先輩26 -桜の木下であなたと 中編-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

「遅い」
「す、すみません!」
案の定先輩は不機嫌の塊みたいになって待っていた。
そりゃそうだよね。お料理は俺がするから場所取りしててなんて言われて、先輩一人でここで待機してるんだから。
…俺がしますよって言ったのに、カカシにお弁当の中身ないしょにしたいんですって言われたら…代われっていう先輩の言外の圧力に屈することもできなかった。
結果的にこうしていらいらした様子を隠そうともしない先輩と一対一で…。
ああ。帰りたい。
「あれ?イルカは?」
「あ、まだ全部運べていないので。イルカさんと一緒にすぐに戻ります!」
なんだか張り切って沢山作ってるんだよね。
こんなに食べるんですかって聞いたら、おすそ分け分も入ってるって言ってたから、花見ってそういうものなのかな。
「…んー?あっそ。ああほんとだ。まだ作ってるみたい?」
「先輩まさか…影分身ですか!?」
場所取りに影分身使うなんて…。
任務より絶対こっちの方が真剣だよね…先輩の場合は。まあいいんだけど。
…僕、変なこといってないよね…!?二人っきりで料理してたけど、イルカさんの先輩の甘いもの嫌いの話とかしかしてなかったはず…!
「本体はこっちなんだから約束は破ってない」
「そ、そうですね」
不機嫌は不機嫌だけど、約束破ったって言われるのがいやみたいだし、まあ僕に被害がなきゃどっちでもいいや。
「で。早く帰んなさいよ。イルカががんばってるでしょ?」
「は、はい!」
そうだった!イルカさんを待たせてるんだった!急がないと!
「ほら、なにやってんの?」
「あ、その、ちょっとまってください…あった!はい!」
「なにこれ?」
「イルカさんから、いっぱい待ってて貰ってるから渡してって言われてたんです!」
先輩の殺気のおかげで危うく忘れるところだった。
イルカさんお手製のあったかいお茶だとお菓子だ。出るときにも渡してたけど、さめちゃってるかもしれないしね。
まあこれからご馳走責めにあうんだけど。
「ん。ありがと」
「じゃ、こっちはもってかえって詰めなおしてきます!」
三十六計逃げるにしかず。先輩がご機嫌な今のうちに退散してしまおう。
「早くね」
それでも投げかけられた言葉には苛立ちが残っていたけど、僕はそれ以上怖い目に遭わずに里に帰ることができたのだった。
******
「じゃ、行きましょうか」
「んっと、水筒持ったし、お重は…これで最後!」
うーん。やっぱり大荷物だ。
どれもこれも結構な手がかかってるから、美味しいのは間違いないけど…。
残したりしたらもったいないし、先輩に殺気立たれるし、…なによりイルカさんが悲しむだろうからがんばらないと。
「僕はコレとコレとこれを持つので、ついてきてください。ちょっと距離があるんですが…」
「平気です!それに荷物ももっともてるのに…」
「あー…道案内をするときに目立った方がいいですから!」
まあ暗部装束に外套羽織ってたら目立たない訳ないんだけど。それはそれだ。
「そっか…でもあの!帰りはちゃんともっと沢山運びますね!」
「ありがとうございます」
まあ先輩が僕とか忍犬君とか使うだろうから大丈夫だろう。
それよりも…その表情の方が気になった。
「テンゾウさん?」
「いえ、その…具合でも悪いんですか?」
どうして苦しそうな顔をしてるんだろう。まさか体調が悪いのに無理してたりしないだろうね!?
「だ、大丈夫です!なんでもないですから!」
途端に笑顔になったけど…心配だ。
チャクラに乱れは無さそうだけど…僕には話せないことなのかもしれない。
…そう思った途端ずくりと胸が痛んだことには、気づかないフリをした。
「僕の勘違いみたいですね?じゃあ先輩が待ってるし、急ぎましょうか?」
あからさまにほっとした顔をしたイルカさんに複雑な思いを味わいながら、先輩のことを思った。
きっと、先輩なら何とかしてくれるはずだ。…僕じゃ、無理でも。


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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きでございます…。
と言うわけであとちょこっと桜変続きます。
ではでは!なにかしらご意見ご感想突っ込みとうございましたらお気軽にどうぞ!

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