さいあいのひと(適当)



「いやー。俺もまさかと思ってましたよあはは!」
苦虫を噛み潰したような顔の里長の前で、イルカ先生が朗らかに、そして照れくさそうに笑っている。
いやいやいや。そこ笑うところじゃないし!そういうとこ好きだけどね!
幸せそうな笑顔がぐっとくる。コレ終わったらいちゃいちゃしよう。
…ま、簡単に片付きそうにもないけど。
「カカシ…!」
埒が明かないと見たか、俺の方に矛先が向いた。
ま、そうね。俺が悪いっちゃ悪い。
一目惚れしたのも俺なら、押して押して押し捲って、ついでに泣き落としまでしてこの人を自分のモノにしたのも俺だ。
ほだされてくれた切っ掛けが、俺が押し倒しつつ告白しながら泣き出したからだと聞いてよくやった俺と思いつつ、情けなさに死にそうになったのも記憶に新しい。
男前なんだよねぇ。いやになるほど。
かわいいかわいいってよく言われるし。それもどうなんだろうと思うんだけど、もちろん。
でも抱きしめてくれたり撫でてもらえたりするのは最高に気持ちイイし、ほんっとーに時々なんだけど、かわいすぎて辛抱たまらんとか言いながらイルカ先生の方からキスしてくれたりするんだよねー?
ツボがさっぱりわかんないけど、そういう時はこっちも遠慮なく寝室に直行、もしくはその場でやっちゃったこともあった、な。
そういう時は普段の恥じらいはどこへやら、向こうから飢えた顔でガンガン腰使ってきたりするのよ。すぐ持ってかれそうになるけど、かわいいとか言われたら男の沽券が…!
いや、うん。イルカ先生も男なのはわかってるんだけど!
大抵途中で気持ちよすぎてなにもかもがどうでも良くなって、やりたおしちゃうんだけどね。朝まで。
意思が強い…つまりは頑固者で、一本筋が通り過ぎてて時々こっちが悲しくなるくらい俺を包容力たっぷりに大事にしてくれる人。
そんな人に嫁さん無理矢理宛がったって、無理に決まってるのに。
「あのですね。その人、俺のなんで、見合いとか無理ですよ?」
「黙れ!イルカには幸せな家庭をもたせるんじゃ!お前はどこぞでばら撒いた種ですぐに子を成せるじゃろうが!」
心外だ。たしかに女は寄ってくるが、手を出したりはしていない。
…あんな生きた兵器共と安心して一緒にいられるわけないだろうが。大体にして俺の中身じゃなくて、俺の忍としての価値しかみてないんだぞ?
強い子どもが欲しいからって、まだ12かそこらだった俺を押し倒すような連中まみれだからな。くノ一なんて。
もし、どうしても側にいてくれる人を選ぶなら優しくて穏やかな人がいいとずっと思っていた。でももう誰かを側に置く気はなかった。
だって皆死んでしまうから。
そういうの全部蹴倒す勢いで惚れちゃうってのは想定外だったのに、まんまと側にいてもらっている。
…俺って意外と人生勝ち組?
「カカシさんはそんな人じゃありませんよ!お見合い?あれ?結婚を祝ってくれるんじゃなかったんですか?」
結婚を強制されかかってるっていうのに、どうやら勘違いしていたらしい。
…なんか、さっきのろけてたもんね。かわいい人なんですよーって。そりゃ勘違いするよね。大方どんな女か見極めようと思ったんだろうけど、呼び出させてみたら俺だもん。驚くか驚くまいか。
でも、譲る気なんてないし!
「俺もイルカ先生と結婚できるなら幸せです」
そっと手を握り締めてどさくさにまぎれてプロポーズしてみたんだけど。
きゃーかわいいんだけど!真っ赤なんだけど!目とか潤んでるし!あーもう!ここどうして執務室なの?食っちゃいたいのに!今すぐ!
「カカシさん…!俺と結婚してください!」
挙句コレだ。なにこの殺し文句!もちろん返事なんて決まってる。
「はい!」
抱きしめられながら余韻を楽しみつつ、三代目に視線をやると、真っ白に燃え尽きていた。
…ま、法的な色々なんかは追々なんとかするとして、この人がこうと決めたからには、俺の幸せは確定したと思っていいでしょ。
「一生幸せにします!」
「嬉しいです…!」
男前な告白に頬を染めた俺は、まさに理想の花嫁に見えたのだと、後に俺の後輩たちは語った。
いるならいるっていいなさいよ!ま、執務室に警護忍がいないわけないんだけど!
…そんなわけで、俺たちは今幸せの真っ只中にいる。
「これとかどうですかね?」
「お、いいですね!台所は広い方が一緒にいられるし!」
くっつきたがり屋なのは俺の方だと自分では思ってたんだけど、どうやらくっつかれるのはいやじゃなかったらしいイルカ先生の手により、風呂だの台所だのを改築する計画まで着々と進んでいる。
…行動力、すごいと思う。後輩だのうちの忍犬君たちだの、使えるモノは全て使って、噂や時には脅迫まがいのことまでしつつ外堀埋めまくった俺が言うことじゃないんだろうけど。
「しあわせー」
思わず零れた呟きに、イルカ先生が微笑む。…あ、ひょっとしてまた?
唇が重なる。ちょっとケモノっぽい顔をしたイルカ先生はまた格別に色っぽくて最高だ。
「しあわせです。俺も」
こうなったら、朝までこの設計図とはお別れだ。
もっと大事なことがあるからね!
めくるめいて、朝を迎えたら、また好きだといおう。
興奮と幸福感とで浮き足立った足を、イルカ先生を寝室に連れ込むのに使った俺は、多分この里で誰よりも幸せな男だろうなと思った。


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適当。
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