒鳴りつけられても、かわいそうな人を見る目で見られても、その全てが愛おしくて、仕舞いには殴られても好きだって言ってた気がする。 指先が好きだ。くるくる変わる表情も、いつだってまっすぐな所も、ちょっと抜けてるところも好きだ。 押し倒すと最初はいつだって驚いた顔して戸惑うくせに、快感を拾い始めると涙を流しながら悶えて自分の感覚に怯える所だって大好きだ。 我慢なんかできるはずもない。…明日もきっと、この人に怒られるのは確定だ。 任務続きでやっと家に帰ってこられたと思ったら、この人が気持ち良さそうに寝てて、ご馳走が転がってるようにしか見えなくてそのまま飛びついてそれはもう隅々まで舌を這わせて味わって、鳴かせて痕を残してそれから…一回出させてぐったりした所に突っ込んで、つい今さっきまでどろどろになるまで交じり合っていた。 朝の気配がもうすぐ近くまで来ている。 …この人のシフトが休みだといいけど。 我慢しろって言わなかったから、いいって事にしたい。でもそんな台詞をいう隙さえ与えなかった気もする。 「おいしすぎるんだもん。無理だよねぇ?」 あともう少しだけ、この時間を堪能しよう。 しどけなく横たわり俺の傍らで眠る人が、自分のモノなのだと感じられるこの時間を。 「お預け食らったら、またやりすぎちゃいそう」 与えられる罰がどんな結果になるか分かっているのに、この人はまた同じ失敗をする。 …きっとまたこの人は盛大にいい声で鳴いてくれるだろう。 あどけない寝顔にキスを落として、不埒な自分に目をつけられたこの人の不運を少しだけ哀れんでおいた。 ********************************************************************************* 適当。 傲慢な恋人をもつと苦労するということで。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |