誕生日(適当)



不意打ちにも程があると思わない?
「お誕生日おめでとうございます」
挨拶くらいはする関係だ。
…もっというなら、挨拶程度の関係だ。
それなのにこの人に惚れたのは俺で、顔見知りの上忍としてしか見てくれていないだろうに、未練他らしく視線だけで追いかけ続けていた。
この笑顔を向けられたら、誰だって欲しくなる。
「ありがとうございます」
上手く笑えているだろうか。
湧き上がるこの黒い衝動がもれ溢れてはいないだろうか。
「あ、あの!それでですね。…今日は、これからご予定はなにかありますか?」
照れたときや緊張したときに鼻傷を掻くのはこの人の癖だ。
そんなことまで覚えてしまうほどずっと見ていたのだと、我ながらその執着に身震いする。
知り合いの係累のいない男なら、誰でもこうして誘うんだろうか。それとも別の何かか。
「いーえ。寂しい一人もんですからね」
予定がないなんていってどうすんだろうね。俺は。
酒でも飲もうなんていわれたら、どうにかして潰して俺のモノにしてしまう自信があるのに。
…そうしてもう二度とどこにも行かないように、首輪でも術でもなんでも、どんな手を使ってでも俺の元から離れられないようにしてしまいたい。
そんなの最低だと分かってる。
でも、俺なら許される。階級ってのはこういう時便利だ。
今までみんな俺の手から零れ落ちるようにいなくなってしまったんだから、この人一人俺のモノにして何が悪いの?
そんなことばかりが頭を過ぎって、今なら誰も目撃者もいないだろうし、丁度いいとまで考え始めていた。
「よっし!じゃ、俺んち来てください!」
「え」
「あ、そりゃ多分カカシ先生の家に比べたら多分狭いですけど、掃除はちゃんとしてあります!」
胸を張って言うのはそこですか。相変わらずかわいいっていうかなんていうか。
開けっぴろげで素直で悪戯小僧みたいな所があって、そのくせ驚くほど情が深い。
あーあ。ごめんね。イルカせんせ。もう我慢できないかも。
「いいの?」
「もちろんですとも!」
にかっと笑ってくれたから、これが最後になるかもしれない笑顔を網膜に焼き付けようと思った。
*****
「カカシせんせー!おったんじょうびおめでとう」
「おかえりなさい!」
「…食え」
なるほど。こういうことね。
どうして思いつかなかったのか我ながら不思議だ。子ども好きのこの人の考えることなんてすぐ分かるはずなのに。
「飾りつけは皆でやったんですよ!」
「俺さ!俺さ!そこのきらきらと、こっちのふわふわしたのと!」
「お料理は殆どイルカ先生が作ってくれちゃったんですよねー。でもほら!下ごしらえは手伝ったし、サスケくんがケーキのメッセージ書いてくれたんですよ!すごいでしょ?」
「おい。さっさと座れ」
拍子抜けしたお陰で、任務のせいで高ぶっていた欲望は大分おさまっている。
…ま、いっか。今はいてくれてありがたいよ。少なくとも歯止めにはなる。
目的は大方、俺の素顔がみたいってあたりか。ここまでがんばってくれたのは、それだけじゃないんだろうけどね。
「ん。ありがとね」
順番に頭を撫でてやった。子どもの体温は高いねぇ。一応恥ずかしがったり照れたりしながら喜んでくれたからいいか。
「さあ!食べましょう?」
今すぐ食べたいのはあんたですなんてことはおくびにも出さずに食卓についた。
誕生日なんてすっかり忘れていて、それくらいどうでもいいことだったのに、こうして祝ってもらえると、たとえそれがガキ共のためであっても嬉しかった。
…ま、もちろん素顔は見せてやらないけどね。ガキ共には。
「あ、あの、それどうやって食べてるんですか?」
「みえないってばよ…!?」
「ちっ!幻術か…!?」
「うわ…!カカカカカカカカシ先生!?なんでこんな綺麗な顔してんですか!?」
そりゃ惚れた相手の前じゃ、顔だって引き締まるってもんでしょ。
というか、顔はそうそう変えられないし、態々変化なんてしてないんだけど。
驚きすぎるとこうなるのか。覚えとこう。…いつかのために。
「見えてるのか!」
「え!なにそれ!どういうこと!」
「ずりぃってばよー!イルカ先生!どんな顔?なぁどんな顔してんだ!?」
「え、え!?」
んー。流石にこれ以上混乱させちゃ悪いか。
「ま、君たちも修行しなさい。この程度で見えないってことはまだまだってことだ」
「「「く…!」」」
全員一斉に悔しげに顔を歪めて俺を睨んできた。負けん気強いよね。うちの班。
「え、えーっとだな。かっこいい先生でよかったな!」
取り乱して変なこと言ってるのもかわいい。俺、かっこいいのね。それなら見込みはあるだろうか。
「今日は祝ってくれてありがとね。ま、来年位には俺を出し抜けるくらいになってて欲しいから、宜しくねー?」
「おう!負けねぇってばよ!」
「そ、そうね!来年こそは…!」
「覚悟しやがれクソ上忍…!」
「コラお前ら!…まあ修行は大事だけど、今日はそうじゃないだろ?ちゃんとお祝いするぞ!」
「「「はーい」」」
良い子のお返事しちゃってまあ。
…ま、この人の前だとみんなこうなるよね。
「今日の所は我慢しときますか」
来年の今頃まで、多分俺は我慢できないだろうけどね。
独り言には多分誰も気付かなかったと思う。
…俺の方を見て、不思議そうに首をかしげた人の他は。

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適当。
この後ちびっ子たちがおうちに帰ってからついむらむらした上忍ですが、トイレを我慢するのは良くないですよ?とかえ?違う?じゃ、じゃあ風呂ですか?イヤ、ホントに無理は駄目ですって!とか、真顔で言われて、そのド派手な天然砲の前に敗れ去ればいいと思います。
…しかしちゃっかり告白はしそうである_Σ(:|3」 ∠)_
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