おいかけっこ11(適当)



その気配には随分前に気付いていた。
カカシ。カカシだ。
「ここ、俺の家」
そうだ。ここが、俺と彼女とそれからカカシの家。
…では、アレはなんだろう。カカシの側にある気配。
知っているモノに似ているようで、違う。
敵ならば排除しなければならない。カカシを傷つけるものは全て。
命に賭けても守ると約束した。それを違えることなどありえない。
「へー!すっげぇ!でっかい!庭もでっかい!これとかさ!大根とか魚とか一杯干せるよな!母ちゃんの漬けた大根すっごく美味いんだ!あとさ!あとさ!椿の花って吸う美味いし!あっちの木とか秘密基地作れそうだよな!すっげぇすっげぇ!」
子どもだ。カカシと同じか…いや、カカシよりは幼い、か?
小さい。それに弱い。感情のままに揺らぐチャクラ…どこかで、これを感じた事があっただろうか。
懐かしいようで、だが徹底的にどこかが違う。自分でも曖昧すぎて少しばかり悩んだ。
敵、ではない。なら、どうしたらいい?
わからない。なにもかも。どうするのが普通なのか、教えてくれた人はもうどこにもいない。
「カカシ」
「父さん!帰ってたの?おかえりなさい!」
彼女に良く似た瞳。この子がいるうちは死ぬことができない。そう約束した。彼女と。
守らなくてはならない。それなのにどうしようもなく疎ましく思うこともある。

なぜ生きなくてはならないのか。もう彼女はどこにもいないというのにどうして。

…だがそれでも、彼女に良く似たわが子は愛おしいと思うこともある。
彼女以外の全てが等しく無価値な世界で唯一、彼女の与えてくれたモノだから。
俺に似ていると言っていた。それに私にも似ていると笑ってくれた。
二人の子どもなのだから当然だろうと、怒っているとも呆れているともつかない声で、彼女の側にいた女が言っていた。
そのときだ。いつでも笑顔ではあったが、一瞬目が眩むほど嬉しそうに笑ってくれたのは。
だからこそ、腕の中にいる小さな生き物が、かけがえのないモノに思えた。
守らなくてはならない。だが、どうしたらいいのかわからない。
敵なら殺せばいい。だがそれ以外のモノだろう。これは。
客人には、確か茶を出すのだったか。
…客というモノがここを訪れることも久しくないから、そんなものがあったかどうかも記憶にない。
匂いは覚えているから探せなくはないだろう。もしも目的のものがまだあるのなら、だが。
探してみるつもりくらいはあった。水屋へ向かおうとした足を、子どもが止めるまでは。
「あの!はじめまして!えーっと。あの!うみのイルカ!六歳です!」
「父さん。ただいま」
いつも少し緊張した面持ちで俺に接するのが常だったわが子が、笑っている。
そのことに少しだけ驚いた。
彼女はどこにいるのだろう。笑っているのだからきっと側にいるはずなのに。
ああそうだった。カカシ。守らなくては。
「カカシ」
小さな生き物。だがあの時よりずっとずっと大きい。
そうだ。彼女はもういない。どこにも。
それを思い出させるモノを見ているだけで気が狂いそうだ。
それなのに愛おしい。
この子まで奪われてしまうのかもしれないのが恐ろしくて、なにがあっても生き残れるように術を、技の全てを教え込んでいるというのに、里は任務へ出せと言う。
俺が戦うのはいい。そうしろと彼女も言うだろう。
だが、どうして俺の子を、彼女の残したものを危険に晒さなければならないんだ。
「父さん。泣かないで…?」
いつも慰めてくれる小さな手に縋った。抱きしめているのに抱きしめられているように感じるのは、彼女の残したものだからだろうか。
「カカシ。無事で良かった」
やはり抜けるべきだろうか。なにがあっても守りたいのなら。
だが里を守れとも言われている。…この子だけを連れて逃げても、その約束が守れない。
どうしたら。
「俺さ!えっとうみのイルカ…は言ったから、えっとあの!俺は!カカシの友達!」
飛びついてきた子どもが俺とカカシにしがみつく。
小さな手が背に回って、それからいきなり泣き出した。
良く分からない生き物は実の所苦手で、子どもと言うモノの扱いが良く分からない。そのせいか、カカシとも普通に会話することすら難しいと感じることすらある。
だが、その目が。
「…」
彼女が、戻ってきたのかと思った。
衝動的に捕らえようと動く腕を、それよりも早く動く手に止められた。
「違うよ。父さん。あれは俺の」
「…そうか」
誇らしげに、それから。
はじめて見る明確な敵意。
ああそうか。この、子どもがそうなのか。
では、見つけたのか。
「あのさ。あのさ。…元気でないときは無理しなくていいと思う!あ、あと、あとは…美味いもん食べたら元気でるかもしれないから、えーっと!?」
まだ、子どもだ。それはきっと幸いだ。
カカシなら、俺のような失敗はしない。…彼女に似て賢く、決断を過たない子だから。
小さな手で俺を撫で、必死で慰めようとしてくれている。
この子なら、きっと。
「すまない。良ければ上がって行って欲しい。カカシ」
「うん!…行こう?イルカ!」
「え?え?でもさ!あの!」
どうやら驚いているようだったが、カカシが手を離したりはしないだろうから大丈夫だろう。
それに、もうすぐだ。
俺にとっての彼女のように、カカシも番を見つけた。
それなら、その邪魔をするのもを全て滅ぼしてしまえば、あとはなんとでもなるだろう。
俺も、もう守らなくてもいい。
曖昧な世界に光が差し込んだ。
あの子どもの目のように、彼女の眼差しのように。鋭く、一瞬で世界を変える。
「茶を、淹れるんだったな」
水屋へ足を向け、そういえば差し入れだとミナトが持ち込んだものがあったということも思い出していた。
あれからずっと時間の感覚が曖昧だったせいで忘れていた。
甘いものを好まない俺たちに、わざわざ甘味を持ち込んだと言うことは、おそらくは味方についたということだろう。
「では、俺も」
やり方など知らない。だから俺のやり方で。
茶を淹れて、それから。それからあの子を捕らえよう。
久方ぶりに回り始めた頭を軽く振ると、彼女が笑ってくれた気がした。


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適当。
と言うわけで元祖stkはよりいっそうアレ。
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