暑くていらいらしたから、今日もまた勝手にうちの窓から家に上がりこんできた上忍をふん捕まえて、さっきまで堪能していた水風呂に放り込んでやった。 「やだもう!イルカせんせったら積極的!」 なぜここでそんな感想がでるのかさっぱりだが、とりあえずさっさと体を拭いて甚平も着た。 俺の裸を凝視する視線が鬱陶しかったからだが、服を着てもまだはぁはぁ言っていた。 面倒くさいからこの際放置だ。 そのまま這い上がって俺を獲物を狙う獣の瞳で見ている。 暑くてそれでなくてもいらいらしているというのに。 「あんた、床濡らしたらきれいに拭いて帰れよ。あと俺の家に勝手に上がりこむんじゃねえ!」 それだけ言って風呂場の扉を閉めると、中からはぁはぁと荒い吐息と、それからくちゅくちゅという怪しげな水音が響きだした。 …もうそれにすら特になんの感情も抱かない自分にため息を吐きつつ、麦茶でも飲もうと冷蔵庫を開けると、見覚えのない缶飲料が入っていたので即効捨てた。 苛立ちを押し殺すのにも疲れたので風呂場に戻ると、俺の名を呼びながら上ずった声で喘ぐのが聞こえた。 そんな俺の手には氷水。 夏場には氷が欠かせない。 そうめん作っても冷蔵庫に入りきらないスイカ貰っても、氷があれば一安心だ。 …無駄に盛ってる馬鹿にくれてやるのにも。 無言で風呂場の扉を開け、しっかり予想通りの行動に励んでいる男に投げつけ、ついでに水風呂にもたっぷりと氷を投入。 で、だ。当然その首根っこ捕まえて、苛立ちの元凶も水風呂に突っ込んでやったわけだ。 俺の暴挙にも嬉しそうな顔をしたままで、考えたくもない液体をぶっかけてきたことに関しては…まあ苛立ったが、それがここで俺が服を脱ぐことを期待してのことだと理解していたのでそこは堪えた。殴ったけど。 「なんでここまでしてるのにせんせーは折れてくれないんですかー?」 「うるせぇ!こんなことされて折れるも何も…!」 なんでこう…勝手に入り込むわ盛るわ見せ付けるわ…! 最初の頃は律儀に驚いて、しかも病気か術かと大慌てしたものだ。 まあ、この男の場合、確かに岩いるその手の任務後にしかこういう行動をとらないから、任務後の興奮とか、その辺がなにがしかの影響はあるのかもしれないけど。 「…触れたい」 切なげに眉根を寄せて懇願する姿は、さっきまでの傍若無人な男と同一人物とはとても思えない。 「理性の薄くなった馬鹿相手はごめんだな」 大体、合鍵も渡してるっていうのに、毎度毎度…! こいつの本性を知っていたら渡したかどうかわからないが。 …いや、でも渡してただろうな。なんだかんだともう惚れてたし、覚悟もしていた。…こんな良く分からない行動までは予想してなかったけど。 「だって無理やりしたら嫌いになるって…」 何度このやり取りを繰り返せばこの男は学習するのか。 告白は受けた。ある程度絆されもした。…そうでなきゃ合鍵なんか渡さない。 それにお預けを食らわせていたのも事実だ。 だってあんなのあんなとこに入れるとか…!どう考えても無理だと思った。せめてもうちょっと待ってくれと思っていた期間が長すぎたんだろう。 無理じゃないというのも思い知らされてしまったが。 「もうしちまったくせになにいいやがる…!」 なだめてすかして仕舞いには脅しすらしたのに。 止めても止まらない男に全てを暴かれて、とろとろに蕩かされてしまったのはいつだったか。 いきなりの暴挙に我慢させすぎたかと反省をして、だがいきなり人の家の窓から上がりこむなり押し倒すとはどういうことだと説教して…。 それが良くなかったのかもしれない。 おねだり…というか、良く分からない誘い方をするようになったのは。 以降、無理やりヤられる事は無くなったが、受付所からの最短ルートを取って、俺の窓から俺を襲撃するのは毎度毎度のことになってしまったのは何故なのか。 「ごめんなさい。ごめんなさい…。だって、もう限界…!自分で抜いたけど…ぜんぜんおさまらない」 手を変え品を変え、俺の合意を強請る男は、多分頭のネジが何十本もすっぽぬけているに違いない。 「頭は冷えたか?玄関から入って来い。ただいまも言わない奴なんかしらん」 言い終わるか言い終わらないかの内に、玄関の扉がノックされた。 確かに玄関から入れといったがそういう意味じゃないのに。それになんでカギ使わないんだろうな…。 どこぞの乙女のようにとは言わないまでも、鍵を渡したときはそれなりの覚悟をしたと言うのに。 「どちらさまですか」 「俺、です。ただいま帰りました」 所謂イイ子のご挨拶って奴だ。 「お帰りなさい」 びしょぬれでちょっとひんやりした男がしがみついてくるのを抱きしめ返して、この馬鹿がどうやったら普通に誘うって事を覚えるのかと頭を抱えたのだった。 ********************************************************************************* 適当。 はずれ続きなのでいっそのこと…ということで、つんえろてんてー。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |