そういうわけで

「家から出るときは俺の許可とって下さいね?あと、里外にでるのは原則禁止!俺が一緒ならいいですけど。ああ、それに、できるだけ俺以外に笑わないで下さい」
「…色々言いたいことはありますが…えーっと。もしもソレを断ったらどうなるんですか?」
「え?当然、二度とそんなことしたくなくなるようにお仕置きですよ?」
「お、お仕置き…!?」
「ま、きもちイイお仕置きですけどね!とりあえず抜かずの5発とかかなー?」
「なにがとりあえず何だかその辺も良く分からないんですが…とりあえず、アンタ誰だ!?」
俺は気持ちよく惰眠を貪ってたはずだ。
久しぶりのCランク任務は無事終了。
予想外の戦闘に巻き込まれはしたが、別動部隊…というか、俺に襲い掛かってきた敵忍がターゲットだったらしい暗部の皆さんが何とかしてくれた。
だから、戦略的撤退上、やむを得ず!…まあ、ちょっとは私情も入ってるけど!経費は請求しないし!
とにかく、戦闘を避けるのにちょこっと迂回したお陰でたまたまたどり着いた温泉宿でゆっくり温泉にも浸かって、ついでに美味い飯も食って、ちょこっとだけ酒も飲んで、ふかふかの布団で気分良く眠りに付いたんだから間違いない。
それなのに、どうしてこんな妙なことになってるんだろうか?
「あれ?さっき会ったでしょ?」
「さっき…?」
さっきもなにも、すれ違っただけならまず覚えていないし、まともに会話したのは宿の主人くらいだ。
ああ、それと、いきなり敵忍くっ付けたまま俺の前に突っ込んできた暗部とは、ちょっとだけ会話したような…?
「あ、思い出した?」
そうだ。この声だ。それにこの髪の色も…忍のくせに忍べてねぇなぁって思った闇夜にも銀色に輝く箒頭だった。
「えーっと」
喜色満面の男には悪いが、あれは会ったうちに入らないと思う。
そもそもいきなり訳のわからないことを言い出される意味がわからない。
戸惑う俺に調子に乗ったらしい男がさらに言葉を続けていく。
正に立て板に水だ。
「家は…俺の家でもアンタの家でもどっちでもいいけど、引越しは早くしようね?新居は…すぐ建てたいのは山々だけどしばらく暮らしてからじゃないと、趣味とかそういうのもあるし?あ、それと。俺、忍犬使いなのよ。猫もいいんだけどねー?だから犬と好きなだけ遊びまわれる庭があるほうがいいでしょ?アンタの家ってどんな感じ?」
「家は中忍寮です。それから俺は温泉が大好きで、今すっごく眠いのでもう寝たい」
説得とかそういうのは無理そうだ。こういう人はちょっと時間おいた方が冷静になってくれる…といいな。可能性としては低そうだけど。
暗部にいるんだからきっと強いんだろうし、実際俺が戦闘から逃げおおせたのも、この男の見事なまでの蹴散らしっぷりのお陰だ。
それなのに、どうしてここまで残念な感じに仕上がっちゃったんだろうなぁ…?元々上忍とか…上に行けば行くほどには変わった人が多いけど、ここまでだとむしろ哀れっていうか…。
「えー!?まだいっぱい言ってないことがあるんだけど!」
こういうとこも、非常にとっても…むちゃくちゃなんだけどなんていうかほっとけない人であることは確かだ。
「眠いので肝心なことだけにしてください」
アカデミー生を諌めるときに良くやるみたいに、そのもさもさの頭をグリグリなでてやると、嬉しそうに目を細めて言ってくれた。
「肝心…?あー!?そうだ!…好き!今後とも宜しくね!」
見事なまでに一方的だが、まあこの舞い上がり具合ならこれでも上等な方だろう。
「応相談です。ほら、寝ますよ?」
折角温泉でほかほかに温まったのに、冷めてしまう。
とりあえず上に乗っかられてると重いし、男も冷えちゃうと思うのでふかふかの布団を分けてやろう。
同じくらいの体格の男とだと狭くて寒いかもだなぁと思ったけど、引きずり込んだらぎゅうって抱きついてきたので、何とかなりそうだ。
だから、なんだかまだブツブツ言ってた内容は明日起きたら聞くコトにした。
「きゃー!大胆!起きたら今度は式の相談ね!」

そういうわけで、任務先で恋人を拾ったっていう話。


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そういうわけで、暗部の皆さんは尻拭いに奔走するはめになってたりして!
てきとー!
ではではー!ご意見ご感想など、お気軽にどうぞー!

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