先輩3 -伝令-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

明日…任務に出ているカカシ先輩の所に伝令に行くことになった。
正直気が重い。なぜなら、今度の任務は危険度が高くて、先輩の奥さんが遊びにこれないからだ。かれこれ2週間位奥さんであるイルカさんに会えていない先輩は、 僕の前に伝令にいった者が、怯えきってしばらくぶるぶる震えるくらい機嫌が悪いらしい。
もともと俺様だけど、やっぱり奥さんと会えないのが辛いんだろうな…。
それでも、任務は今回大隊長を勤める先輩のおかげで大分有利にことが進んでいて、この分なら3ヶ月はかかると言われたこの任務は近い内に片付くだろう。 先輩に脅された伝令の話によると、1ヶ月くらいで何とかなりそうだと聞いた。やっぱりイルカに早く会いたいとか言ってるらしい…。
…愛の力ってヤツかな?やっぱりすごいなぁ…先輩は!
でも、ずっと奥さんに会えないでいるから寂しいんだろうな…。僕にも何か出来ないかなぁ…。
しばらく考えてみた僕は、いい事を思いついた。
「そうだ!先輩の奥さんから手紙を送ってもらおう!」
僕は、早速先輩の奥さんである、イルカさんの所へ式を飛ばした。先輩は、部隊の中心にいるから、式を飛ばすこともままならないだろうけど、 これから里を発つ僕なら大丈夫なはずだ。
先輩抜きで奥さんに直接会うと半殺しにされるけど、コレくらいなら許してくれるんじゃないかな?
それに…イルカさんもきっと寂しいのを我慢しているだろうからいい機会だと思った。
「先輩に…届けてあげないとね。」
俺は二人のために頑張ろうと決めた。
*****
里を発つ直前に、イルカさんから巻物が届いた。イルカさんの性格から言って、一生懸命書いてたせいで遅くなったんだと思う。そう思うと、手紙が ものすごく大事なモノだって思えた。
しかも、僕宛にも手紙があって、先輩の事を心配してくれてありがとうってことと、先輩に手紙を届けてくれて嬉しいって書いてあって、 僕の心を和ませてくれた。
「本当にいい奥さんを貰ったよね。先輩は。」
思わずつぶやきながら、イルカさんの事を考えた。
イルカさんは…僕のことも差別しないし、けなげって言うかいつも一生懸命で、思いやりがあるし。
この間思わず、いいなぁ…っていったら、先輩に聞きとがめられて、イルカさんみたいなお嫁さんを貰うには、里最強を目指せるくらい強くないと駄目だって 言われて、ずたぼろになるまでしごかれた。…ちょっとイルカさんを褒めすぎて先輩を怒らせちゃったのかもしれない。
それでも…僕は頑張れる。いつか出会う僕の可愛いお嫁さんのためにも!
「頑張ろう!」
そんな事を考えながら、森を駆け抜け、先輩の下へ急いだ。
イルカさんから預かった手紙と伝令用の巻物を大事に抱えながら…。
*****
「あー…テンゾウ?さっさとそれよこせ。で、失せろ。」
先輩の下にたどり着くなり、面倒くさそうにため息をつかれた。セリフもいつも通りだ。先輩はイルカさんがいないと、相変わらずどこまでも俺様だ。
おかげで他の部隊の仲間が、ちょっと怯えている。
「あ、その…こっちは伝令用なんですが…これ…。」
「!!!イルカ!!!」
すごいな。さすが先輩。一目見ただけでイルカさんの手紙だってわかったみたいだ。伝令用の手紙をさっと読んだ後燃やして、イルカさんの方だけを 食い入るように読み込んでいる。その鬼気迫る勢いに、ひょっとしていけない事をしちゃったんじゃないかと不安になってきた。
僕は…先輩に怒られなれてるから別にかまわないけど、イルカさんは…コレが原因で夫婦喧嘩とかになったらかわいそうだ…!!!
「あ、あの。先輩もなんですが、イルカさんが寂しいんじゃないかって思って、僕が勝手にお手紙を預かってきたんです。…イルカさんを責めないで やってください。」
「イルカ…」
だが、俺の言葉など先輩に届いていないようで、手紙を熟読しながら奥さんの名前をつぶやいている。
周りの暗部たちの僕への視線が痛たい…。いつもと違う先輩の様子に、お前何やってんだ!って言ってるみたいに鋭い視線が突き刺さる。 イライラしてるときの先輩をうっかり刺激すると、酷い目に合うってみんな知ってるから必死だ。
その空気に、このまま逃げ帰りたい気もしたけど、それじゃイルカさんが可愛そうだ。
せめて返事を…手紙じゃなくて口頭でもいいから持って帰ってあげたい。
僕は勇気を振り絞って先輩に再度話しかけた。
「…先輩。これで伝令は終わりなんですが…お返事、言付かっても宜しければ…」
「あ、あ、うん!!!えっと…ちょっと待って!!!」
