先輩7 -羨望-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

僕が久しぶりの単独任務を終えて三代目様の所に報告に行ったら、聞き覚えのある声がした。
「最近は、その…どうなんじゃ?」
「最近?あのね!カカシと森に遊びに行って、ソコで魚とって食べたんだ!楽しかったよ!」
三代目様の歯切れ悪い質問に元気一杯に答えているのは…イルカさんだ!どうしたんだろうこんなところで…?三代目様も何だか様子がおかしいし。
僕はそっと気配を消して、様子を見ることにした。
「それはその…いいんじゃが、カカシ以外とは遊ばんのか?同級生…いや!アスマでもよいぞ?」
ああ、なるほど。先輩がイルカさんを独占したがるから、ソレを心配してるんだな。確かに先輩のイルカさんへの執着はちょっと度を越してるから、 三代目様が心配するのも無理はないかな?
でも、任務でいないこともあるから、夫婦が一緒にいる分には放っておけばいいのに。心配性だなぁ…。
そんな事を思いながらイルカさんを見ていたら、やぱり先輩を擁護していた。
「えー?だって、カカシがいるときに他の人と一緒にいると、カカシが悲しそうだからやだし、俺もカカシと遊ぶの楽しいよ!」
一生懸命身振り手振りで先輩の事を語るイルカさんを見ていると、何だかちょっと胸がもやもやした。何でだろう?
イルカさんの応えに、三代目様も眉間に皺を寄せて思案気な顔をしている。
「たまには、他のものとも遊ばんといかんぞ?…今からアヤツに任務でも与えるから…」
ああ…三代目様が地雷踏んじゃったよ!それはまずいですって!
「え!カカシ、帰ってきたばっかりなのに…!じいちゃんのばかぁ!!!」
案の定、イルカさんは心底悲しそうな声で泣き出してしまった。僕の胸まで痛くなりそうなくらいだ。
「イ、イルカ…!」
三代目様も呆然として手を中に彷徨わせている。そして…当然先輩がこんな事態を見過ごすわけがなかった。
「ボケジジィ!イルカ泣かせてんじゃねぇよ!!!」
「先輩!落ち着いて!」
とっさに三代目様の前に飛び出して先輩を止めたけど…。仮にも里長相手に暴言を吐いた先輩は、イルカさんを守るように腕の中に閉じ込めて、 三代目様を睨みつけている。先輩の本気の殺気…ものすごい迫力だ。…僕では立っているのがやっとだ。
「カカシぃ…また行っちゃうの…?」
イルカさんは、まだぐすぐすと鼻をすすりながら、先輩に抱きついている。イルカさんのその行動で殺気が僅かに緩んだので、僕は 慌てて三代目に目配せしつつ、イルカさんを抱きしめて怒りのチャクラを発している先輩の説得を試みた。
…何とかしてイルカさんを泣き止ませないと!
「任務なら僕が行きますから!…それと…」
後は、どうしたらいいんだ!?
「イルカ。アスマがお前と一緒に芋掘りに行きたいといっておったぞ?そやつも連れて行ってこんか?」
さすが里長!ナイスフォローです!そしてさりげなく先輩以外にも接点作ろうとしてる!…こういうところはちゃんと身に着けておいたほうがイイよね! 忍として!
さて…問題は先輩の方だよね…。僕は、恐る恐る振り返って先輩とイルカさんを見た。
「芋掘り!楽しそう!カカシも行こうよ!」
あ、イルカさんが笑ってる。ホッと一息ついて、先輩の方を見たら、まだちょっと殺気が治まってないけど、一応納得したみたいだ。
…先輩は、イルカさんの頼みは断れないもんね。
「行く。…それと、テンゾウも来い。」
「え?」
でも、それじゃ任務が…。僕が三代目様に縋るような視線を向けたら、ニコニコ顔で、手を振ってくれていた。
「ああよいよい。行ってくるがよいぞ。」
芋掘りなんて初めてだ!しかもイルカさんと先輩と一緒。…ちょっと怖いけど確かアスマさんって、三代目様の息子さんだし、きっと強いから大丈夫だよね?
…でも、会ったことないし、暗部じゃないし…服とか顔とかどうしよう…?
「親父。何の用が…?」
「おお!アスマ!やっと来おったか!今すぐ芋掘りに行け!」
「は?」
へー。この人が…。あんまり似てないんだなぁ…。大きいし、ちょっと強面だ。
僕はいつものくせでついしげしげと観察してしまった。
「コイツは誰だよ?俺はイルカがそういうの好きだからって話はしたが、コイツ暗部だろ?いいのか?」
「あ!はい!あの…」
やっぱり…駄目だよね。っていうか、コレが普通の反応だと思うな。
「ソレにカカシ!イルカを放してやれ。苦しそうだぞ。」
「あ、ゴメン!イルカ!」
「ううん。大丈夫!楽しみだね!」
「うん!」
あ、またいちゃいちゃしてるよ。…ってことは僕もう帰った方がいいかなぁ…。報告だけして…。
「よい。そやつは…服だけ着替えて来い。汚れる。」
「そうだな。この格好じゃなぁ…。」
アスマさんが僕の格好を眺めつすがめつしてそういってくれた。
ってことは…僕も混ざっていいってことだよね!
「はい!」
里の行事に参加したことなんかなかったから、ものすごく楽しみだった僕は、先輩が何かたくらんだ顔でニヤッと笑ったことに気付かなかった。
*****
「芋掘りは固まってやっても意味ないから。テンゾウ。お前アスマと組め!」
「先輩!ちょっ!名前は!」
面を外して服も着替えて、芋掘りに出かけることになった。
