「寒いし眠いしなー…」 しかも指先までしっかり冷え切っていると来た。 このまま寝たらだめなのは分かってるんだが、襲い来る疲労感と眠気と戦うのは相当な精神力が必要だ。 「しょうがないだろ。雪の中だし、静かだもんなー」 やっぱりコイツは肝が据わりすぎだ。 気のいい同僚なんだが、こんな状況でふわふわされてると流石に神経に障る。 「暢気に言ってる場合か!遭難だぞ遭難!」 しかもツーマンセルのほぼお使いみたいな任務だから、禄に装備もない。 食料なんて出掛けに二人して生徒たちにもらったチョコレート位のもんだ。 …いや、コイツはなんかもってるだろうなー…というか、持たされているに違いない。 俺なんかよりずっと心配性だからな。あの人は。 「雪がやんだらなんとかなるって!心配性だなぁ?それじゃカカ…」 「なんとかなるのはわかってんだよ。雪が止めば。でもこれ無理だろ…」 多分この時期にこの地区に本当に何年かに一度だけ訪れる冬の嵐にぶちあたってしまったんだ。 とっさに雪を掘ってもぐったものの、このままじゃ雪に埋もれて死ぬかもしれない。 チャクラはまだある。なにせお使い任務だし、何でツーマンセルになったのか不思議な位簡単な任務だったから。 なによりの問題はだ。コイツが一緒な事だ。…それがある意味希望の命綱でもあるんだが。 「…雪解かして水作るか」 やっとちょっとは心配になってきたのか、顔つきが険しくなった。 ただ心配がるより動いてた方がマシだよな。体力の消耗は恐いけど。 「そのまま食うよりはマシだな」 水分摂取は重要だ。体温維持も。 でもなぁ。最終手段はそれすなわち助かっても別の意味で死ぬから絶対にお断りだ。 「あーあ…怒られる」 「そうだなー…俺もだろうなー…」 死にたくない。こんな雪の中でなんて。 だがもっと恐いのは…。 「出掛けにチョコ貰ったヤツも文句言われそうだから今のうちに食っちゃうかな」 もそもそあけて食っているのを止めなかった。 貴重な食料だが温存しろというには確かに危険だ。 義理の塊の一口チョコですら、凄惨な制裁の原因になりかけたからな…。 「…あの人、来るよな」 「…恐いこと言うなよ!またお仕置きとか言われて…!」 寒さのせいでなく身震いしたらしい同僚が、その制裁を体を張って止めたかわりに、いきなり男の恋人になったのはついこの間のことだ。 三日三晩離してもらえなかったとか、戻ってきたら顔色は悪いのに妙に艶っぽかったとか、腰を庇うのを心配して近寄ったらクナイが降り注いだとかまあ色々…。 つまり、人肌で暖めあおうなんて話になったら俺は終わる訳だ。 「じゃあ、帰ろうぜ?俺だってあの人に殺されたくない」 「んー?殺さないよー?」 ひたりと、氷よりも冷たい指先が喉に掛かる。 背後に立つ生き物が何なのかなんて、それですぐに分かった。 「カカシ、さん…!?アンタなんでこんなとこにいるんですか!?アンタも遭難!?無事ですか!?」 明後日な心配をしている同僚がうらやましい。お前いやいや恋人という建前の情人になったのかと思ったけど、結構愛し合ってんだな。 うらやましくはないが! 「無事―。拾いに気ましたよ。帰りましょ?」 「あ、はい!え?ありがとうございますっていう場面ですかコレ!?」 「いっとけいっとけ。そんで帰るぞ!」 混乱する姿にも眉を下げて幸せそうににやついている上忍から、俺は可及的速やかに離れたいんだよ! 「俺以外のチョコ食べたから…お仕置きね?」 まさか見つけられた切っ掛けってそれかなのか!?とか、それは術なのかそれとも常時監視してんのか!?とかと思いつつ、上忍が土遁かなにかで作ったらしいトンネルに飛び込んだ。 後の痴話げんかには絶対に関わらないと決意して。 ********************************************************************************* 適当。 ご意見ご感想お気軽にどうぞー |