「煮るなり焼くなり好きにしてください」 きっちり俺の前に正座したまま、愛しいひとは地につきそうなほど深く頭を垂れた。 「潔すぎるでしょ…」 こんなことをさせたかった訳じゃない。 まだ好きだと告げてもいないのに、このセリフ。 …理性が盛大に軋む音が聞こえた気がした。 ***** きっかけは些細と言えば些細なことだ。 たまたま受けた任務の同行者がこの人だっただけ。 上忍と中忍が組んで当たる任務が簡単であるわけもなく、依頼人を無事に送り届けた途端に襲撃を受けた。 それはいい。正直言ってうんざりしたが、悲しいかなこの瞳のお陰でそんなのは日常と化していた。 だから、部下でもあったひとを庇ったのは当然の行為だったし、一方的なものとは言え、思い人を守れたことは誇らしくさえあったのに。 「責任をとらせてください」 そんなことを言い出したのだ。この真面目…それもくそがつくほど真面目なひとは。 コレでも上忍だ。 仲間を庇ったとはいえ、深い傷などつくはずもない。 精々薄皮一枚切り裂かれただけの傷に、かの人は酷く痛ましげな顔をして、血を吐きそうなほど苦しげに告げたのだ。 全ての責は自分が、と。 「馬鹿にしないでよ。俺は上忍で、隊長だ。俺がこの程度の任務で部下に怪我をさせるほど無能だと思わせたいか」 殺気立つことしかできない自分の間抜けさを笑った。 だが他にどういえばいい? これ以上この人にこんな風に言われたら…代償にこの人自身が欲しいと言い出さないとは言い切れない。 そもそもがずっと長いこと恋焦がれてきた人だ。 その人との任務で手落ちがないように細心の注意を払ったつもりだったが、それにすら自信がなくなってきた。 受かれ騒ぐ心に流されて、俺は任務への警戒を忘れてやしなかっただろうか。 「…あなたに、傷をつけてしまった」 人の話を聞いているのかいないのか、切り裂かれた腕にこの人はすがり付いてきた。 そうして。 「あんた、なにやってんの…!?」 生暖かい感触。僅かな痛み。切り裂かれたそこから走るそれすらも、俺の欲望を煽り立てる。 まるで獣みたいだ。 …傷口を舐めるなんて。 「あなたが傷つく所なんて、絶対に見たくなかったのに。俺のせいで」 涙を流しながらどこか恍惚とした表情をして、言葉を荒げた俺すらも離そうとしない。 「ああもう…!もう、知らない」 驚いた顔の獲物を、今度こそ俺はその毒牙に掛けていた。 ***** やってしまった。こんな所でこんな状況でこんなことを。 ぐちゃぐちゃになった服に茂みも泥もドロドロになるほど飛び散った精液。 むっとする匂いは雨でも降れば薄れてしまうだろうが、今のこの人をみればまさに無理やり犯されたとしか思えない状況だ。 「どうして」 止まれなかったんだ。止めようとする腕を掴んだのもこの人で、おざなりに慣らして無理やり押し入ったときも、苦痛の声を上げながら俺に縋った。 最低の話だ。俺はこの人を愛しているのに、コレは、この行為は間違いなく制裁ととられるに相応しい。 …この人と穏やかな時間を過ごしたかった。できれば死ぬまで。欲を言えば愛も欲しかった。 だがそんなものはあっという間にゴミ箱いきだ。 「カカシさん…」 うわごとのように俺の名を呼ぶ人に、詫びる言葉すら出てこない。 せめてこの体を清めて、服を着せて…それでなんでもなかったことにできるはずもないけれど。 「ごめん。ごめんなさい」 それでも触れる温もりは暖かく俺を誘うのだ。 なんて最低な話。 「好きです」 「え?」 腕の中で疲れきってまどろんでいたはずの人の瞳がうっすらと開き、ぼんやりとしたそれに俺が映りこんでいる。 …笑ってくれた。散々陵辱した俺に向かって。 力の入らないはずの手で俺の腕の傷を撫でて、それから。 「血、止まった。よかった」 子供みたいな顔で笑ってまた眠ってしまった。 聞き間違いじゃない。救いを求めるあまりに幻聴を聞ける幸せな脳を持っているなら、俺は今頃上忍なんてやってない。とっくにもっとガキの頃に死んでいる。 この人が何を考えているかなんて今も分からない。 ただ。 「起きたら、もう一回聞かせて。その言葉」 ぎゅっと抱きしめた人が、静かに笑った気がした。 …これが最低で最高になった誕生日の朝の話。 ********************************************************************************* 適当。 帰ったら手当てして謝って告白されて舞い上がってナデナデしてもらえたと思います(*´∀`)。 ただしその後調子に乗って襲って怒られたりも…? ねおちしましたごめんなさい。゜。゜(ノД`)゜。゜。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |