襲撃者の野望と希望について(適当)

寒くて寒くて、どうしようもなくなったから。
「イルカ先生ー!お邪魔します!」
絶賛口説き中の大好きなイルカ先生のおうちをちょっと襲撃してみることにした。
「わー!?な、なんだ!?誰だ!?」
驚いてる顔もやっぱり可愛い。
完全に寝てるところを襲ったから、まだ頬に残るよだれが光っている。
うろたえてじたばたしてる所なんか抱きしめてしまいたいけど、とりあえず。
「イルカせんせの寝起きって、無防備すぎて心配…」
どうしてくれよう。
襲っておいて言うのもなんけど、こんなに無防備で許されるの?
寝相が盛大に悪いのは知ってたけど、パジャマなんかこの寒いのに肌蹴ちゃってて、風邪引いちゃうのも怖いけど、不埒な輩が忍び込んで来たらどうするつもりなんだろう?
ま、日夜俺が見守ってるから大丈夫なんだけどね?
どんなに高ランクの任務でも、帰って来てさっき俺が侵入してきた窓から、そっとこの人を見つめられるだけで心が和む。
…思わず前かがみになる位には。
因みに任務がある日はちゃんとうちのかわいい忍犬君たちにお願いしてるから、何かあったらすぐ分かるんだけど、やっぱり生で見るのと、犬伝いに聞くのじゃ潤い具合が断然違う。
「…って!あ、あんぶ…?名乗らなくていいから出てってくれ…っ!」
怯えているのか、泣きそうな顔がたまらなくそそる。
パジャマから覗く寒さでちょっとだけ尖った乳首もエロい。
今日はとてもとても寒くて、しかも任務はいつも異常に鉄さびと悲鳴まみれで仲間だって怪我をした最悪なシロモノで…だから、いつも通り窓ガラスから覗き見るイルカ先生に癒してもらおうと思ったんだけど。
ベッドの上で爆睡しているイルカ先生が可愛い顔して口半開きにして寝てるし、ぎゅーっと布団なんか抱きしめてるから我慢できなくなっちゃったんだよね。
見つめているうちにどんどん…それこそ耐え切れないくらい寒くなったから、忍にとってはおもちゃ並みにちゃちな鍵を外して、後は目標に一直線したって訳だ。
ま、飛び込んでみて正解だったとは思う。
慌てる寝起き姿なんて貴重すぎるよね!
「寒くて…あっためて?」
そっと手を握ったら、寝起きの温かさがふんわりと俺に優しい熱を運んでくる。
触れているのは指先だけ。
ちょこっとだけぬくもりをもらえたらそれでいい。
…後は、記憶の中から俺を消すだけだ。
そうすれば、きっとまたどうしようもないくらい寒くなったときに、触れられる隙を残しておけるだろう。
でもやっぱり離し難くて、ちょっとだけ…本当にちょっとだけでいいから抱きしめちゃおうかなーと思った矢先、イルカ先生が叫び声を上げた。
「え?あー!アンタ…っカ、カカシ先生…!」
あ、ばれちゃった?ま、木の葉に銀髪の人間はそんなにいないし、我ながらこの髪型ってどうなのよと思うくらいに逆立ってるしね…。ま、父方の遺伝だからどうしようもないんだけど。
「…ごめん、ね?」
印を組もうとする俺を、凄まじい衝撃が襲った。
「なにやってんだあんたは!?」
見事に脳天に振り下ろされた拳は、容赦なく俺の脳を揺さぶり、くらくらする。
…えーっと。まあ怒るのはしょうがないよね。記憶消すの、お説教聞いてからにしようかな。怒った声も可愛いし。
「ゴメンなさい」
しらじらしかっただろうか?一応しおらしくしたつもりだけど。
…そもそも面をつけているから、顔なんて見えないか。
「はぁ…。ストーカーまがいのことばっかりやらかすと思ったら…!寒いならストーブでもなんでもだせばいいだろ!」
言い分は至極最もだ。当然で当たり前だ。
でも、ダメだ。だって。
「あのね?イルカ先生。部屋中暖房かけて沢山沢山温めたけど…やっぱりだめだったよ?」
寒くて寒くてたまらなくて、いつも通りイルカ先生のうちに行く前にシャワー浴びてきれいにして、それでもどす黒い何かがまとわり着いているような気がして。
ふっと、イルカ先生に会いたいなーって思ったら、もうダメだった。
部屋中馬鹿みたいに暖めたのに、震えが来るほど寒いのだ。
だから、ちょっとだけ、本当にちょっとだけでいいからそのぬくもりが欲しかったんだ。
「…あー…とりあえず、非常識な訪問の仕方はいただけません」
「ゴメンなさい…」
お説教モードもかっこいい。謝る気持ちも本気だけど、もっと俺にかまってくれないかなっていう方が強かった。
じいっと面のおくから見つめたら、ぐいっと引っ張り上げられた。
…ベッドの上に。
「いいからこっち来なさい!…それ、邪魔だから外していいなら外す!」
きびきびと指示されて、言われたとおりに面を外したら、ささっと取り上げられてナイトテーブルに置かれてしまった。
そして。
「アンタ、ソレ、多分寒いせいじゃないんですけどね。…今日だけですよ?」
子どもみたいに抱きこまれて、驚くよりも先にそのぬくもりにウットリした。
イルカ先生の温かさに甘えて、暴走しそうな下半身の方には我慢するように言い渡して、ドサクサ紛れに抱きついてやった。
一瞬強張った体は、溜息と共にすぐに弛んで、多分、眠りの世界に旅立とうとしているんだろう。
この状況自体が夢みたいで信じがたい。
だがどうやら、俺も一緒に寝てもいいらしい。
「あったかいです…イルカせんせ」
「ん。さっさと寝なさい。アンタ明日は遅刻なんてさせませんからね…?」
「はい!…おやすみなさい」
同じ布団にくるまって、ゆるやかに訪れる幸せな眠りの予感がひたひたと俺を満たす。
多分、寝ぼけてるんだと思うんだけど、それでも…今だけは、この幸せは俺のモノだ。
記憶を消すかどうかは、この人が起きてから決めよう。もしかすると…恋人になるための偉大な第一歩になるかもしれないんだし。
緩やかに沈む意識まで包んでくれそうな体にいつか己を刻み込む日を夢見て。
…俺は、あふれ出してくる温かさを零さないようにぎゅっと抱きしめたのだった。


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適当ー!
さむすぎるだろ!と叫びたくなったので。

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