先輩11 -人妻の誘い-(ヤマト視点幼馴染カカイル夫夫)

今日の先輩は普段以上にイラついてる。
さっきも僕の攻撃が遅かったって怒鳴られた上に足踏まれてなんかぼそっと「ちっドンくさいんだよ!」って言われたし。
足踏まれるのと文句言われるのはよくあることだけど、セットになってるのは珍しい。
今も…。
「ちょっと!はやくしなさいよ!」
「わー!ちょっと待ってください先輩!」
敵部隊の掃討中なんだけど、先輩はさっき本隊潰したとき以上に焦りをにじませながら、敵を追ってる僕の横で怒鳴ってる。
…殺気をにじませたチャクラ全開で。
だれだよ!もう!こんな時に先輩に任務入れたの!って…僕たち暗部なんだから三代目だよね…。イルカさん泣いてないかな…?
「…もういい。俺が行く!」
「ああ!待ってください!って…もう行っちゃった…!」
駄目だ。今日はもう僕も諦めて、先輩のフォローに徹底しよう。報告とかにも僕が行けば先輩は早く帰れるし。
…こんなコトになったのは…イルカさんの誕生日に任務なんか入れた三代目のせいだから、下手に接触させたら火影邸が崩壊しかねない。
ソレくらいのコトは今の理性が飛んだ先輩なら平気でやるだろうから…。
「しょうがないよね…。」
僕は、我ながら疲労が周囲に漂うくらい深くため息をついて、とりあえず先輩が潰して言った敵の回収をはじめたのだった。
*****
「大体、終わったかな?」
先輩はすごい速さで敵を狩ってくれたので、僕の方にきたのは雑魚ばかりだったからすごく楽ではあった。
まあ、あれだけ派手にどっかんどっかん術使ってたら、敵も僕みたいに気配消してるヤツに構ってる余裕なんかなかったんだろうけど。
とにかくコレでもう帰還できる。
人数的にもだいたいこれで最後だと思う。
…今。先輩が向こうから引きずってきてる敵の首魁を入れれば丁度だ。
「先輩!これで片付きましたから、先輩は先にご帰還ください!僕が後は片付けますから!」
先輩の持って来たやつだけはそのまま連れ帰らないといけないけど、他のは処理班呼んだから大丈夫だし、一応木遁分身に見回りにいかせたからもし取りこぼした敵がいたらすぐ分かる。
そう思って殺気に気圧されながらなんとか笑ってみたんだけど。
「お前も帰るんだよ!」 「え!?」 「…イルカが待ってるからな…。」
…そうか…先輩の機嫌悪かったのってそっちか…!?
お祝いしたかったし、イルカさんに呼んでもらえるのはすっごく嬉しいんだけど…多分僕は後で先輩にぼっこぼこにされるんだろうな…。
ぎゅうぎゅうに拘束さえた敵の首魁と一緒に襟首をつかまれ引きずられながら、僕は諦めて体の力を抜いた。
先輩の本気の速度ではきそうになりながら。
*****
「お帰りカカシ…!」
「ただいま…イルカ…っ!!!」
感動の再会だ。
イルカさんの涙を堪えた表情にどきどきして、何だかもやもやしたけど、コレでイルカさんを誕生日に一人にしなくて済む。
僕はココで挨拶だけして帰りたかったんだけど…。
「良かった!テンゾウさんも来てくださったんですね!ありがとうございます!えへへ!」
…こんなコト言われたら帰れないし!!!
「こ、こちらこそ!お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとうございます!ご飯とか色々、カカシの影分身が作ってくれてたから一緒に食べましょう!…沢山あって食べきれないから一緒に沢山食べてくださいね!」
「あ、ありがとうございます…。」
あんなに術連発したのに影分身まで!?とか、イルカさんがかわいいなぁとかもあったんだけど…何より隣で恐ろしい殺気とチャクラを放つ先輩に、僕は今日の祝いが最後の晩餐になることさえ覚悟した。
「さっさと上がれ…。」
低く、地を這うような声に抗えず、逃げることさえ出来ずに…。
*****
「イルカ。おいしい?」
「うん!すっごくおいしいよ!」
「あとでプレゼント渡すね!」
「ホントに!?わー!ご飯だけでも嬉しいのに!でも…ありがとう!!!」
