溺れるひと(適当)

不健康な眠気だ。
情事で気だるい身体には、まとわり着くような疲労と、それからどうにもなれない甘い痺れが付きまとう。
罪悪感とも違う。
だが健全とは言い難いこのだるさに、どこか後ろめたさを感じてしまうのは自分が子の関係を受け入れきれていないせいだろうか。
「ん…もうちょっと一緒に寝ててよ…?」
そう言って背にへばりつく男がどういうつもりでいるのかは知らない。
少しだけ自分より温かく、自分よりずっと白い肌が触れて、無意識にか確かめるように蠢くその手に、かすかだがごまかしきれない疼きを感じた。
事後の余韻が抜け切らない体には、あまりにも生々しすぎる。
「あなたは寝ていてください」
振り切るように腕の中から逃げ出すと、それだけで妙に体が冷たくなった気がして苛立った。
この惜しみなく与えられる熱に、欲望に、感情に依存したいわけじゃない。
…手放し難いと思っている時点で、もう手遅れなのかもしれないとしても。
「だーめ。…俺が寒いでしょ?温めてよ」
白い手が俺を捕らえる。
いとも簡単にベッドに引き摺り戻されると、男との差を意識させられて空しさすら感じた。
最初に出会って、それからこうして組み敷かれるまで時間は掛からなかったように思う。
何を考えているのかある日突然抱きしめられて、それから…「欲しい」とだけ言われたのを覚えている。
いつも通りアカデミーからかえる予定だったあの日、縋りつくように伸ばされた手を振り払うことも出来ずに引きずり込まれた教室で、この男のせわしなく動く手に全てを暴かれた。
俺の返事など必要なかったのだろう。アレから何一つ変わったことはない。
…こうして男が俺の体を求めるようになったことのほかは。
「…飯の仕度があるんですけどね」
溜息をついては見たものの、男はこうなる前から甘えるのが上手い。
項にじゃれ付くように唇を落として痕を残し、言葉ではなく体でぬくもりをよこせと訴えてきた。
今は、ただ気まぐれにじゃれ付いてきているだけだ。いつかはいなくなる。
それを分かっていて拒まなかったのはどうしてかなんて。
…全部今更だ。
「イルカ、せんせ」
熱を帯び始めた声に、これから何が起こるのか悟った。
スタミナがないなどとよく言われる割には、男は行為に熱心だ。
それでなくても元々燻っていた熱を吹き飛ばしたいと思っていた。この際唆すように触れてくる男に流されるのも悪くはないだろうか。
「…ん…っ」
視線をあわせるでもなく触れ合う肌の感触に流されて、性懲りもなく兆しはじめた欲望に意識を任せた。
何かを考えるより、快楽に溺れる方がずっと楽で簡単だ。
「…いつになったら全部くれるの?」
興奮に掠れて、だがそれでも切なげな声の意味など考えるのは恐ろしい。
愛撫に変わり始めた口づけに、手に、全てに溺れながら、俺はゆっくりと瞳を閉じた。
…真実に気付かないために。


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てきとうー。
素直じゃない二人。
言葉が欲しかったイルカてんてーと、言葉なんかすっとばして全部欲しかった人の意地の張り合い。
ねむいのです。今起きたら変な時間…。
ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ!

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