アフタープール(適当)



「暑いですか?」
カランと音を立てたのはコップに浮かんでいる氷らしい。
ガラスの器を満たす液体には気をそそられるが、それよりもこの男の姿が気に食わない。
「なんで水着なんて」
ここが砂浜なら百歩譲ってもいいが、アカデミー校舎の近くとはいえ、ここは受付へ続く廊下だ。
こんな格好でうろついてたら誰かの目に留まるかもしれない。
無防備な人だからいつだって俺の不安なんて気にしちゃくれないのは分かってる。
でも流石に駄目でしょ。これは。
うなじにそういえば脛にも腹にも痕をつけたんだったと、こうして間近で見て確認してしまえる。
執着の痕跡は至る所に散っていて、昨夜の熱が今にも蘇ってきそうなほどだ。
もういっそ何処かに連れ込んで、自分の姿がどれだけ危険なのかをおもいしらせてしまおうか。
そんな不埒な考えばかりが頭をよぎる。
「そりゃ水泳の授業でしたから。こっちで着替えようかと」
…そういえば受付兼任だったということを思い出したが、だからといって容認できるようなモノでもない。
「アンタなんて格好でうろついてんの!」
「うっ!そりゃ確かにみっともないですが…いやぁ。実はその、アカデミーのロッカーに着替えおいとくの忘れちまって。受付には置いてあるんですよ!」
なんでそこで胸を張るのかさっぱり分からない。
乳首突き出してさそってんの?なんて言ったら殴られるのがわかってるから言わないけど。
「…これ。着なさい」
「え?ベスト?でも」
「いいから。それからロッカーまで俺が付き添います」
「へ?なんで?」
くっそう!この間抜け面さえいとおしいって…我ながらどうかしてるよ。
でも好きだ。この人のこういう世の中に悪いものなんて存在しないって態度に、俺は救われている。
忍で、しかも中忍でAランクまでこなしたひとだから、血にまみれた事だってあるだろうに、この人は世の中を未だに諦めてなんかいない。
俺みたいには、絶対にならない。
「素っ裸に近い格好でうろついてもらっちゃ困るんですよ。…恋人としてはね」
そう言った途端、いきなり真っ赤になってベストの前を掻き合わせた。
それが却って煽るだなんてことは教えてやらない。
「こここ!いや!で、でも!俺は男ですし!」
「男だねぇ?でも俺と寝てるでしょ?同じ男の。俺のがしっかりばっちりアンタの裸で勃起したのも、してもしてもし足りなくて何度もおねだりしたのも覚えてるでしょ?」
「うっうぅー!そういうことを廊下で言うんじゃねぇ!」
「はいはい」
あーもう。かわいいんだから!この程度で真っ赤になるなら、こんな格好でうろつかないで欲しいんだけど。
「わ、かりました!今度から着替えは山ほど用意しときます!だから…!」
「ロッカーまで手でもつないでいきますかねぇ?」
「なっ!なんで!」
「や、流石に俺に喧嘩売ってくるような馬鹿は少ないですから」
ろくでなしとの評価もあるが、基本的に俺は自分のモノを大切にする。仲間も部下も、それから恋人なんてものを作ったのは初めてだけど、そりゃもう何かあったら滅ぼす勢いで大切にしてるってことは、上忍連中なら誰でも知っているはずだ。
中忍はねー…あんまり交流がないとわかんないのよね。人数多いし。
でも流石に上忍元暗部鬼畜殺人機械なんて勝手に噂してるヤツの男を襲おうとはしないだろう。多分。
「いや、それ以前に俺相手に勃起するような人はいないと思いますよ?」
コレを真剣に言えるんだからタチ悪いよね。この人。
自分をしらなすぎる。戦場でこっそり何度もこの人を襲おうとした連中を処分したなんてことは一生知らないままだろう。
いいんだけど。それはそれで。
「ま、いいから行きましょうよ。デートみたいなもんだと思って?」
「うっ!は、はい…!」
恥ずかしそうに笑ってくれて、だからこそ尚のこと理性をつなぎとめるのに苦労した。
…やっぱり忍犬でもつけようかねぇ…?
そう独りごちるのにも気づかず、恋人は真っ赤になりながらコップ片手に痛いほど俺の手を握ってくれたのだった。


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適当。
ねおちしまくりました。ちなみにコップで麦茶のみながら移動という大分アレな中忍教師でお送りしました。
ご意見ご感想お気軽にどうぞー

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