「こんにちは」 痛みを堪えて、顔だけは笑みを作った。 だが男は…こちらが必死で努力しているというのに、心配そうな顔で紙切れを握り締めているからいらいらする。 一体誰のせいだ。 「あの、俺…!」 「報告書をどうぞ」 取り付く暇もなくそう告げると、慌てたように男は紙切れを差し出した。 いつものことだが、丁寧に記入されているそれをチェックしていく。 こんな所まで完璧なんて、嫌味な男だ。 …そんな男が何故俺を…しかもこんな行為の相手に選んだのかは、永遠の謎なんだが。 目の前で所在なさげに気配を押さえ、俺を見つめている男は、そのしおらしい姿からは想像も出来ないほど容赦も余裕もなくずくずくと熱を持ったまま痛みをもたらすそこを暴き、さんざんに蹂躙した。 欲望を開放する心地良さは同じ性をもつからこそ分かる。 男と俺自身の荒い吐息を聞きながら、あらぬ所に飲み込まされたソレがはじけるのを幾度も受け止めた。 気持ち良さそうに小さくあがった呻き声と共に、たっぷりとその欲望を注ぎ込み、痛みに呻いても、反射的に暴れても、そんな抵抗などものともせずに俺を犯した男は、おそらく相当に煮詰まっていたのだと思う。 何度も求められて、それこそ立っているのが辛いほど、俺の体は酷使される羽目になった。 好きだと、愛していると痛みを堪えるように苦しげな顔で幾度も告げられながら。 今も様子を伺う男の気配には圧迫があって、じんわりと僅かな殺気さえ感じられるほどだ。 好きだ、なんて。…そう簡単に信じられない。 「…問題ありません。確かに報告書を受理しました。お疲れ様です」 抱え込みたくもない厄介な感情を押し付けられ、イラつきを誤魔化しながら事務的に極力普段どおりの笑顔を浮かべながら退出を促したのに、男はそんな物など聞こえなかったかのように俺に手を伸ばした。 「ね、痛いの?加減できなかったから…」 痛ましげな顔など見せられたくもない。大体、自分は怪我をしても平気な顔をしていた癖に。 「誰のせいだ!…いいからとっとと…」 取り繕った笑顔を流石に維持できなかった。 だが男にぶつけるはずの怒りは、別の形になってしまったから。 「俺のせいでしょ?責任とります。むしろ取らせて?」 だって、恋人なんだから。 そういってどこか誇らしげに微笑まれるとぐうの音も出なかった。 そうだ。覚えている。 貫かれながら痛みに泣いて、それをあやすように俺に愛を囁き謝る男を怒鳴りつけたのを。 「五月蝿い!俺の方がずっと好きだったのに!」 普段から冗談のように降り注ぐ愛の言葉とやらが胡散臭くて信じられずにいた。 それが、こんな結果になるなんて。 強引に進められた行為に抗議したつもりだったのに、結果的にそれが男のかせを外したってことになるのかもしれない。 思わず昨日と同じセリフを吐く俺に、男が微笑んだのだ。 「嬉しい…!これって、両思いってことですよね!」 …それからは、もう言うまでもない。 痛みの責任は誰のせいだと当り散らしてみたが、俺自身にも責任はあるな。多分。 臆病になりすぎていた俺を結果的に強引に引っ張り出して愛とやらを押し付けてきた男に、その生き様ごと惚れているから。 「…もう少しで終わりです、イイ子で待ってて下さい」 今度は作り物じゃない笑顔で告げてやると、男が驚いたように一瞬動きを止めて、それから恐ろしい速さで受付所のソファに陣取っていた。 …だからまあ、今回だけは許してやろうと決めた。 痛みは薄れてはくれないが、その中に混じる甘さはこれからどんどん増していくだろうから。 ********************************************************************************* 適当ー。 寒くて眠いので支離滅裂な何かを上げてみる。 |