薄っぺらい紙切れのくせにどうしてこんなに重いんだか、ね。 折り目をつけることなんてできないから、そっと丸めてあったそれを開いて、書いてある文字を何度も読み返した。 内容はどうでもいい。今日のは忠実すぎるほど忠実で騙しやすい後輩に、部下の修行の場所を伝えてもらっただけだ。…俺宛に。 あの人はこうして下らないメモを溜め込む俺に気付いてもいないだろう。 単なる知り合いに過ぎない上忍が、どうでもいいような下らない小さな言伝を、使える伝を全部使って、あの人から伝えてもらっていることなんて。 ま、知ってたら気持ち悪がるだけか。 最初は、声をかけて欲しかっただけだったのに、律儀なあの人は丁寧に聞き取ったどうでもいいような言葉を綺麗にメモに書きなおして、それを俺に渡してくれる。それもきちんと口頭でも説明しながら。 忙しいがミスの許されない受付に長く勤めているせいで身についた、単なる習慣なのかもしれなくても、俺にとっては増えていくこの紙切れがとてつもなく尊いモノに思えて、どうしても捨てることが出来なかった。 情報としての価値がないからとか、紙切れ1枚くらいならいいだろうとか、そんな言い訳をして、こっそり溜め込んだそれらは、もう枕もとの引き出しいっぱいになっている。 「そろそろやめなきゃね」 頼めるヤツはまだいる。哀れみの視線だってそんなものとっくの昔に慣れきってしまったから気にもならない。 ただ、俺がかかわろうとしている人間に対して、余計なちょっかいをかける人間は多すぎるから。 紙切れだけでいいなんていいながら、たまっていくそれと同じか、それ以上につのらせたこの思いを、伝えることなんてできやしない。 やっかみや嫉妬なんてかわいいもんだ。 俺を父親の失態で縛った気でいる連中や、種馬として狙っている連中が、それから完璧な武器でいることを望む連中が、あの人に牙を向けるかもしれない。 いくら優秀な忍でも、あの人が高潔であるからこそ、向こうの打てる手がありすぎる。弱みを狙うそれはきっと悪辣で巧妙で、あの人を深く傷つけるだろう。 変わり者の上忍の、新しいお遊びとでも思われている間に、この下らない、だけどなによりも大切だった行為をやめなければならない。 ま、最後の意地っていうのも情けないけど、自分の手で他の誰も抱くつもりはないけどね。 といっても、入院中に意識がないときになにをされてるかなんてわからないし、そういうタイミングを逃す連中じゃないから、とっくに俺の遺伝情報とやらは吸い出されているだろうが。 「…今日で、さいご」 繰り返した呟きが今度こそ本当になるように。 それでも燃やすことも出来ない引き出しに、貰ったばかりのそれをそっと詰め込んだ。 「がんばってください!」なんて、胸に刺さることばが書き添えられたメモを。 ******************************************************************************** 適当。 多分このあと中忍が襲い羊とかになると思います。 手紙の一言は最初は素で心配⇒喜びが目に出てる(中忍の子どもの変化を見逃さない先生フィルター発動)⇒かわいいじゃないか!⇒励ましたい+好感度アップに邁進中だったりして。 |