「好きです」 そう告げたら涙ぐまれた。 「ウソつき…!」 その言葉は、まるで吐き捨てるように投げつけられた。 頬を伝う雫はキラキラと輝いてその整った顔を飾っている。 こんなに苦しげな表情、今まで見たことなんてなかった。 それに感じたのは勿論傷つけてしまったことに対する痛みと…それから驚きだった。 今まで飄々とした姿しか見たことがなかったから。 告白された時も、それに頷いた時も、いっそ淡白といっていいほどの無反応さで、本当に俺のことが好きなんだろうかと思った位、普段のこの男は反応が薄かった。 好きだと告げておきながら、そばにいても無表情で甘えるでもなく日々淡々と過ごしていた。 だから、俺が頷いた意味なんてきっと分かっちゃいないと思っていた。 好きじゃなきゃ、好きだとか付き合って欲しいなんていわれても頷かない。 たとえ相手が上忍だったとしても。 木陰でまどろむ姿を見るのが好きだった。 最初はその高名さなどまるで知らなかったから、教えられた大雑把で、だが恐ろしげな経歴位しか知らず、具体的にどんなに強いかなんて知る前に、この人の人となりを知ってしまった。 少しずつ挨拶を交わす程度の付き合いが、いっしょに飯を食うくらいにまで変わって行き、気付けば惚れていた。 上忍だからとかなんだとか抜きにして、この人の純粋でひねくれた性格が好きになってしまったんだからしょうがない。 ほこほこ近づいていってしまった自分が悪いのはよく分かっていたから、告げようなんて思わなかっただけで、本当はずっとずっと…きっとこの人が自覚するより長いこと好きでいた。 「だって、俺、こんななのにありえないでしょ…!」 だから、こんなセリフは許せない。 「こんななのにとか言うな。それでもあんたに惚れてんだよ!」 むしろそこがかわいいなんて言ったら怒るんだろうな。 愛の言葉が欲しくなかったかといわれるとそのあたりは微妙な話だが、体を重ねるだけの関係でも良かった。 すがり付いて眠る人が穏やかでいてくれるならそれでいい。 …それをもたらすのが自分で、俺以外にそれを許さないのだと知っていたから、それに優越感を感じさえしたのだ。 「これ、なんの冗談?なんでこんなものくれるの…!諦められなくなるじゃない!」 「しょうがないだろうが!ほ、他に思いつかなかったんだよ!」 指輪を贈ったのは、それでもこの人と過ごす日常が永遠であればいいと思ったからだ。 言葉じゃ多分届かないから、それでも伝えたかったから。 多分またこれも適当に扱われて終わりだろうと思ったけど、その手に所有の証を押し付けた。 「も、なんでよ!アンタ不器用すぎるでしょ…!」 「そりゃこっちのセリフでしょうが!」 けんか腰でにらみ合って、思い知らせてやろうと思ったら我慢できなくてキスを仕掛けていた。 ら、止まらなくなった。いろんな意味で。 「んっ…アンタ覚悟しなさいよ…!」 俺の服を追いはぎも斯くや戸ばかりに剥ぎとりながら男が笑った。 凄みのある笑顔に感じるのが欲と負けん気なんて笑える話だ。 「あんたこそな!」 にらみ合いながら混ざり合う俺たちには、言葉よりわかりやすく、素直すぎるほどに互いを欲しがっている。 ああ、手に入れた。 そう思ったのはどちらだったのか。 …それから、日々淡々と過ごす暮らしに変わりはないけれど、少しだけ寄り添う時間が増えた気がした。 ********************************************************************************* 適当! 指輪はちゃんと受け取られてお返しも貰ってなにげに周りからはいちゃいちゃばかっぷるだと思われてそうだ…。という話。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |