先輩6 -お袋の味-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

変な夢を見て、それから任務が終わるなり、先輩に修行と称して半殺しっていうか全殺しにされかかった所をイルカさんに庇われて、 …気がついたら僕は知らない家で寝ていた。
「ここは?」
「あ!おはようございます!テンゾウさん!」
天井が違う。それに作りかけのジオラマが無い。それに…イルカさんだ!ってことは…こっここ!!!先輩と奥さんのうちじゃないか!? 逃げないと…殺される!!!
僕は慌てて逃げようとしたけど、間に合わなかった。
「起きたか。じゃ、続き…」
来た…!奥さん大好きのわがまま嫉妬大王が…!!!
思わず震えた僕の前に、イルカさんが立ちはだかった。
「駄目だよカカシ!だってまだ具合悪そうだし!まずはご飯でしょ?」
イルカさんは必死で僕を庇ってくれる。…返って先輩がそれに眉を吊り上げていったけど、僕は嬉しかった。任務でもないのに庇われるのなんて初めてだ…!
そんな僕に、やっぱり先輩は厳しかった。
「そんなの放っといても治るよ。それくらいで根を上げてるようじゃ暗部やってけ無いんだから。」
面倒くさそうに言った先輩の言葉に、イルカさんがいきなりうつむいてしまった。
「カカシも…こんなになっても頑張ってるんだ…」
ああ!イルカさんが落ち込んでる!慰めなきゃ!
「あの!先輩は強いから大丈夫です!僕が…その、まだまだ修行が足りないから…!」
「ほんと?カカシ?無理してない?」
イルカさんは涙を堪えた真っ赤な目で、じっと先輩を見つめている。
僕は戸惑い押し黙ってしまった先輩に、木遁も使って必死でジェスチャーした。
(先輩!ここはさりげなくご飯に…!!!)
「大丈夫だよ!俺、強いから!ねぇソレよりおなか減った。ご飯にしない?」
「うん!もう出来てるから行こう!」
ふぅ…コレで大丈夫そうだよね!
僕が一安心した所に、イルカさんが手を差し伸べてくれた。
「テンゾウさんも!」
この手は…取ったら多分行き先が…先輩睨みすぎです!イルカさんが気付くから!
「あの!大丈夫です!ソレより先輩が…僕との修行に付き合ってもらっちゃったから疲れてると思うんです!ご飯を!」
「あ、そうか!カカシ!ごめんね?」
「大丈夫!でも楽しみだな。イルカのご飯!」
「あのね!今日はさんまにしたんだ!カカシが帰って来るから!」
「イルカ…!ありがとう!」
愛の抱擁ってやつか…うらやましいなぁ…。あと、先輩の殺気でちょっと、いや、大分疲れちゃったからもう帰りたい…。 イルカさんのご飯は食べたいけど、その前に先輩に何回殺されかかるか…。地雷原を裸で突っ走る並に怖いよ…。
「テンゾウ。早くしろよ!イルカが待ってるだろ!」
「はい!」
この感じだと…帰っても怒られそうかな…?
それなら、僕も食べたいな。イルカさんのご飯。家庭の味って知らないから楽しみだ。まあ、後がすっごく怖いんだけどね…。
「カカシー!」
イルカさんが先輩の名前を呼ぶと、すごい勢いで先輩がそっちを向いた。
「すぐ行く!テンゾウもさっさと来いよ…?」
どす黒いチャクラを放つ先輩にせかされて、僕は疲れてガタガタの身体を起こし、大急ぎで声のする方に向かった。
*****
「美味い!イルカはだんだん料理上手になるよね!」
「えへへ!」
僕は…正に今、新婚家庭にとってお邪魔虫なんじゃないだろうか?
僕なんか置いて帰ればよかったのに…大方先輩がイルカさんに押し切られたっていうか…泣かれたとかで連れて来てくれたんだろうけど。 何だかいたたまれない。どうしてこんなに悲しいのかな。僕は。
…二人ともとっても幸せそうなのに。
「テンゾウも。早く食え…。」
先輩の視線がさっさと食って出て行けと主張しているので、僕は慌ててイルカさんのご飯に箸をつけた。
「…おいしい…!」
すごい!僕と同い年くらいなのにどうしてこんなに美味しく作れるんだろう!!!僕なんか料理めんどくさくて、食べに行くか自分で作った 木の実ばっかり食べてるのに…!
「ほんと!やったぁ!カカシはいっつも何作っても美味いっていうから…心配だったんだ!ありがとうございます!」
まあ、先輩ならいいそうだよね。でも、実際このご飯はとっても美味しい。
「あの、先輩は本当に美味しいから言ってるんだと思いますよ?凄く美味しいし…」
それに温かい感じがする。ご飯だけじゃなくて、この雰囲気が。すごいなぁ…イルカさんは…!
「おい。テンゾウ。…あとでちょっと修行見てやる。」
「はい…。」
そうだよね。こうなるよね。そして今度こそ、その辺に放っておかれそうだよね。
「お前も料理覚えろ。忍は身体が資本だ。」
「え?」
「お前ほっとくとハムスターみたいに木の実ばっかくってるだろ。」
見られてたのか…!!!先輩はいっつもイルカさんのことばっかり見てるから気付いてないと思ってた…。さすが先輩だなぁ…! 嫌いなやつでも部下のことは気を配ってるんだ…!!!
「あ、ありがとうございます!」
感激のあまり、頭からチューリップとか生えそうになったけど、必死で堪えた。でも、何だか視界が涙で…。
「俺も!それなら手伝うよ!だってカカシ疲れてるんだよね!」
あ、ウソ。イルカさん、ソレ、禁句!!!
「いやその!先輩にはご迷惑かと思うんですが、先輩に野営時とか…その、平常時とは異なる状況下での食糧調達技術についてご指導 ご鞭撻して頂こうかと!!!」
慌てて自分でもわけの分からない事を口走ってしまったが、先輩から放たれた、刺すような視線と殺気は治まった。
「そっか…。でも!おうちで料理するときに困ったら、いつでも相談してください!俺でよければ一杯教えるから! あと、これ、俺の料理メモです!持ってってください!」
「ありがとうございます!」
イルカさんと料理…なんだかすっごく嬉しい!!!でも…一生こないんだろうなそんな日は。
「イルカは優しいね…!大丈夫。俺がちゃんとビシバシしごいて教えるから!!!」
そうですか、しごくんですか、そうですか…。
「宜しくお願いします…!」
…僕は、そう言うことしかできなかった。
*****
そうして僕は、先輩に嫁イビリもかくやとばかりに、恐ろしい厳しさで料理を仕込まれた。イルカさんの料理メモも…取られちゃったしな…。
「テンゾウ。出汁が薄い。もう忘れたのか…?」
「わあ!すみません!!!」
いちいち怒られながら、それでもちゃんと料理を教えてくれる先輩のことを、僕はちょっとカッコイイと思ったのだった。

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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)続き!です!!!
一人でもおばかなテンゾウたんスキーがいらっしゃることが確認できたので増やしちゃいました!!!
ご意見ご感想大歓迎!!!
微妙すぎですがそれでも勝手に続きます…。

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