奪え(適当)

「好きだって言えないんでしょ?」
なんだってそんなことを言われなきゃいけないんだ。
それも、この男なんかに。
「何の話ですか?」
追い返したいがこの男の手に握られているのは報告書だ。
受付にいる以上、それを受け取らないわけには行かない。
たとえ、この男の目的があからさまに俺だってことが分かりきっていても。
「なんの、なんて。冷たいの」
熱かろうが冷たかろうがそんなものはどうでもいい。俺にとっては厄介ごとでしかないこの男をさっさと遠ざけてしまいたいだけだ。
そんなこと分かりきっているくせにわざわざこうして突っかかってくる辺り、嫌味というかなんというか。
「報告書、下さい」
コレを受け取ってしまえば、この男がここにいる理由はなくなる。
殺気に近いほどのチャクラを漂わせる男の視線からのがれることができる。
思いを押し付けられることもなくなる。
差し出した手に与えられたのは、唐突にひざまずいた男の口付けだった。
「俺を、受け取ってよ」
むちゃくちゃだ。
いくら深夜で誰も見ていないからって、俺に、中忍で男で狐つきと呼ばれた人間にひざまずくなど正気を疑う。
見るものが見れば騒ぎになること受けあいだ。
これまでも権力者におもねるだのなんだの…好き放題な噂を立てられてきた。
今度はそれにこの男を手玉に取っただのなんだのと言われかねない。
厄介ごとはごめんだ。
この男に流される気はない。
「いやです。俺は、報告書を」
だれがそんなもの欲しいもんか。
…手に入れたと思ってもどうせなくなってしまうくせに。
「ほんっとに素直じゃないねぇ?」
そんな所も好きだけど。
囁きは耳元で聞こえて、急に間近にある顔に驚く暇も、俺には与えられなかった。
「ん…っ!」
重ねられた唇は、帰還したばかりの男の方が少しだけ俺よりも冷たくて、だが入り込んできたものは俺よりもずっと熱かった。
「いえないなら…代わりに、体だけでも頂戴よ?」
誰がそんなことを許すものか。
そう怒鳴りつけるはずだった口から零れたのは小さな喘ぎ。
いえない言葉の代わりに零れる涙を掬い取る舌が、ちろちろと炎のように俺を炙った。
押し付けられた熱に、同じくらい高ぶった己の欲を感じて恐怖した。
「い、やだ…」
飲み込まれてしまう。
…この狂気に近い感情に。
「いいから、堕ちておいで」
囁きは耳元で。
そこから蕩かされてドロドロになる自分を予感した。
もうとっくに堕ちていることなど知らない男は、手加減などしてくれそうにない。
「こんなの、違う」
望んでいない行為なのだと叫ぶ前に、絡みつく舌に全てを奪い取られてしまった。
「好き」
告げられない言葉を詰るように、引き倒された床の冷たさすら忘れてしまいそうなほどの激しさで男は俺を求めてくる。
「今だけ、だから」
掠れた声を打ち消すよう降る口付けに、奪い取ることをためらわない獣の瞳に。
…俺の言葉が嘘になる日は近いのだろうと感じながら。



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適当!
ねむいです。あかん。
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