いちご(適当)

「これ、食べませんか?」
「はぁ?」
唐突にいちごを差し出した上忍に、俺は困惑した。
ここは受付で、さっきこの人に手渡されたばかりの報告書のチェックも終わっていない。
それなのに、この上忍は一粒のいちごを差し出して、口元を覆う布越しにも分かるほどニコニコ笑っている。
何がそんなに楽しいんだろうと思うほどに。
「…就業時間中ですので、そういった話は後でお願いします」
俺もだてに受付やってる訳じゃない。
今までも任務帰りで気の立った忍から理不尽な言いがかりを付けられた事もある。
…まあ、これほど理解し難いことをされたことはなかったが。
だから、俺の笑顔はおそらくとてもとても自然だったはずだ。多分。
多少はひきつってたかもしれないけど。
「じゃ、待ってますね?」
この状況で引かないのは流石上忍というか、そもそもこれで諦めるようなら最初からこんなことしてこないか…。
報告書のチェックを行儀よく待っている上忍に、それ以上何もいうコトはできなかった。
幸い、上忍の報告書はいつも通り丁寧で問題なく受理を済ませられるものだ。
とりあえずは他に受付を待つ人たちに迷惑を掛けないで済むだろう。
興味津々と言わんばかりの視線は鬱陶しかったが、報告書を受理された後も受付に居座る気の上忍が怖いのか、静かにしている。これなら大っぴらに何か聞かれるってこともなさそうだ。
「お疲れ様でした。お、…私の勤務時間はまだ終わっておりませんので、お待たせするのも申し訳ないので、またの機会に…」
そう言って暗に帰れと言ってはみたが、予想通り上忍は帰る素振りを見せなかった。
「はい。待ってます。だってあとちょっとですもんね?」
…なんで俺のシフト知ってるんだとか色々言いたい事はあったが、ここで騒ぐのもまずいだろう。この強引さの裏に何かあるんだろう。
まさか本当にいちごを食べさせたいだけだとは思えない。
ソレが何なのか分からないのが恐ろしいが、いつの間にかどこかにいちごをしまった上忍が悠然と備え付けのソファに腰掛けて持参のエロ本を読み始めたので、考えるのは後回しにするコトにした。
幸いまだこの時間帯なら人気がある。いちごを貰ったらさっさと逃げ出してしまおう。
仕事を途中で放り出すわけにもいかないからな…。
あからさまな溜息を零してしまうのは止められなかったけれど。
*****
そうして、悲しいかなその時はやってきてしまった。
「交代!遅くなって悪いな!」
「い、いや。…じゃあ、後頼むな?」
「おう!」
むしろもっと遅くてもいいとすら思ったくらいだが、結局は諦めないだろうから一緒だろう。
もたもたと立ち上がった俺の側に、上忍はいつの間にか立っていた。
素早い。こういう場面じゃなければ、見習いたいと思っただろう。
「じゃ、どうします?ここで?それとも俺のうち?イルカ先生のお家でもいいですよ?」
「…ここで、お願いします…」
俺の家に上がり込まれるのもゴメンだが、上忍の家などもってのほかだ。何をされるか分からない。
いちごにかこつけて新薬の試験でもしたいんだろうか…?あの素早さなら一服盛られても気付けないだろうし。
ぐるぐると恐ろしい想像ばかりで頭を一杯にしていると、上忍が先ほどよりもずっと嬉しそうにいちごを差し出した。
「じゃ、はい。あーん」
「むぐっ!?」
…俺の口元に押し付けられる赤い果実はふわりと甘ずっぱい香りを漂わせていて、美味そうだ。
だが、この状況はなんなんだろう…。
とっさに押し出そうとしたのだが、どうやっても赤い異物は吐き出せない。上忍はさほど力を入れているようには見えないのに。
焦るばかりで、だが上忍の淡々とした必死さが俺に飲み下す決断を許さなかった。
はたから見れば滑稽極まりないだろうが、男二人がいちごごときで静かなる攻防戦を繰り広げること数分。…だったんだろう。多分。俺にとっては何時間にも感じられたが。
「ああ、もうだめ。我慢できない…っ!」
「ふむぐ!?むぐ!?」
いちごは俺の口の中に消えた。…男の舌と共に。
熟れた柔らかい果肉が、男とソレを拒む俺の舌に潰されて喉の奥にとろりと流れていく。
体温で暖められた生温いソレを飲み下すと、その甘い香りが脳までしみこみそうな気がした。
「はぁ…おいしかった」
「なななななにすんですか?!」
その時俺は涙ぐんでいたかもしれない。薄く膜を張る視界の先で、男がとんでもないことを言った。
「いちごって卑猥だって、この間はなしてたんですよ。だからイルカ先生に食べてもらえたらいいなぁって」
「はぁ!?なんですかそりゃ!?」
意味が分からない。卑猥…確かにとんでもなく卑猥なマネを仕掛けられた気はするが。
「でもイルカ先生の方がエロいから我慢できませんでした。ごめんなさい」
照れくさそうに、ちっとも悪いなんて思ってない顔で男が俺に触れてくる。
全身の血がガーッと頭に集まるのを感じた。
後から聞いたら、その時の俺はそれこそいちごみたいに真っ赤だったらしい。
「ごめんで済むかー!」
正気に返ってそう叫ぶ頃にはなぜか男の家に連れ込まれていて、両手を握り締められながら責任取りますなんて男のベッドの上で誓われて…。
結局、俺は男のベッドの上で朝まで男を叱り飛ばすハメになったのだった。
*****
ちなみに、その日の俺の説教の長さと声デカさは上忍寮でも語り草になっているが、その後俺たちが付き合い始めた後、カカシさんは「すっごくイイ声でした…!」なんて言って喜んでるからなんというか、俺の説教損だったかもしれないと思っている。
そのセリフにこの人放っといたらダメだって一緒に過ごしてる内にほだされた俺もどうなんだろうと思う。
…まあ、いちご以外もあーんなんてやっちゃう位幸せなんだけどな?


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適当ー!
ばかっぷるを上げてみる。
頭痛が痛いので薬飲んだとこまでは覚えてるんですがなんでこんなじかんですか…・°・(ノД`)・°・

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