真昼間の坂道は冬だというのに照り返しが激しくて、天気がいい割にちっとも温かくないから嫌になる。 寒いのに眩しいなんて、損をした気分だ。 それも両手一杯に書類を抱えている場合は特に。 「イルカせんせ?」 坂道の上から降ってきた声に釣られて見上げた先に、銀髪を輝かせた上忍が立っていた。 いつも通りその手に成人向けの本を抱えたまま。 「カカシさん。またその本読んでるんですね」 こんな軽口が叩ける程度には、この高名な上忍とは親しい。 「んー?いい天気だから読書ってのも悪くないでしょ?」 ぱたんと閉じられた本は、ポーチの中に消えた。 それをどこか嬉しいと思っている自分がいる。 終始手放さない本よりは優先順位が高いということだから。 一方的なこの思いをやり過ごすのにはもう慣れてしまったけれど、それでも嬉しくないなんて…そんな風に自分を誤魔化せない。 単なる知り合いというには親しすぎ、友と呼ぶには遠い関係だ。 この人にとって、俺は少しだけ特別に近くて、だがもっと側にいる人はいるのだろう。 例えば何かと側にいるのを見るヒゲの上忍や、熱血と緑の忍服がトレードマークの上忍たちのように。 「坂道で本を読むのは危ないですよ?」 そもそもすでに本そのものはしまいこまれてしまっている上に、上忍の男に言うセリフではないと知りながらそう告げてみた。 「そうね?もう今日はいいかな」 耳をくすぐる声が、酷く甘い。 逆行で見え辛い表情がどんな風になっているのか知りたいと思った。 背筋が震えるほどの甘さは錯覚なのだと、諦めさせて欲しい。 期待ばかりして、自分からは動けないでいる自分に止めを刺してくれたら。 …いっそ楽になれるのに。 「あ…」 両手に掛かっていた重みが消えた。 いつの間にか間近に迫っていた上忍の顔が、イタズラっぽい笑みを浮かべている。 「この大荷物、持ってあげるから。今晩付き合ってくださいよ」 それがいつもの酒の誘いだと知りながら、馬鹿みたいに騒ぐ胸の鼓動を押さえ切れなかった。 「しょうがないですねぇ?読書より楽しいかどうかわかりませんよ?」 そう嘯いて男に奪われた荷を半分取り返し、楽しげに笑う男を追い抜いた。 坂道を越えた先に、これまでと少しだけ違う何かが待っている予感を感じながら。 ********************************************************************************* 乙女風味中忍とかどうでしょうか。 インフルエンザとか滅びてください。仕事が増えるよ! という訳で眠いので適当です…。残念な仕上がりに涙しつつ…。 ではではー!なにかご意見ご感想等ございましたら、お知らせくださいませ! |