さっきと全然声が違う。凄く浮かれた感じの声だ。ということは…喜んでもらえたのかも!
その様子に他の暗部たちも僕に責めるような視線をよこすのを止めて、場の空気が一気に緩んだ。
その間にも先輩は懐からすばやく取り出した巻物に、大量の文章をすごい速さでつづっていく。一本目の巻物は、一瞬にして切れてしまった。
「切れちゃったか…これ、取り合えず持ってって。で、愛してるっていっといてね。あー…もうちょっと書きたいことがあったのに…」
残念がる先輩があんまりにもがっかりしていたので、僕はこんなこともあろうかと用意しておいた予備の巻物を取り出して、先輩に差出した。
「あの、先輩…これでよろしければ…」
「!気が利くじゃない!」
気を良くした先輩は、僕の手から巻物をひったくるとまたすごいスピードで書き出して、満足そうに言った。
「これでよしっと…。テンゾウ。寄り道しないで、すぐ届けてね。…たぶん明日には帰るから。もうこんな任務ウンザリだし、イルカに会えないなんて 馬鹿らしいしね。」
そのセリフに周りのみんながざわついたのが分かった。でも、先輩はウソは言わない人だ。奥さんの手紙でヤル気がでたんだろう。
「はい!責任持ってお届けします!!!」
「…確実且つ迅速に、イルカに届けてね。」
ご機嫌な先輩は、俺の手に手紙を渡すと、イルカさんの手紙を大事にしまって、立ち上がった。
「…おい!もう動くぞ!」
休憩中だったらしい仲間たちは面食らってたけど、先輩がさっさと先陣切って飛び出していったのに慌てて着いていった。先輩…カッコイイな…!
僕もこうしてはいられない。ぼやぼやしてたら先輩の方が手紙よりも先に帰ってきてしまうかも知れない!
もう見えなくなった先輩の背中を思い出しながら、僕も里へ急いだ。
*****
イルカさんに直接会わないで手紙を渡すために、僕が木遁で作った木馬の背中に手紙をしょわせて、遠くからイルカさんの事を観察した。
僕の作った木馬に最初驚いていたみたいだったけど、イルカさんは楽しそうに木馬を眺めて、背中の巻物に気付くと、また、あの輝くような笑顔を浮かべて、 大喜びで持って帰っていった。
それを確認した僕は、満足感に包まれながら、家の前を後にした。
…まではよかったんだけど。
「おいテンゾウ。イルカから礼だ。…ありがたく思えよ!?」
先輩から差し出されたのはイルカさんからの手紙とお礼の何かみたいだ。
…それを差し出す先輩は背後から真っ黒なチャクラを立ち上らせ、恐ろしいことこの上ない。
伝令では怖い目に合わないで済んだけど、結局先輩の恐怖による支配からは逃れられなかったか…。
「あ、あの。先輩も、手紙一緒に読んでください…!ちょっと、ホラ、折角ですし!」
自分でも不審極まりないが、もし先輩に中身を疑われたりしたら困る!今度こそ全殺しにされちゃうかもしれない…!!!
「あ、そ。」
びくびくしながら差し出した手紙をひったくると、先輩はさっと紐解いて睨むように読んで…笑み崩れた。
「イルカったら…!!!」
恐る恐る僕も読んでみたら…手紙を届けてくれてありがとうっていうお礼と、先輩が早く帰ってきて嬉しいとか、内緒だけど先輩からの初めての手紙だから 大事に取ってあるとか書いてあって…正直あてられた。
「先輩…愛されてますね…!!!」
思わず僕まで嬉しくなって、…でもなんだかちょっと、胸がもやもやした。何だか頭から煙が立ちそうな感じだ。
なんでだろう…?
「テンゾウ…またお前が伝令のときは頼むね。」
「はい!!!」
先輩の笑顔に後押しされて、僕は自分のもやもやは無かったことにしようと決めた。
その後お例のお菓子に喜んでたら、先輩に射殺されそうな視線をよこされたのは…ご愛嬌だ。
*****
…手紙を受け取って以降の先輩の活躍が半端じゃなく凄かったため、上層部が僕を先輩専用の伝令役に据えたのは、それからすぐのことだった。
そんな訳で、僕は毎回毎回…先輩のノロケと殺意の篭った視線と戦う羽目になった…。
失敗したかな…とも思ったけど、イルカさんが本当に嬉しそうにしてるから…まあ、いいかな?

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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きです!
ご要望を頂けましたので、ひっそり増量してみました!
ご意見ご感想大歓迎!!!
でもこんな上司は…いやだ…。


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