酒乱(適当)


「あー…やっちまった」
さんざっぱら迷惑かけられて辟易していたのは事実だが、流石に上忍相手にここまでやったら不味いだろう自分。
まあやっちまってから思っても手遅れなんだけどな…。
「ひ、酷いですイルカせんせ…!なんてことを…!」
ベッドの上でさめざめと泣く上忍には、少しも悪いと思っちゃいない。
とはいえ規律ってものがある以上、責任は取らねばなるまい。
一応、型どおりに行くなら。
「すみませんカカシ先生。俺酔っ払ってておぼえてないんですが…」
常套句を口にして、これ以上ないくらい困った顔を見せれば、この状況だ。大抵の忍なら係わり合いにならないことを選んでくれる。
そう、大抵の忍は、だ。…この男がこの程度のことで引いてくれるとは思えない。
「おぼえて、ない…!?」
眼を見開いて驚いて、ついでに何事かぶつぶつと呟いている。
まさか上忍のくせに打ち所が悪かったんだろうか。
ベッドの上は散々な有様で、随分暴れたのは確実なんだが、実際途中で意識が怪しくなったのも事実なだけに、どれほどのことをしでかしたのかは正確には覚えていないのだ。
逃げ惑う上忍が怯えた様子で女のようにきゃーなんて叫んだ所とか、ひん剥いたら真っ白な肌に薄赤く散る傷跡がなかなか綺麗で、思わず…ああそうだ。多分舐めた。
顔も体もしっかり男だが、なんかこう…綺麗だからいいかって気になったんだよなぁ…。
こういう絡み方をしたのは初めてかもしれない。
普段はたっぷり逆にセクハラ染みた絡み方されてるんだから、まあいいってことにしておいてもらいたい。しらふじゃない自分に絡むと危険だということは、しっかり言い渡しておいたのだから。
「あのう。そんなわけですので、今日のところはお引取りいただけませんか…?…失礼かとは思うのですが、自分でも何が起こったのか整理したいので」
にこやかに提案してみたものの、上忍はなぜか興奮した様子で人の上に覆いかぶさってきた。
「責任!責任とってください!俺を弄んだ責任!」
何を言い出すかと思えばそんなことか。…もてあそぶ…そういう意味で舐めたんじゃないんだけどなぁ。
なんだか美味そうに見えただけなんだ。まあついついピンク色の乳首とかまで舐めてみたのは不味かったかもしれないが。当然のことながらあんまり美味くはなかったし。
酒乱。一言で言えば自分はそれにつきる。
一定以上飲むと、理性のたががはずれ、本能のみで行動するから危険極まりない。
戦場のど真ん中で酒を飲まされて、気がつけばあたりが焦土になっていたこともあった。
火遁と土遁と訳の分からない体術で、どうやら敵の全てを抹殺してしまったらしいという話を、後になって怯える部隊長から聞いた。
当時の記憶では、敵に囲まれてどうせ生き残れないなら最後にとやたらに強い酒を無理やり飲まされたところまでしか残っていないのだが。
「わかりました。…えーっと、で?俺はなにしちゃったんですかね?」
ひん剥いて舐めて泣き出したから面白くてくすぐってみたあと、絡んでるのに相手がしらふなのがつまらないからと頭から酒ぶっかけてそれからシーツで拭いて…あとどうしたんだっけ?
アレ以来多少加減というか…覚えておけるように努力した結果、記憶が跳んだのはごくわずかだ。
今回はうっかり加減を忘れて途中からすっかり覚えていないんだが…さて、どうしたもんだろう。
「ちゅー!ちゅーしました!ちゅーしたんだから結婚!結婚してください!」
いまどきどこのお嬢さんだっていう物言いを、いい年した上忍がするとは思わなかった。
性に関する倫理観なんて、戦忍やってりゃゆるくなるはずなのに、変わった人だ。
「結婚…いいんですか?」
俺も相手も男だってのは…まあこだわって無さそうだけど。
殆ど俺のことなんて知らないだろうに。
「イ、イイに決まってるじゃないですか!」
物好きな人だ。自分のこの性癖もあって、今まで付き合ったことはあってもそこまでいったことはない。
まあ、いいか。どうせ上忍相手だ。すぐにこのお遊びにも飽きるだろう。
「では、お付き合いから始めましょう」
そう口にした途端、きらきらした眼で飛びついてきた。
「他の人とお酒飲んじゃだめですよ?…あと、今度は入れさせてくださいね?入れる寸前にねちゃうんだもん!我慢するの大変だったんですよ!」
力いっぱいそう語る男の口ぶりからすると、どうやら貞操の危機にあったようだが…。
いや、意識があったらこの人多分血の海に沈んでるだろう。多分。
…でも必死でかわいいなーなんて思った記憶もあるから、なんとかなるだろうか。
「そうですか。まあお付き合いしてお互いしたいと思えればいいですね」
さらーっと流してベッドに再び潜り込んだ。
一安心したせいか眠気が限界だ。…後片付けは朝でいいだろう。
「え!ちょっ!イルカせんせ!?」
「おやすみなさい」
とっとと眠りに落ちた瞬間、きゃいきゃいと騒ぐ男の声が聞こえた気がしたが、さっくり無視することにした。
「イルカせんせの馬鹿―!…でも好きー!」
しがみ付いてきた体温はひんやりとしていて眠るにはちょうどいい。
意外といいもの手に入れたかもなぁ。
幸せってのがどんな形をしているかは知らないが。
そう一人ごちて、変わったイキモノを懐に抱きこんだ。
とりあえずは睡眠という幸福を味わうために。


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適当。
アホの子上忍と天然黒中忍による意思の疎通のない恋愛。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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