先輩17 -嫉妬と秘密-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

先輩が怖い。なんでかっていうと。
「…イルカ、帰ってくんの最近遅い…!」
任務が終わって、普段ならすぐさま追払われるか、イルカさんへのノロケを聞かされるか、報告を押し付けられるか、八つ当たりされるかなんだけど。
…今日はがっちり首根っこつかまれてそのまま地雷原…もとい、先輩とイルカさんの愛の巣に連れ込まれちゃったんだよね…。
新婚さんかついつだってラブラブな二人の家にお邪魔するなんて、Sランク任務より恐ろしいっていうのに!殺気まみれの室内の空気は重苦しいことこの上ないけど、イルカさんのことで先輩が我慢なんて出来るわけがない。
…僕に出来るのは、精々役に立たない慰めを口にするだけだ。
「えーっと…それはその…きっと任務の難易度が上がってるんだと思うんですが…」
先輩はもう随分前から上忍だけど、イルカさんだっていつか中忍になる。正直そこから先は先輩が止めちゃうだろうけど、実力的には十分上が狙えるはずだ。
っていうか、実はイルカさんの帰りが遅い理由は先輩が気にするようなことじゃないんだけど、ソレは口止めされてるから僕は耐えるしかないんだよね…。
「イルカは任務になんて行かなくていいのに。俺がずーっと守るし、あんなに可愛いのが戦場に行ったら何されるか!上忍なんかになったら確実に飢えたヤツらに狙われるだろうし…!」
まあ確かに分かる。戦場にあんなに穏やかで真っ直ぐな人が行くのは危険だ。これからどんどん成長していけばまた違うかもしれないけど、イルカさんのどこまでも真っ直ぐすぎる本質が早々簡単に変わる事はないだろう。むしろ先輩がソレを許さないだろうし。
あの人に惹かれるものたちは先輩が危惧したような意味じゃないのも含めると、すごいことになるだろう。
眩しすぎる光は闇に生きるものたちを引き寄せる。…時にはソレが暴力という形にだってなりうる。
それなら、いっそ里に閉じ込めておきたいと思う先輩の思いが分からないわけじゃない。
僕が…僕だって…いや、その、変な意味じゃなくて、先輩の奥さんはい人だよね!先輩に、ぴったり過ぎるくらいぴったりだ。
何だか急に痛み始めた胸が苦しい。
ここのところずっとこうだ。
先輩とイルカさんが仲良くしているは嬉しいし、先輩のためにはすごくイイコトだって思うのに、なぜか凄く苦しくなる。
先輩にだけ向けられるあの笑顔が、先輩のために頑張るイルカさんの姿が、なぜか僕を追い詰めていった。
怪我の痛みには疾うに慣れてしまったっていうのに、この痛みには少しもなれなくて苦しさは増すばかりだ。
それに、イルカさんが遅くなってる理由を考えると、もっと痛みは激しくなってしまう。
「イルカさんは、先輩のために頑張ってるんだと思いますよ?」
だからつい、そう言ってしまった。そんなコトを言えばどうなるか僕は知っていたのに。
「へぇ…?テンゾウのくせに、何か知ってるんだ?」
ターゲットを前にした時と比べ物にならない殺気と共に笑顔を浮かべた先輩が僕の首に手をかけた。
ああ…これはもう、僕は駄目だろうな…。
覚悟を決めるのは早かった。…なぜって、先輩をイルカさんのことで怒らせた場合、十中八九半殺しというか、九分殺しぐらいの目に合うからだ。
「くっ…うっ…!」
曖昧な胸の痛みと違って、こっちは馴染みのある物だ。
「言えないの?」
静かな声は命令だ。でも、言えない。
だって、イルカさんが悲しむのは嫌だ。
「僕、からは…!」
ああ、意識が遠のく…。でもきっとあっさり失神させてくれるほど、先輩の怒りは浅くないだろう。
「そ?じゃ、いいけど。覚悟、出来てるよね?」
じわじわと伸びる手に、僕は痛みを覚悟した。…んだけど。
「え?」
僕を先輩から引き剥がしてくれたのは、イルカさんだった。
「カカシ!テンゾウさんに何してるんだよ!」
胸に仕舞いこまれたまま、先輩の殺気が高まっていくのを感じる。
駄目だ。これじゃ事態が悪化する…!
「いえ!これはちょっと修行中だっただけです!あの、その件で打ち合わせがあるのでちょっとだけ先輩お借りしていきます!」
僕は、とっさに先輩の腕を引っ張って、地雷原…じゃなくて、先輩たちの家から飛び出していた。
*****
「なにすんのよ!」
イルカさんの懐から僕が逃げたせいで、ちょこっと冷静になってくれたみたいだけど、怒りのほうはそうは行かない。
…しょうがない。言いたくなかったけど、これだけなら。
「先輩。来月の14日って何があるか知ってますか?」
「14日…?ああ。チョコの日?」
よかった!先輩も知ってたみたいだ!…まあ、あれだけもてるひとだから、当たり前かな?
とにかく、これでなんとかできる…よね!?
「イルカさんが、なにをしてるか気になるのなら、明日…そうですね。3時過ぎくらいにアカデミーの調理室に行って見て下さい。僕がいえるのはここまでです。隠してる理由も察してあげてください…!」
言い切ってから、僕がイルカさんと秘密をもっちゃったことに対する制裁を覚悟してたら、罵声所か殺気がぴたりとやんだ。
…恐る恐る顔を上げると…先輩がぱあっと顔を輝かせていた。
「そっか…!そうだった!来年は手作りって…!それでか!」
浮かれている。これ以上ないくらい。
ホッとしたのにまた苦しい。僕は一体どうしちゃったんだろう?
「ああ、テンゾウ。…イルカに俺が知ってるのばらしたら…」
「わかってます!…それより、もどって差し上げてください。一緒の時間が減って寂しがってるのって、多分イルカさんもだと思いますよ?」
先輩に対して普段ならこんな言い方しないのに。…どうしても我慢できなかった。
「あ、そうね!じゃ、さっさと帰れば?」
そういって姿を消した先輩は全然気にしなかったみたいだ。
自分が、分からない。どうしてこんなに…落ち込んでるんだろう?
訳が分からない思いを抱えながら、きっと明日になったら思い出したようにまた何か訳のわからない仕事を押し付けられるんだろうなって思った。

…ちなみに今回は上手なアイロンのかけ方だったんだけどね…。
もしかして僕をどっかに売るつもりだったりしませんか…!?先輩…!?


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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きでございます…。
チョコの日におすそ分け貰ってほくほくのテンゾウたんが、先輩に締め上げられる日は近い…!
そしてやっぱり将来的にヘソだしKY少年に売られますよ?テンゾウたん!
ついうっかり増やしてみたという話。 えー…ご意見ご感想など、お気軽にどうぞ…。

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