「イ、イルカ…!」
「カカシも疲れてるのにごめんな?」
「そんなことないよ!」
…激しくいちゃつく先輩と奥さんに、僕は下を向きながらご飯を食べ、イルカさんがこっちを見たら微笑み返し、先輩の殺気に満ちた視線にも耐え、和やかな雰囲気を保とうと必死で笑顔を返した。…大分引きつってたと思うけど、その辺は勘弁して欲しい。
でも、そろそろ限界だ。
「あの、これ。」
誕生日プレゼントは、実はずっと前から準備してあった。
…先輩がもうすぐイルカの誕生日だからってずっと言ってたしね。
でも、コレは明日とかその後とか…とにかく先輩のお祝いが済んだ後にしようと思ってたんだけど、持ち歩いてたから渡してしまうコトにした。
二人を見てるとほわほわするのに胸が痛いから。
「ありがとうございます!あけても、いいですか?」
「はい!もちろん!」
「ちっ!」
…先輩、せめてお祝いの時ぐらい我慢してください…!
視線でそう訴えてもイルカさんがキラキラした目で包み紙を開けてる間中、僕に突き刺さるような殺気が叩きつけられ続けた。
そしてでてきたのは…。
「イルカの根付とこれ、あ!こっちはカカシだ!」
「はい。あの、一応足止めくらいにはなるはずなので、いざという時には敵に投げつけてください。」
僕はイルカさんのために、かわいいイルカさんとソレを守るように寄り添う先輩をイメージして、普通に海にいるイルカと先輩のトレードマークつきのマントつけたカカシの根付を作った。
一応術もかけてあるから、先輩がらみで奇襲されても多少の足止めくらいにはなる。
…まあ先輩がそんなコト許すはずがないからいらないかと思ったんだけど、僕に出来ることはそれくらいだから…。
「とってもかわいいです!ありがとうございます!大事にしますね!」
そういって微笑んでくれたイルカさんの横で…。
「ちっ余計なコトを…!」
案の定先輩は殺気どころか印まで組み始めそうなくらいチャクラを練っている。
…こうなるってわかってたから先輩の後にしようと思ってたんだけどね…。
「そ、そろそろお暇しますね。」
とりあえず逃げを打ってみたんだけど…。
「帰っちゃうんですか?」
イルカさん!その瞳は反則です!でも…流石に今日だけは…!
「あの、僕任務があるんです。先輩がその分凄く素敵なプレゼントを用意してると思いますから!ごめんなさい…!」
…流石の先輩も、今日だけは引き止めないでくれた。
「そうだな。遅れないようにすぐ行け。」
帰してくれただけで、お仕置きがまってるんだろうけどね…。
「ありがとうございます!…また、遊びに来てください!」
笑顔のイルカさんに見送られながら、僕は明日からの先輩の制裁を覚悟した。
僕がいなくなって寂しくなったからか、先輩にくっ付いて先輩がものすごい勢いで蕩けながら抱きついてたから、ちょっとだけでも情状酌量があるかもしれないしね…。

そう誤魔化しながら…幸せそうなイルカさんを見られたからいいってことにしておいた。

ちなみに、今回のお仕置きは掃除のイロハと染み抜きだったんだけど。
…どうしてそんなに僕に花嫁修業させるんですか先輩…!?


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幼馴染で夫夫扱いになってる(イルカはおそらく良く分かってない。)カカイルと、 少年なテンゾウ(チョイ馬鹿)の続きでございます…。
お誕生日のイルカちゃんのかわいさにめろめろになった先輩がちょっとだけ寛容だったので命拾いしたテンゾウたん?
普通の修行だとイルカちゃんに大事にされてしまうと理解したので、今後もカカチはお仕置きは無駄に花嫁修行になったりして!
でもちゃんと気が向いたら(イルカちゃんにばれない状況なら)術でもいたぶります!←鬼。
えー…ご意見ご感想など、お気軽にどうぞ…。

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