「イルカ先生こんばんは!」 「こんばんは」 相変わらず無駄に元気いいよなぁ。この人。 初対面のときは半分寝てるみたいな顔してた気がするんだが。 あ、でもあれかな。緊張してたのかもだよな。 いきなり手ぇ握ってきたときは焦ったけど。上忍ってのは大抵触られるの嫌がる人が多いのに珍しい。 それがこれだ。意外と人懐っこいというか、普通知り合い程度の中忍の家にこうしょっちゅう遊びに来るのは珍しいんじゃないだろうか? アスマにい…いやアスマ先生はガキの頃から仲が良かったから未だに酒瓶もって遊びに来て、ついでに紅先生も一緒になってドンちゃん騒ぎしてったりするけどな。 「はい!お土産です!」 「あ、いつもすみません!」 律儀だ。 いやお土産持ってくるなら前もっていつ来るかの連絡くれた方がありがたいんだが、話の流れで俺も遊びにいっていいですかって言われて、いつでもどうぞっていっちまったのは俺だし。 アスマ先生と紅先生と仲よかったみたいだもんな。友達取られちゃったと思ったのかもしれん。…まあこの人いい年した上忍なんだけどな。なんか、うん。普段の行動はとてもじゃないがその実力や経歴に見合う感じではない。 やたらくっついてくるんだよなぁ。イルカ先生イルカ先生って。 とりあえず酒がきたらつまみだ。 最近良く来るから冷蔵庫にそれなりの常備菜を仕込んであるから、後はあたりめでも焼けばいいだろう。飯も食ってないようならサンマもある。朝飯にしてもいいと思って多めに買っておいてよかった。 コタツに収まってぬくぬくしている上忍は…まあしばらくほっといても平気か。 最初にきたときはものめずらしそうにしててやたらきょろきょろしてたけど、最近は定位置に座ったら根っこでも生えたみたいに動かない。 食い物運んだりとかはやってくれるからいいんだが、上忍ってこんな感じなんだろうか。 知り合いは多いが、プライベートまでしらない。 …まあ、この人が変わり者なのは確定だろうから、ちょっとくらい変な事してても実害がなきゃいいか。 「はい。お待たせしました。適当につまんどいてください」 「はい」 コタツに収まったイキモノがにこにこと幸せそうに、俺の作った適当すぎるつまみを食っている。 何が楽しいんだろう。自分で言うのもなんだが、俺の家はぼろっちい。中忍寮なんてそんなに予算が回らないから当然だ。 そこへわざわざ酒まで用意して、いくらでも美味いもんが食えるはずのこの人が遊びに来る理由がわからなかった。 …単に寂しがりやなのかもしれないが。 「今日任務帰りだったんで、ちょっと迷ったんですけど、イルカ先生いたらいいなーって」 おずおずとそんなことを言うもんだから、どうにも構ってしまいたくなる。 甘えん坊の上忍ってのも、珍しいよな。 「任務帰りなら先に風呂入ってきなさい!俺が入ったばっかりだからまだ温かいと思いますが、寒かったら追い炊きしてください。着替え…は、あんまりサイズ変わらないですよね?」 「は、ははははい!」 ちょっと言い過ぎたかと思ったが。…うーん?まあよくわからないが怒ってないからいいか。 「ホラ、早く。サンマも焼いてあげますから」 「はい!」 お、行った行った。後で着替えでも放り込んでおこう。 …実は前からあの髪がどこまで身が入ってるのか気になってたんだ。もしかすると今日それを知る事が出来るかもしれない。 素顔はあっさり見せてくれたから聞いたら教えてくれたんだろうが、やっぱりちょっとぶしつけだもんな。 「さて、サンマサンマ」 久しぶりに感じる誰かの気配。穏やかに笑い合える人が隣にいる。 魚焼き網にサンマを放り込み、にんまりと笑った。 うん、まあこんな関係も悪いもんじゃないなぁと思いながら。 その後、風呂場にちょっとわくわくしながら着替えを持って行った俺は、髪の毛の量だけじゃなくて全身くまなく余すことなく見せ付けられて、こっちも見られてそれはもう大変な目にあったんだが。 …周囲曰く自業自得らしいので、とりあえず今日も幸せそうに俺のところに帰ってくるようになったイキモノには、節制というモノを教え込むべく努力しようと思った。 ******************************************************************************** 適当。 ぼんやりさん。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |