「靴下下さい」 「本気ですか」 「ええ本気ですとも」 いまや愛の巣となった我が家にいそいそと帰りつくなり、すぐさま靴下を履かされた。 寒い季節ならまだしも季節はもうとっくに夏を迎えている。そもそも脚絆なら分かるが靴下なんて特殊任務にでもつかない限り身につけないものだ。 正直言って着慣れないそれは蒸し暑いの一言だが、イルカ先生には逆らえない。 何に使うんだろうと思い悩むことくらいは許して欲しいけど。 …好きで好きで男同士なんて考えたこともなかったこの人を拝み倒してやらせてもらってるというか、拝み倒さなくてもやらせてくれるんだろうけど、なんかもう神々しいっていうか、つい拝んじゃうっていうか! とにかくこの人に嫌われたら俺は多分生きていけない。 無理にご機嫌とりなんかしたら殺しますよ?って殺気交じりの笑顔で言われてるから、やり過ぎないように気をつけなきゃいけないけど。 …でも大事にしたい。だって俺のたった一人の人なんだもの。 この苦行も愛ゆえに耐えるべきだろう。 しばし、慣れない布切れを纏ったまま普通にすごしていたんだが、二時間も履いていただろうか。 風呂に入りたいなぁと思ったタイミングで靴下を強請られた。 まあ穿かせてもらったもんだし、自分のモノじゃない。それに風呂に入るし正直言って邪魔でもあったからなんの躊躇いもなくさっさと返却した。 …まではよかったんだけど。 「へへ!カカシさんの!宝物にしますね!」 なにがだ。それをか。…そのたっぷり汗…はまあ俺はあんまりかかないけど、二時間も履いてた靴下をどうする気なんだ。 「イルカせんせ?靴下ならいくらでも欲しいの買いますよ?今度見に行きます?」 「え?いえ。カカシさんの匂いがついてるモノがほしくて」 にっこり笑われた。 すっごい爽やかだけど、靴下に頬ずりするのは止めてほしい。 どうしよう!こんなことしててもかわいいなんて!さすがイルカ先生! 「あの、ね?汚いからそれ、洗いましょうよ」 「えー?なんでですか!わざわざ匂いつけたのに!」 言ってる事が常軌を逸していることには気づいていないらしい。 酔ってる訳じゃなさそうだし、どうしたもんだろうか。 「あのですね。それは俺の靴下なので…」 「だからじゃないですか。カカシさんの靴下じゃないならいりません」 至極真っ当なことを言うような顔で、とんでもないことを言い出した。 ちょっと!どうしちゃったのイルカせんせ!? 「あのね。イルカせんせ」 「カカシさんの靴下は絶対に渡しませんから!」 全身の毛を逆立てて威嚇するケダモノのような鋭い視線を貰った。 憩いの我が家で愛しい恋人と一緒にいるって言うのにだ。 「…とりません。でもね、俺…帰ってきたのに…」 もっと何か言いたい事があった気がするのに、にじんできた涙のせいで言葉にならなかった。 イルカせんせといちゃいちゃしたくてがんばって帰ってきたのに、撫でてももらえないしお帰りも言われたかどうか怪しいし、ごはんにはまあまだ早い時間だったけどお風呂にだって入りたい。勿論一緒に。 酷いってなじる勇気なんて少しもないんだけど。 「カカシさん…!ごめんなさい!どうしてもがまんできなくて…!」 あ、イルカ先生も泣いてる。そっか。なんだかわからないけどイルカ先生があやまってくれたからもうなんでもいい。 俺のこと嫌いになったんじゃないならそれで。 「イルカせんせ。靴下より俺のこと好き?」 「当たり前でしょうが!あなたが好きだからあなたのはいた靴下に意味があるんです!」 「そっか…!」 うん。よくわからない。 でも…イルカ先生が抱きしめてくれて、好きだって言ってくれたからもういい。 「新しい靴下です」 「へ?」 「これ、はいたまましましょうね?」 「え?」 「他は全部脱いでもいいですから」 それは大分変態臭いんじゃないだろうかと思ったんだけど、イルカ先生の瞳が期待に輝いていて、俺は勿論断れなかったのだった。 …ちなみにおそろいの靴下でイルカ先生にも同じことをしてもらったら大層興奮したので、これからもうしばらくは、こういうのもいいかも!なんて思っている。 ******************************************************************************** てきとう。 靴下いっちょのカカシせんせに(*´Д`)ハァハァするイルカせんせ。 背面座位で靴下なでながらしたらいいと思う。 ご意見ご感想お気軽にどうぞー |