でも、いいのかなぁ…?芋掘りってどうやるのか知らないけど、土遁使うのかと思ったら何だかシャベル渡されたし…。
「あー…おめぇまたか…。めんどくせぇ。」
アスマさんがため息ついてる!…でもこの口調ってやっぱり先輩の知り合いなんだよね?きっと。どうしよう…僕のせいで先輩が何かやっちゃったのかなぁ?
でも…どうしたらいいんだろう?
「あー…そんな顔すんな。おめぇは別に悪くねぇよ。」
慌ててたら、苦虫噛み潰したような顔でアスマさんが僕の頭をポンポンと叩いてくれたので、とりあえず何だかよく分からないながらもちょっとほっとした。
先輩とは違う意味で頼りになりそうな人だなぁ…。
「じゃ、そーゆーことで。」
先輩はさっさと僕たちを置いて、イルカさんを連れて行こうとしてる。
「アスマ兄ちゃん!どっちがおっきな芋取れるか競争な!」
イルカさんも元気いっぱいだ!やっぱり先輩と一緒にいるのが楽しいんだろうなぁ…。かわいい…。
僕がついついイルカさんを見つめていると、アスマさんが背中を叩いてきた。
「あー頑張れよ。」
「あのー…。」
なんだろう?競争を頑張れってことかな?先輩が言い出したわけじゃないから、別に怖いペナルティとかはなさそうだけど…。
「あー。まあ、そういうこった。始めるぞ。」
そんなこんなで、何だか分からないけど、アスマさんと一緒に芋掘りをやることになった。丁寧に芋の掘り方を教えてもらって、ちょっとわくわくした。
でも、さっき先輩がポロって僕の名前言っちゃってたけど、名乗ってもいいのかなぁ…?ちょっと不安だった僕はアスマさんの様子を伺った。
「そんな不安そうな顔すんな。難しくねぇよ。」
アスマさんはそんな僕の様子を見て、にやっと笑った。優しそうな人だなぁ…。
「あ、はい!」
「おめぇ…イルカと同じくらいか?」
「はい。」
「苦労かけてすまねぇが…。カカシは、悪いヤツじゃねぇんだ。色々あってひねくれちゃいるが。」
「はは。そうですね。でも、いい先輩です。色々教えてもらって…。」
やっぱり先輩の友達なんだな。優しくて包容力があって…。僕もこういう大人になりたいな!でもどうしてこんなに大人な人と先輩が友達なのかなぁ?
…十歳は違いそうなのに。
僕がちょっと内心不思議に思ってたら、アスマさんが芋を掘りながらボソッと言った。
「まあおめぇもイイ奴みてぇだから、イルカも安心だな。」
「え?」
「アイツだけじゃ駄目になる。…たまにでイイから一緒にいてやってくれ。」
「…はい。」
確かに…先輩に任せておくと、イルカさんが色々大変そうだもんね。僕で出来ることなら頑張ろう!
何だか分からないけど、アスマさんの真剣な瞳に僕も応えたいと思った。それに、イルカさんの側にいるのは凄く楽しいし、気持ちが温かくなる。
ひとしきり芋掘りに勤しんで、大分芋が取れた。木遁でつくっちゃうより、こうやって地面に生えてるの抜く方が楽しいなぁ!今度収穫も土遁じゃなくて スコップとかでやってみるといいのかな!
僕が最後の一個を引っこ抜こうとしていたら、イルカさんが話しかけてきた。
「でっかい芋取れたよ!アスマ兄ちゃん!テンゾウさん!」
手に取れたばっかりの芋を掴んで掲げて見せるイルカさんは笑顔全開で、やっぱりかわいいなぁと思ったら、なんだかドキドキした。
「おー!こっちも取れたぞ!」
アスマさんもイルカさんに答えて芋を見せている。うん。どっちも大きいなぁ!
「これは、じいちゃんにお土産!」
アスマさんに芋を見せながらそんな事を言うイルカさんの背後から、声がした。
「ジジイにまでやるの?」
先輩だ!何で…何でアスマさんにまで殺気を…!?芋掘りに連れてきてもらったから報告してるだけだと思うのに、先輩の嫉妬は強烈だ。
僕まで何だか睨まれてる気がするのは気のせいじゃないだろう。
名前…呼ばれたからかな…!?
僕が怯えている間にも、イルカさんは楽しそうに話している。キラキラした瞳がやっぱりキレイで、ソレを愛おしそうに見つめている先輩といっしょにいると、 何だか完成された絵みたいだった。
感動っていうか…何だかちょっと不思議な気持ちになって、でもやっぱり何だかさっきから胸の痛みが取れなくて…動揺してるってのに、 先輩たちは僕たちそっちのけでいちゃついてくれた。
「だってさ!芋堀りに来れたのって、じいちゃんのおかげだから!」
「イルカは優しいね…!」
「カカシのほうが優しいよ!俺にでっかい芋譲ってくれたじゃん!」
「あー…ばれてた?」
「カカシ…大好き!」
「うん…!俺も…!」
ぎゅうぎゅうとお互いを抱きしめあって、泥とかがついてるのに幸せそうな二人に…正直当てられた。
「まあ、その、無理すんなよ?」
「あー…はい。」
…僕は背中を力強く叩くアスマさんの言葉に、ちょっと涙が出そうになったのだった。
楽しかったんだけど。ね…。

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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)続き。
とりあえず苦労症を増やしてみました。

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