早まったかもしれないなぁって、思わなくもないんだけどね。 でももう限界だったし? 「は、あの、もう一度お伺いしてもよろしいですか?」 はとが豆鉄砲食らったみたいな顔をしたままで、イルカ先生が聞いてきた。 そりゃそーだ。俺だって驚くだろう。 昨日まで飲み友達だと思っていた相手に告白されれば。 こういうときでも背筋がぴんと伸びていて、声も張りがある。 そういう人だから好きになったんだけど、素直にすごいなって思っちゃう。 「アナタが好きです。お付き合いしてくださいませんか?」 とびっきりの笑顔を心がけてみた。ちゃんと他の連中に見えないように結界も張ったし、素顔を晒すとこの人はさりげなく俺の顔にみとれていることがあるから、少なくとも嫌いじゃなさそうと踏んでるんだけど…効果の程はどうなんだろう。 真っ赤になってるから、多少は素顔の効果もあったんだろうし、とりあえず俺の言っている言葉の意味は理解してくれたんだと思いたい。 思いたいけど…あらら?なんで鼻血? 「だ、大丈夫です!」 「大丈夫じゃないでしょ?はい。拭いて?どうしたの?びっくりさせすぎちゃった?」 「い、いいえ!その!…うぅ…!」 顔を近づけすぎた自覚はある。あわよくばこの流れでキスとか、もっとそれ以上のことをしたかったんだから当たり前なんだけど。 何でそんなに必死になって拒まれちゃうの?俺。 「…返事は、急がないから。でもどうしても嫌なら早めに教えてくれたら嬉しいです」 鼻血を吹くくらい驚いた理由が拒絶や混乱なら、俺はもうここにいるべきじゃない。 脈ありなのかなしなのかわからないまま、随分長いこと友達やってたしねぇ? だから白黒はっきりつけたくなっちゃった。そしてそんな自分を今更ながら後悔し始めている。 この人を永遠に失うくらいなら、今みたいにずっと側に張り付いて、告白しようとかやっちまおうとかそういう連中をさりげなく排除して、一番欲しいモノには目を瞑って、一番近くにいることだけで我慢していればよかった。 縋るみたいに手を握ってきて、こんな状況に混乱してるだけなんだろうに涙が出そうになった。 そういうことされたら襲っちゃうよ? 「あの俺もすきなんです!」 挙句にそんな事を…。ん?ちょっと待て。今なんて言った? 「ウソ」 「ウソじゃないです。だってアンタ男だし、エロ本好きだし、もてやがるし、幸せになんなきゃ駄目だし、ああくそ!アンタこそウソだろう!」 怒ってる、のかな?これは?鼻血止まってないのに興奮したら駄目でしょうが。 潤んだ瞳ごと、あなたの全部を食べちゃいたいって言ったら、この人はどうするんだろう? 「好きです。俺もね、アナタは幸せになるべき人だと思っていたから、黙ってるつもりだったんだけど、もう我慢できないから」 触れたい。こうして手だけじゃなくて、どさくさまぎれに隣に立つだけじゃなくて、もっと奥深くまで交じり合いたい。ありていに言えばヤリたいってことなんだけど、それだけじゃないっていうか。 とにかくアンタが足りないんだよ。イルカ先生。 この期に及んで誤魔化すことなんてできやしないから、信じてもらいたくてその唇を盗んだ。 どれだけ切羽詰ってるのかを突きつけてやったつもりが、視界が真っ赤にそまったことによって失敗を悟った。 「うぅ…!」 勢い良く飛び散った鼻血の後始末は何とかすることとして。 さてとどうしたもんだろうか。 キスしただけで卒倒した恋人…に、なってくれたはずの人を、とりあえずどさくさまぎれに抱き締めておいた。 起きたら絶対にきっちり言質を取ってやると決めて。 ******************************************************************************** 適当。 あついぜあついぜあつくていぬる |