今日も僕は先輩と一緒の任務…。でも、何だか今日の先輩は様子が変だった。 今回はちょっと腕の立つ抜け忍たちを始末するだけの任務…。集合したら適当に相手を探って奇襲をかけて潰すはずだった。 いつも通りなら、先輩は僕のコトなんか放っておいて、さっさと自分の思うとおりに動いちゃうはずだったんだけど…。 まずどこがおかしいって、集合場所に時間通りに来て、いきなり、今まで挨拶なんてされたことないのに、おはようって言われたんだった。 …まあ、今、夜中なんだけどね。 そして今正にターゲットと交戦を開始するって時になって、更に先輩の様子が変になった。 「先輩…!来ます!」 陽動に引っかかった敵がどんどん近づいてきている。そろそろ先輩が飛び出すはず…! ああ、思ったより敵の数が多い…。ましては今日は先輩とだから気を引き締めてかからないと…! そう思っていた僕の肩を、誰かがぽんと叩いた。…先輩…!? 「テンゾウ。無理するなよ?」 「え?」 …今、気のせいじゃなければ先輩が僕の事を心配してるみたいなこと言ったような気が…!? 驚いて手が止まってる間に、先輩は僕を置いて駆け出していった。 「あっちは…俺が引き受けた。」 なんていいながら。 …いったいナニがあったんだ!?先輩が僕を庇うなんて…それに、いつも一緒の任務のときは、後頼んだからとか言って、 僕に仕事押し付けてくるのに…!!! ありえない自体に僕は怯えた。…唯一ありうる可能性としては…先輩の奥さんがらみなんだけど…でも、なんで!? 混乱している間にも、敵は攻撃の手を緩めてはくれない。 「敵は待ってくれない、か…っ!」 僕は迫り来る敵に意識を集中することにした。 ***** 「あの…先輩。何かあったんですか…?」 戦闘が終了して、もちろんターゲットも全員捕らえ、任務も完了した。だから僕は恐る恐る先輩に事の経緯を聞いてみることにしたんだ。 いつもなら不機嫌そうに無視されるか、面倒くさそうに無視されるか、機嫌が悪いとクナイが飛んできたりするんだけど…。 今日は、違った。 「んー?ああ、ちょっとイルカがね。」 脂下がった先輩の口からは、予想通りといえば予想通りの答えが返ってきた。まあ、先輩が何かするって時は、ほとんど100% イルカさんがらみだもんね…。この顔も、多分イルカさんの事を思い出してるんだろう。 でも、何でこんなに態度を変えるんだろう?先輩はイルカさんの前だと僕にもそれなりにちゃんとした対応してくれてるから、 イルカさんが注意するってこともなさそうだし…。なにせ先輩は口が上手いから、イルカさんも丸め込まれちゃってるはず。 …確認しといた方がいいよね…? 「そのー先輩は、どうして今日は、えーっと…」 僕が勇気を振り絞って、ところどころつっかえながら聞き出そうしてたら、先輩が何故かにこっと笑った。 …恐ろしい…!!! 見慣れていないだけに、背筋に冷たいものが走った。 「イルカがね。良く当たる占いっていうの見せてくれたの!今日は後輩の面倒をちゃんとみると仕事が早く片付くんだって! 一緒に新年迎えたいし、新年にはちゃんと身体を休めて欲しいなんていってくれちゃってさ!いちいち心配してくれてるんだよねー!!! …俺のこと!!!」 事情は飲み込めた。要するに、先輩を心配したイルカさんが占いの本か何かを見せて、それで急いで帰りたかった先輩が、 後輩…つまり、僕の事をちゃんと…。ってことは、やっぱり普段はちゃんと面倒見てないんだな…。 「確かに仕事、早く片付きましたね…。」 僕にはそれだけ言うのが精一杯だった。 「そ、流石は俺のイルカだよねー!早く帰ろうっと!イルカが待ってる!テンゾウも早く帰りたいだろ?さ、行くぞ!」 浮かれきった先輩は、まだ不自然な態度を貫きとおすつもりみたいだ…! 普段が普段なだけに、ものすごい違和感だ。…ちょっと、耐え切れそうに無いんだけど…!!! 「は、早く帰りましょう!」 僕は一生懸命…それこそ自分の最高速度で里まで走りきったんだけど…。 …先輩は、その間中ずっと…イルカさんとのノロケを吐き続け、さらに僕への不自然な気遣いも止まることは無かった。 結果的にものすごく早く里に帰ることが出来たんだけど…。 僕は…里に帰り着くまでずっと、冷や汗を流し続ける羽目になったのだった…。 ********************************************************************************* 幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)続きをそっと…増やしてみました。 相変わらずテンゾウたんは苦労性。でも、天然イルカはこんなことで被害をこうむっているとは 思ってもみないという…。 こんな先輩はいやだなぁ…。 |