「俺のぉ酒が!飲め!ええと?いいからのえー!」 「あらまあできあがっちゃって」 ちょっと長めの任務だったから、心配してたんだけど案の定駄目だったみたい? 流しに溢れかえるカップラーメンの空容器に、洗ってもいないコップの山には白っぽい跡が残っていて多分牛乳飲んでそのまま放り込んだのね…。卓袱台の上には何故か茶碗になみなみと注がれた酒と、空になった酒瓶がいくつか、見ていないが寝室には書き損じの反故紙が、それから多分冷蔵庫には干からびた野菜でも転がっているんだろう。 こんな上等な酒、誰から貰ったんだか知らないけど、今度注意しておかないと。 「えーっと。洗濯物は…お?一応やってあるじゃない。エライエライ」 洗濯機の中で洗いっぱなしになっているとは言え、一応自分でこの事態を解決しようとした痕跡がある。 ま、大方風呂に入ろうとしてパンツがないと気づいたとか、そんな理由なんだろうけどねー? それでも、前よりはいい。何度もくじけそうになりながら教え込んだ甲斐があった。 「へへ!そうです!俺えらい!カカシさんがー帰ってきてお風呂に入れないと困るとおもって!」 「ん、ありがと」 ごろごろと懐いてご機嫌なのは幸いだ。酔っ払ってると素直に寂しがってくれるからありがたい。 正気のときだと泣いた痕がバレバレなのに無理して笑うし近寄ってこないし、その癖こじらせてこじらせて一人で弱るんだもん。心配でこっちの心臓が保たない。 恋人は寂しがり屋で、それが高じて仕事に全力投球しすぎる上に、その分家のことは思い出して辛いとかで少し留守にしただけで大変なことになる。 しかもそれを決死の覚悟で隠していた。…らしい。 任務帰りに様子がおかしい上に、家に入るのを拒まれた時点で頭に血が上って強行突破した挙句に、涙目で抗う姿に欲情してついつい玄関で盛って、それを知ったのは翌日でしたーなんて過去は正直言って忘れたい。 でもねぇ?ヤリ倒してちょっと意識飛ばしちゃったらそれからはもー。泣きながら素直にすがり付いてくるわノリノリで腰使ってくるわで止まれなかったのって俺のせいだけじゃないと思う。 掠れた声で名前を呼ばれたら、それだけで理性なんてすっ飛ぶ。なにせこっちは任務明け。念のため適当に体は洗っておいたが、それだけですっきり意識が切り替えられるかって言うとちょっと無理だ。 自分から獲物だと教えるような振る舞いをする恋人を目の前にしていたら余計に。 結果的にずたぼろにしてしまった人を見て正気に返って、風呂に入れようとしたときにその惨状に気付いたんだから怪我の功名っていうのかねぇ?こういうのも。 襲撃を受けたのとは違う荒み方をした部屋で、病気かなにかだったんじゃないかとか不安になりながら、大急ぎで風呂の仕度をした。 下着はかろうじて自分の装備にあったけど、タオルは全滅で、蓋の閉まらない洗濯機の中からは怪しげな匂いが漂っていて、さほど潔癖ってほどじゃない俺でもぞっとしたのを覚えている。 ま、湯につけたら幸せそうに笑ってくっついてきてそれからがもう理性との戦いだったとか、結局起きたときに無事で良かったってキスをくれたら戦いにあっさり敗れたとか、そういうのは置いておいて。 涙ながらに己の不甲斐なさを悔いて、その勢いで首でもくくりそうだった恋人を宥めてすかしてついでにエッチもして、一緒にがんばりましょうと誓ったあの日から、もう何年たっただろう? 今日も恋人はおいしそうだ。ま、それだけが目的じゃないんだけど、恋人が俺まっしぐらっていうのは最高だと思わない? 「これだけ酔ってると一緒は無理だねぇ?」 「俺!おふろはいったから!お風呂でてから…シましょう?」 子どもが遊べと強請る口調で閨に誘うこの小悪魔は、正気づくと同時に地の果てまで落ちていきそうなほど落ち込むと分かっている。 俺もだけどこの世代は親がいないヤツが多いせいか、大人になりきれないのが多いのかもね。 それでもいい。…この人が俺を選んでくれたんだから、それ以外のことなんて気にする必要もないでしょ? 「ん。あとでね?」 布団の上は多分大丈夫だろう。その周りはゴミだらけになっているかもしれないとしても。 それから後のことはたっぷり愛を確かめあってからすればいい。 なんだかんだ幸せだなと呟いて、風呂場に急いだ。 めくるめく夜に思いを馳せながら。 ******************************************************************************** 適当。 さみしんぼいるか。上忍もなにげにさみしがりやさん編は気が向いたらで。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |