そうして彼は涙を流す

目覚めると、白い天井が待っていた。
つながれた管から静かに液体がこぼれる音がする。
スッと伸ばされた手が、俺の肩に触れた。

「…起きたんですね…。」

ため息と、どこも見ていない瞳。
普段は漆黒に輝くその瞳はどんよりと澱み、疲れきったその顔からは、虚脱しか読み取れない。

何度、この顔を目にしただろう?

「ごめんね。」

空々しいのは自覚してる。
いつだって俺はこの人を悲しませてばかりだ。
このセリフも何度言ったか分からない。

それでも、こうして戦うことしか出来ないから。

「馬鹿野郎…っ!」

怒りと安堵がないまぜになった声が、俺の耳を貫く。
すがりつく腕の強さが彼の不安を物語っていて、苦しいくらい胸が高鳴った。

「ごめんね…。」

この人がこんなに必死になるのは、俺のためだから。
嬉しくてたまらない。

…それが間違ってると分かっていても。

己の歪みに反吐が出そうだ。
謝って…それでも変わる気など欠片もないくせに。

「…っ!」

謝る俺の口をふさいだのは、激情を吐き出したばかりの口だった。

縋るように絡みつく舌に応え、俺を求めてくれることに陶然としながら、抱きしめて、その熱を感じる。

しがみ付いたまま、閉ざされた口を開放し、覆いかぶさる愛しい人は苦しそうに呻いた。

「っ…謝るな…っ…!」

喉の奥に何か引っかかったようなそのかすれた声も、俺の頬に落ちた雫も、くしゃくしゃにゆがんだその顔も…俺だけのものだ。

「イルカ…。」

そうして彼は涙を流す。

その美しい一滴に、俺への愛を込めて。


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あれー?なんでだ?
また中途半端な何か。が湧いてしまった…!?
…アホなので大目に見てやってください…。

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