しろ(適当)

痛みを堪えて歩いた。
もうチャクラが潤沢にあるわけじゃない。
さすがにこんな寒さの中でへたばるのはゴメンだ。
忍の身で死に方が選べるはずもないが、さっさと諦めるには未練がありすぎる。
近いようで遠い里の明かりを頼りに、重すぎて自分の体の一部とは思えない足を動かした。
まだなんとか、手も足も動いてくれている。
ぐらぐらと揺れる視界が白く染まっているのは、降り積もる雪のせいだけじゃないんだとしても。
そろそろ限界が近い。…そう思ってから意外と歩けるものなんだと気付いて、少しだけ笑った。
雪上に散った赤は、きっとすぐに白く塗りつぶされてくれるだろう。
さすがに隠す余力はない。
血止めが効かないところを見ると、どうやら一服盛られたか。
だからと言って、医療キットの残量も怪しい現状では、どうすることもできないのだが。
「寒…」
散逸的な思考をかき集めて、里に帰ることだけを考えた。
この足が動く内にせめて後一歩だけでも前に進みたい。
俺を待っていてくれる人はいないだろう。
どうしても会いたい人は…里にいるかどうかすら分からない。
お互い任務に忙殺されて、すれ違うことすらまれな関係だ。
一方的に思いを募らせたのは俺の勝手で…埋まりそうなほどに深く降り積もった思いが、この雪のように俺の全てを覆い隠してしまったとしても、全ては俺の胸の中で終わるだけだ。
言えるはずもない。閉じ込めたいと思うなんて。
…恐ろしいほどの渇望はあの優しくて強い人に向けていいモノじゃない。
どうにも見え辛くなっていく瞳には、白い白い雪がちらついて…あの人もそういえば白く光って見えると思いだした。
「もうちょっと、だけ…」
もうちょっとだけ頑張ってみようか。
そうしたら、もしダメでも、幻でもいいからあの人の姿を一目見たい。
それから…笑ってくれないだろうか。
ふとしたときに一瞬だけ見せるあの悲しいほど穏やかで柔らかい笑みで。
歩いているのかどうかすら定かではないほど感覚が遠くなった身体で、ただそれだけを思った。
*****
天井が白い。だが今度こそはっきりと形が分かる。
そばにかかるクリーム色の安っぽいカーテンは、なじみがありすぎるほどあるものだ。
「助かった…?」
アレだけ里の近くにいたのだから、誰かが気付いてくれたのだろう。
逆を言えばアレだけ近くまで戻っておきながら倒れるなんて、間抜けな話だ。
ぼんやりした頭を振ると、まだ少しだけ眩暈がする。腕の引きつる感覚のおかげで、つながる管に気がついた。
それから、そのそばの椅子に腰掛けている男にも。
「カカシさん…?」
なんでここに。
そういう前に掠れた声で懇願された。
「やめて。ほんとにこんなのだめ」
見たかったのは笑顔だ。こんなに苦しそうな泣き顔じゃないのに。
横たわることしか出来ない傷だらけの体にしがみ付いて、言葉になりきらない言葉をぶつけてくる男に唐突に欲情した。
「なんで、ですか?」
「そんなの分かるわけないでしょ!心臓止まりそうになった…!アンタ俺を殺す気なの!?」
支離滅裂なその怒り。
ぶつけられてゾクゾクする辺り、自分は相当歪んでいる。
「そうですね…?」
撫でる手に無意識に擦り寄る男が指を齧るように舌を滑らせ、服を剥ぎ取り、肌を暴いてもなお喜びしか感じなかった。
望んで望み続けて望み疲れたほど欲しかった物が手に入る予感に、ほくそ笑んだ。
自分が何に捕らわれたのかも知らず、欲望をぶつける男との熱に溺れながら。


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適当!
ねむいので…(´;ω;`)

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