あまえんぼ(適当)


「っ!いってぇ!こら!なにすんですか!」
「んー」
ああもう。なにがあったんだか知らないが、甘えベタにも程がある。
今回は珍しく俺の方が任務で家を空け、その上帰還が遅れた。
こう見えてさみしんぼのあまえんぼだからなー。階級なんて上忍で暗部だし、外見はきりっとして…ないか。普段俺の前だとくつろいでる姿も様になるほどの美形だってのに、外じゃエロ本片手に猫背で歩くちょっと危ない人だもんな。
とにかく。今回は任務とはいえちょっと一人にしておきすぎた。
帰還の報せはきちんと届いていたらしい。帰って来てすぐ飯の仕度も着替えの準備も風呂の準備も完璧で、だが玄関を開ける前に迎えに着た人に捕まってそのまま部屋に連れ込まれて…。
噛まれた。いつも通りに。
最初は耳を、それからうなじを血が滲むほど噛みつかれて、流石に軽く抵抗したらそのまま低い声で唸りながら押し倒してきやがるし…!
風呂に入ってないからイヤだって言ってんのにそのまま一回、首の後ろを噛まれたまま獣のように交わった。
一回やったら多少落ち着いたのか、風呂に放り込まれて頭はもちろん爪の中まで全身洗われて、久々のカカシさんに嬉しくなって俺もついついちょっかい掛けて、カカシさんの髪を洗い返したりして、数日振りの湯船に浸かっておっさんくさいため息なんかついてみつつも、カカシさんが洗い立ての髪の毛を齧っているのを撫でて…まあそこでもその、おっぱじまってだな。
ぐったりした所へきて、今度は卓袱台の前に座らされた。任務でくたくたな上に無体を働かれて、体を支えることもままならないからカカシさんに抱きこまれたままなんだけどな。
そこには湯気の出ている出来立てにしか見えない料理と、冷たい水まで用意されていて、これじゃ文句の言いようがない。
まあいいとにかく飯を食おうと箸を手に取る前に、二人羽織のようにして抱きこまれたまま飯を食わされた。
自分で食えるといっても聞いてくれる気はないらしい。せっせと俺に飯を食わせては耳を食む男も腹が減ってるんじゃないかと思って一緒に食ってくれと言ったのに、噛み付かれたのは俺だった。
「…飯、食ったら」
一緒に寝ようと誘うのは勇気がいる。恋人相手だからってこういう行為は普通はムードってもんが必要で、そして俺にはそういうセンスが悲しいかなほぼゼロに近い。久々でありていに言えば溜まってるし、なによりこの人と離れている時間は俺だって寂しかったんだ。任務じゃなきゃ誰がこんな可愛い人を置いて行くもんか。
それなのに、恋人は強引な癖に気遣いは出来て、だがしょっちゅう理性をすっとばしては襲ってくるから、普通のやり方ってのが未だにわからないままだ。
ぎこちない上に明らかに言葉足らずの誘い文句に不安が過ぎる。もしこれで気付かれなかったらどうしたもんだろうなと、焦りと共に必死で笑顔なんかも作ってみたんだが。
「今日は寝かさないし、明日もシます。休暇もとりました」
任務の報告みたいに淡々とした言葉とは裏腹に、言い終わるなり首の後に食い込む歯は鋭くて、それがもたらすものが痛みだけじゃないことが、どうしようもなく恥ずかしい。カッと熱を帯びる体は、恐ろしくなるほどこの人の与える快感に従順だ。
「んっ…!あ、の!でもですね!?アンタ任務は!」
「二人分、休暇取ったから。大丈夫」
ああ、駄目だな。こうなったら徹底的に付き合って慰めて、俺がどこにもいなくならないって思い知らせてやるまで梃子でも動かない。
まだ目に理性の光が戻らないし、言葉には出さなくても腰に回った腕が苦しくなるほど締め付けてきて寂しい寂しいって訴えてきてるし、なにより飽きずにしつこく噛み付いてくるのがその証拠だ。
あー…腰、つかいもんにならなくなるだろうなぁ。痛みには耐えられるんだが、動けないとなると世話を焼いてもらっちまうことになる。たまたま里にいたとはいえ激務に追われるこの人に、余計な仕事なんかさせたくなかったのに。
「食休みを、その、急に動くと」
何を言ってんだと叫び出したくなりながらも、これは絶対に譲れないから言っておく。吐こうが泣こうが喚こうが、さんざっぱら恥ずかしい声で喘ごうが、こういう時のこの人は狂ったように行為を続けるから本当にそれだけは絶対譲れない。
「口でするから」
「そっそういうもんだいじゃねぇし!く、口!?」
「一発抜いたら入れさせてもらう」
「な、なにいってんですかー!」
「あーあ。鎖でもつけておければいいのにね?」
心底本気でいっていると分かる口調なだけに冷や汗が出る。実際実行しかけたことがあるんだよな。朝起きて鎖と首輪とがついていて、ついでに本人が上に乗っかって寝てたとか死ぬほど驚いたもんだ。あの時の任務は…ええと、二週間、だったか?今回は十日くらいだからあの時よりはまだマシなはずだよな?
だから、こういうときは仕方がない。
「飯、食い終わりました」
言い終わるなり抱き上げられて寝室に連れ込まれるのは予想通りだったが、片づけをするのに影分身の術まで使うのはいただけない。言っても無駄だろうから言わないけどな。
「ただいま。カカシさん」
圧し掛かる男の顔はうすくらい照明に揺らいでいる。だが一瞬だけ、安堵の光をその瞳にみた気がした。
「イルカせんせ」
幼い口調とは裏腹に、重なる唇も食いつくさんばかりに這う舌も傍若無人だ。…でも、それで安心してくれるなら、なんだっていいんだよ。俺は。
「ッ!ん。大丈夫。大丈夫ですよ…?」
俺の体に食らいつくのに夢中になっているのを撫でながら、震える体を抱き締めた。いっそ泣ければいいのに、こうやって中に溜め込んじまうから心配なんだ。
「ん。すき」
「おれ、も」
休暇はこの分じゃこの人とどろどろになるだけで終わりそうだが、それはそれだ。
あやすように唇をなぞる指先を食んで、口付けて、乱暴に暴こうとする腕にも愛撫を返した。
明日は歯形だらけだろうなぁ。どこもかしこも。風呂場で痛みとむずがゆさに耐える準備しとかねぇと。
明日の朝、満腹になった子犬みたいに満ちたりが顔をしたこの人を見るのが楽しみだ。
嵐はすぐにマトモな思考を奪い、底なしの快楽の海に沈んでいく。
頭も体もいっぱいにするイキモノに食われ続けるってのは、相手が死ぬまで守りたいと思う恋人なら最高に幸せだ。
「イルカせんせ」
声も出せないほど激しく揺さぶられてぶれる視界で、獣染みた笑みを浮かべるその顔だけが鮮明で。
恋に溺れるのも悪くないもんだよなぁなんて思った。



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適当。
あまえんぼカカシ。似たもの同士?
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