なにがどうしてそうなった(適当)

「いいかい?よく聞いてね?」
見たことのない知らない金髪の男は、優しい微笑を浮かべているのに何故か酷く恐ろしく思えた。
「俺、知らない。帰る!」
逃げようと身を翻したはずなのに、俺の体は簡単に男の腕の中にしまいこまれてしまっていた。
大きくなったねといわれてはいても、俺はまだまだチビで、俺を捕まえている生き物は俺よりずっとずっと大きい。
多分、父ちゃんと同じくらいに。
「んー?困ったなぁ…怖い目にはあわせたくないんだよねぇ?」
そんなこと言われても、今もうすでに全力で怖い。
この人は俺より強くて、でもそんなことが怖いんじゃなくて、この人は…自分の思い通りにするためならあっさりとんでもない事をしそうなところが怖いんだ。
「うぅー!かあちゃーん!とうちゃーん!」
大声で叫んだのは任務で不在の両親だ。
迎えに来てくれる可能性はほぼゼロだけど、これで怯んでくれるんじゃないかと期待した。
そんな些細な希望は簡単に打ち砕かれてしまったけど。
「うーん。結界張ってるんだ。無駄だよ?」
穏やかに笑うその顔に、俺は生まれて初めて絶望を味わったかもしれない。
「や、やだ!」
走っても景色は少しも動かない。追いかけてこないのは逃げられないと分かっているからだ。
ゆっくりと地を踏みしめる音が迫ってきているのに、あがいてももがいても前に進めない。
もうすぐ追いつかれる。
「おいで」
「や、やだ…!カカシー!」
思わず呼んだのは最近知り合ったばかりの友達の名前だった。
隠してるけど腹が立つほどもてそうな顔してて、ちょっとヤなヤツだと思ってたけど、戦闘に巻き込まれて怪我した俺を守ってくれた。
強いし、でもなんていうか…心配な感じのイイヤツだと思う。
…だから巻き込みたくなかったのに。
「そうそう!そうなんだよ!カカシ君のオイタの件でね!」
「う、うぅー!」
肩を掴まれて、揺さぶられながら言われても、なんのことだかさっぱりだ。
「先生!なにやってるんですか!」
急に体が楽になった。
誰かが体を掴んでいるのは一緒だけど、今度の手は俺と同じくらい小さくて…優しい。
「イルカ!大丈夫!?」
「カカシ…!へ、変な人が!逃げよう…!危ないよ!」
俺よりずっとずっとカカシは強いけど、この金髪の男の方が多分それよりさらにずっとずっと強い。
いつかカカシを越えるくらい強くなる予定だけど、今は勝てないってのは確定だ。
カカシだってそれを分かってるはずなのに、俺を庇ったまま動かない。
「先生。俺が自分でなんとかすると言ったはずです!何しようとしてたんですか!イルカに!」
「だって好きな子怪我させちゃったっていうから。だったら婚約しちゃえばいいかなーって!ほら、これでも俺は…」
「だーかーら!あなたは自分の立場ってものをもっとちゃんと理解してください!それに…俺のことは俺が決めます。す、好きだからって、そんな強引なマネして嫌われたら…!」
「大丈夫大丈夫!ほら、先生がついてるし!」
「術とか洗脳とかダメですからね!」
「えー?」
「やっぱり!?えーじゃないでしょ!全くもう!」
…えーっと。これってなに?なにがどうなってんだ?
とりあえずカカシが負けるってのは訂正する。この人馬鹿っぽいから多分カカシのが勝てる。
「カカシ…あのさ、この人、誰?」
「…俺の、先生。ちょっと頭おかしいけど強いからえらいんだけど、頭おかしいんだよね」
「カカシ君ひどーい!」
頭おかしいって二回言った。それはまあなんか分かるんだけど、こんなのと知り合い…っていうか先生!?
…かわいそうに。
「酷いのはどっちですか!俺のイルカに何する気だったんだ!?」
「もーラブラブだね!心配してたけど余計なお世話だったかな!」
「そうです。余計って言うか邪魔です。いい加減にしてください!」
「はーい。うん!楽しみにしてるね!色々準備は任せといて!」
「いりません!」
「いっちゃったね」
なんだか嵐みたいな人だったけど、カカシが強くなったのはあの人のおかげなんだろうか。
別の意味で鍛えられそうだけど。
「イルカ!怪我とかない!?変なことされてない!?」
「されそうになったらカカシが来てくれたから。…ごめん。ありがとな!」
「ううん!だってさ、俺のせいだし…」
しょぼくれてて、そういや俺が怪我したときもこんな顔してたっけ。
「助けてくれたのお前だろ!…なんか、変な人だったけど」
「あ、あのさ。えーっと」
「気にすんなって!良くわかんないけど、助けてくれてありがとな!」
なんかびっくりしすぎてあの人が何言ってたか覚えてないけど、カカシはやっぱりイイヤツだ。
「うん…あー…聞いてなかったっぽい…よかった、のかな」
「なんだよ?やっぱり疲れた?うちでちょっと休んでけよ!」
「え!あ、うん!」
お礼もしなきゃな。おやつは…あんまりいいのないけど、らーめんくらいなら作れるし!
家もわかんないだろうと思って手を握ってひっぱったら、なんだか真っ赤になったから、急がないと。
「無理するなよー?」
「う、うん!」
とりあえず平和は保たれたみたいだ。変な人には注意しないとだけど。
まずはカカシを元気にしてから父ちゃんたちに相談しよう。
なんだか胸がどきどきするからそれも一緒に。


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適当。
父ちゃんが忍刀片手に家から飛び出そうとしたり、母ちゃんがそれより毒よ(*´∀`)?とか言い出したり大変なことになればイイと思います。
ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ!

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