先輩(人妻からのプレゼント)

「イルカ。」
「カカシ!」
「行くよ?」
「うん!」
「食らえ!!!」
「えい!!!」
「わあ!!!何すんですか!!!先輩!これ…水遁?」
さっきから木遁使って新しいジオラマの構想を練ってたら、急に背後から水をかけられた。
驚いて先輩の方を振り向くと、先輩がしれっと言った。
「テンゾウいじめ?」
…いつものことだけど、僕の扱いが酷すぎるような気がするな…。考えちゃ駄目だって他の仲間は言ってるけどさ…。
その様子にびっくりした目をしているのは…先輩の奥さんだ!
「え、びっくりさせるんじゃなかったの?」
きょとんとした目で水をかぶってびしょぬれの僕を見ている。でも、今任務中なんだけど!?
「え、何でイルカさんがここに?」
流石に驚いて先輩の方をみると、イライラした様子で睨みつけられた。
「遊びにきただけだけど?」
明らかに僕に向かって放たれているのは…殺気だ…!
「えっと!驚かせてごめんなさい!あ、これ、差し入れです!」
怒りを隠さない先輩と対照的に、イルカさんはすまなそうな顔をして、ぺこんと頭を下げると、僕に包み紙に包まれた何かを差し出してきた。
相変わらず大きな目をきょろきょろと動かして、可愛らしい。
僕はちょっとドキドキしながらその包みを受け取った。
「あ、ありがとうございます!」
僕がテレながらお礼を言うと、イルカさんもちょっと照れたように笑いながら、鼻の傷をかいていた。
何だか嬉しくなってきた…!また先輩と任務で緊張してたけど、イルカさんがいると和むなぁ…!
二人でニコニコしていたら、地獄の底から響くような声が、殺気と共に僕の耳に届いた。
「…イルカ。ちょっとあっちで待っててくれる?テンゾウと話があるから。」
イルカさんにはにこやかに。僕には射殺さんばかりの視線を向けながら先輩が話す。恐ろしい…!
「うん!…待ってる。」
コクンとうなずいて、素直にてってってーと歩いていくイルカさんを見送りながら、僕は…色々と覚悟した。
「大好き。イルカ…。すぐ終わるから…。」
とろけるような口調でイルカさんに向かってつぶやくと、先輩は目をぎらぎらさせながら、僕の方を見た。
「先輩…あの!」
恐る恐る何とかしてこの場をしのごうと話しかけたが、先輩はそれを待ってくれなかった。
「それ、よこせ。」
僕の手の中の包みを指差すと、殺気で僕を脅してきたのだ。
「あ、開けてみませんか?まずは…」
僕は震える手で包みを抱きしめた。イルカさんが折角くれたものだから、できれば中身の確認くらいはしたい。
「…早くしろ。」
先輩もしぶしぶ許してくれた。殺気は消えなかったけど。
焦りのせいで手間取ってしまったが、何とか中身を取り出し、広げることができた。
「コレ…。僕の名前入りの…手ぬぐい?」
テンゾウさんって書いてある。…僕暗部なんだけど…。
「イルカは優しいからな。…取り上げようと思ったけど、イルカが感づくか…ちっ!大事にしろよ!」
先輩は僕に向かって舌打ちしながら、吐き捨てるようにそう言った。
でも…!
「いや、僕暗部だし…あとこの絵…僕の頭から桜の木が生えてるのは…?」
何で頭から桜…?確かに木遁使いだけど、イルカさんの前ではあんまり見せたこと無いはずなのに…。先輩があることないこと吹き込んだのか…!?
「絵も上手いよな!!!イルカは何でも良くできるから…。手…出すなよ?」
先輩はイルカさんを褒めるときだけニコニコと笑っているけど、僕に話しかけるときは完全に…殺る気まんまんだった…。
それよりなにより…!!!
「いや、ちょっと待ってくださいよ!?これ!!!」
何度もいうけど、僕暗部なんですけど!人相が分かるもの持っててどうするんですか!?
だが、勿論先輩が僕の言葉を聞くはずが無かった。
「イルカー!!!もう大丈夫だからこっちおいで。」
話は済んだとばかりに、イルカさんを呼び寄せ、早速抱きしめている。
「うん!…あ、開けてくれたんだ!…気に入っていただけましたか?」
当のイルカさんは、僕がプレゼントを気に入ったかどうかドキドキしてるみたいで、期待と不安の篭った視線を向けてくる。
「え、」
そんな視線を向けられると、正直な感想は言いがたい…!どうしよう?
「ああ、もちろん!感激のあまり声が出ないぐらいだよ!!!」
口ごもっている間に、先輩がイルカさんに適当な事を言っている。
…これ以上言っても無駄だよね…。
「良かった…!カカシがさ、いつもお世話になってるから…。」
嬉しそうに微笑んで、僕から先輩に視線を移すイルカさんは、本当に先輩のことが…。
「イ…イルカ…!!!」
先輩も自分の奥さんにそんな視線を向けられて、感極まった声を上げている。
…コレはマズイ!!!
「あ、その。ありがとうございます!!!僕はその、あっちの木が呼んでるので!!!」
僕は何とかその場を誤魔化すと、急いで先輩たちからはなれた。
「…少しは空気読めるようになったか…。」
「カカシ…あのさ…。」
「うん。あっちで…話そう?」
…いちゃいちゃする先輩たちの話し声は聞こえてしまったけど…。
*****
先輩たちからはなれると、流石に愚痴の一つも出てしまう。
「なんで…何でこんなにしょっちゅう呼び寄せるんだよ…。でも…絵も上手いんだなー…かわいいし…。は!僕は何を!?」 僕…今なんか変なこと言ってたみたいな気が…!?
パニックする僕を他所に、先輩たちはターゲット到着寸前まで、延々といちゃいちゃし続けたのだった。

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誰もわからないんじゃないかと思いつつ、先輩の続き。
こうしてひっそり時々連載にしてみようかと…。
ニーズがなくても書きたいので!!!
カカイル←テンゾウ(無意識)な話です…。
それと…ヘソだし毒舌少年が彼の運命の人でもいいですか…?(勿論食われる方で。)
まあそこまで書くか分かりませんが…。ご要望やらご意見やらご感想やらはお気軽にどうぞ…。

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