流石に待ちくたびれた。 こうして木の枝の上で気配を殺し、ただひたすらに待つのは、任務でもない限りやっぱり苦痛だ。 先輩には緊張感がないといわれるかもしれないけど、眠りの海に沈みそうな意識を引っ張りあげるのには毎回苦労している。 それにしても長い。いつものことだけど。 思い人の側にいるというのはそんなに楽しいことなんだろうか。 思いを告げることすらできない、片思いだっていうのに。 面を被り、名を、姿を、心まで隠して闇の中で生きる。 …それが僕たちの仕事だ。 せめて仲間なら良かった。 ホンモノの名前じゃなくても、与えられたコードネームで互いを呼ぶこと位は出来るし、何より直接触れ合うことだって出来るのだから。 でも、先輩が選んだのは正規部隊の中忍だ。それも一度だけ任務を共にしただけの。 …名乗れもしない立場で恋をするには、遠い相手だと思う。 それでもこうして里に戻れば必ず様子を見に行く先輩は、正直ちょっとどうなんだろうと思わなくもない。 「まるでストーカーだ」なんて、自分で落ち込むくらいならやめておけばいいのに。 僕には理解しがたい。 同じ部隊の仲間でもない他人にそこまで執着するなんて。 「おまえにもそのうちわかるよ」 そんな台詞に少しだけ苛立つ。 …先輩を、尊敬しているはずなのに。 諦めたような顔を見たくなかったせいだろうか。 それとも、もっと別の。 「お待たせ。…行くよ」 「あ、はい!」 ぼんやりしていた頭を任務用に切り替えるのは一瞬で、後はもうそんなことなんか考えてる余裕もなくなったけど。 僕はずっと後になってからその理由を知ることになった。 ***** ついに手に入れたのだと打ち明けられた時、僕の心に浮かんだのは喜びだけじゃなかった。 興奮に煌く瞳は、己を一振りの武器のように扱う姿とはまるでちがっていて。 …僕は、先輩に嫉妬していたんだと気がついた。 好きな人を見つけられたコトに。それを手に入れたコトに。 それから…誰かを思い、それを貫き通すことができたことに。 元々意思は強いのに、どこかで幸せを諦めている所があったから、こうして笑っている姿を見るのは確かに嬉しいのに。 「僕にも、みつかりますかね…?」 「どうかなー?…ま、運命なんて捕まってみないとわかんないもんだしね?」 そう言われてがっくりきたけど、いつか。 僕にもそんな相手が出来ればいいと思った。 ***** …それからずっと後になって、確かに僕にも寄り添う相手が出来た。 あんまりにもあんまりな相手だから、運命なんてウソだって叫びたい位だけど。 「アナタは、僕のものですから」 一方的にそう言って好き放題に振舞うくせに時々ふっと影を見せるこの子のことを理解しきれてはいないけど、あのときの先輩の気持ちは分かった気がする。 「離れたくないんじゃなくて、離れられなかったんだよね、きっと」 呟きを無視するように圧し掛かってくる細いのに無駄に力のある身体を押し返しながら、そんなコトを思った。 ********************************************************************************* 適当ー! テンゾウたんがかわいそうなはなしをかきたくなったので。 これから美味しく頂かれちゃえばいいよ! ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ! |