先輩27(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

今年もやってきた先輩の誕生日。
でも、今までとは違うことがあった。
前日に相談を持ちかけられたのだ。それも当の祝われるはずの本人に。
「イルカがさぁ…中忍試験受けるっていうのよ」
「え!そうなんですか!」
確かにそろそろ中忍にって言われてもおかしくない年だ。…と思う。
僕は…便宜的に適当な年齢で中忍になったことになってるけど、実際は実験体になったおかげでまともな環境にいなかったから、ほぼ無試験で中忍になっている。
上忍になったのは一応試験を受けてからだけど、そもそも僕は…先輩もだけど、一般的な流れで忍になってない。
だからあんまり普通の忍っていうのが良く分からないんだけど、イルカさんの実力なら中忍になるのは簡単だろう。
…情に弱い所は心配だけど。
「だからお前止めろ」
「えぇ!?」
なんだ!?なんでそんな話に!?
…そりゃ中忍になれば外の任務だって増えるし、この所の情勢だと心配だっていうのは分かるけど…。
イルカさんは、あんなにも一生懸命に修行して、強くなろうとしてるのに。
そもそも、僕が言ったからって諦めるような人じゃない。
心配を感謝してくれるかもしれないけど、その分大丈夫だって証明しようとして無茶するんじゃないかなぁ…。
「なんだ?テンゾウの癖に口答えする気か?」
殺気立たれても困りますよ先輩…!でも、もしかして…。
「…心配しないでって言われちゃったんですか?」
「なっ…!?」
あー…やっぱり、か…。
先輩のことだから全身全霊で心配だっていったんだろうし、もしかして泣き落としまでしたんじゃないのかなぁ?
そんなことしたらイルカさんみたいな庇護欲の強いタイプの人は、却って無理しちゃうかもしれないよね。
「あのですね。多分、イルカさんは止めると逆に無理してがんばっちゃうと思うんです」
「…お前に何が分かる…!」
あーもう!なんでここで怒るかなぁ…!?
「ですから!僕が変に止めるより、三代目様とか…!」
「もう手を回した。…却下された。イルカが泣くから駄目だって」
親馬鹿ばっかりなのか…イルカさんも苦労が多い人だよね…。
イルカさんなら立派な中忍になれると思うんだけどなぁ…。先輩がなにくれとなく修行を見てあげてるし、元々筋も悪くない。
それに、中忍になる理由は、きっと。
「先輩と、一緒にいたいんでしょうね。ずっと」
「え?」
あー…これ、ホントにわかってないな。きっと。
先輩はイルカさんのことになるとこれだから…。
「強くなって、一緒に戦いたいんですよ。きっと。一人で待ってなきゃいけないのが辛いんだと思います。手紙、届けに行く度に心配して、それから…凄く寂しそうにしていますから」
「そう、か…イルカは我慢ばっかりするもんな…。寂しがりやで意地っ張りで…」
イルカさんのことになると周りが見えなくなるんだよね。先輩は。…それにイルカさんも。
「イルカさんも、先輩がこんなに心配してるっていうのを分かってると思いますよ。だからこそ意地でも強くなろうとしてるんです。きっと。だから…!」
「中忍になんかなったら、どうなるかわかんないでしょ!…命の危険だって増すし、変なのにちょっかいかけられることだって増える!ま、俺以外が指一本触れられないように術印も札も持たせてるけど!」
そんなことしてるんですか…先輩らしいけど…。
「えーっと。じゃあ、その」
「役立たず。じゃ、どうすりゃいいってのよ!イルカが…イルカになにかあったら俺は生きていけないのに!」
それは良く知っている。分かたれがたい片割れ同士、きっとどちらかになにかあればこの二人は消えてしまう。
…僕を、おいて。
「そんなの、駄目です。二人とも生きてください」
「テンゾウ…?」
「下忍だっていつ使い捨てにされるか分からない情勢です。いっそイルカさんには強くなってもらった方が絶対に安全だと思います。…修行を一緒にしてあげた方が懸命だ」
「ナニ言って…!」
「イルカさんが一人で無茶をしないと思いますか?先輩を誰よりも守りたくて、安心させたくていつだって一生懸命なのに…!」
ポロリと涙がこぼれた。一度溢れるととめどなく流れ落ち始めてしまったそれは地を濡らし、みっともないと思っても止められない。
だって、駄目だ。イルカさんが無茶をして、先輩も無茶をして、二人共に置いていかれるなんて絶対に。
「…わかった。帰ってから修行の時間を取る。それに…相談してみる」
「そうして、ください。二人ともどちらかに何かあったらどうなるか、分かってらっしゃるでしょう?絶対に無茶はしないでくださいよ…!」
懇願が通じたというより涙に怯んだだけかもしれないけど、必死になって言い募った。
イヤだ。もう二度と。
…失いたくなんてないんだ。僕の居場所を。
「…じゃあ、またな」
「え、…ああ、はい」
来たときと同じ唐突さで去っていった先輩は、置き土産を残していった。
誕生日会の招待状。…薄水色のその封筒に踊るイルカさんの文字がやけにまぶしくて、苦しい。
自分でもなんでこんなに辛いのかわからないまま、封筒を手に取って抱きしめた。
答えが、もう逃れようもない近くに来ていることを感じながら。


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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きでございます…。
おたおめ鬼畜先輩!
ではでは!なにかしらご意見ご感想突っ込みとうございましたらお気軽にどうぞ!

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