おべんともって(適当)

「おべんっとおべんっとうーれしーいーなー!」
頭に花でも咲いてるんじゃないかと思うほど、能天気に浮かれている男は、あれでも上忍のはずだ。
「あんたいい加減落ち着きなさい。出掛ける前にそんなに騒いでどうすんですか」
それでなくとも体力に不安がある男は、歩くことすらできないほど疲弊して帰ってくることも多いというのに、体力の使いどころを間違ってばかりじゃないかと思う。
そういえば昨日も任務から帰還するなり寝ていた俺を叩き起こして朝まで延々と…いや、まあいいんだけどな?俺だってその、溜まって…あーうん。その!
まあ、惚れてるんだから普通だろう。その辺は。
とにかく、こうも落ち着きがないのは問題だ。
三十路の男が浮かれ騒ぐ姿は、痛々しさを通り越していっそ微笑ましいくらいだが、放っておくのもまずいだろう。
これじゃ弁当を作り終える前に、男が力尽きるんじゃないかと不安になる。
一応上忍だとはいえ、任務から帰るなり激しい運動こなして、今も延々とスキップなんかしてるんだから、心配にもなるってもんだ。
軽く嗜めた所で、頭の中まで花が咲いたような男にとっては、たいしたことじゃなかったようだが。
「だって!これって遠足ってやつですよね?」
「は?」
明日の任務は、演習場の整備だったはず。
死の森と呼ばれるだけあって、中忍一人では効率が悪いと、たまたまこの男に回ってきたにすぎない。
というか、多分火影様が俺をえさに、昨日の任務を押し付けたんだろうなー…。
任務が御褒美ってのは、ある意味この男らしいが。
「イルカ先生と二人っきり…!」
「あんなとこで二人っきりもないもんでしょうが…」
そもそも二人っきりだ。今だって。というか、任務がなければ一緒に暮らしてるんだから、二人っきりに決まってる。
…なぜここまで浮かれるのかわからない。
まあ、かわいいからいい…のか?
「遠足行ってみたかったんですよね!」
そんなこといわれたら、一肌でも二肌でも脱ぎたくなるってもんだろ?
ろくな子供時代送ってそうにないもんな。まあ俺たちの世代にはめずらしくもないけど。
「あー…折角だから変化でもしますか?」
遠足―なんて言われると、手でもつないでしおりも作って…なんてとこまでやりたくなるが、これは任務だ。
時間的制限があるから、せめてちょっとだけでも気分を出してやりたい。
「え!いいの?」
キラキラと瞳を輝かせる男に、勿体をつけながら頷いてやった。
任務の遂行さえできれば問題ないだろう。
演習場のトラップの確認だけなんだし、どんな格好でいてもだれもみちゃいない。
「いいですよ。ただ弁当の包みは半分持つんですよ?」
「はーい!」
早速子供に変化して、良い子の返事をくれた上忍をなでてやりながら、まあたまにはこんなのもいいかなんて思ったのだが。
結局、子供の俺に興奮したエロ馬鹿上忍に、いきなり破廉恥な行為に及ばれるとまでは想像できなかったことを悔やまざるをえない。
気持ちよかったのが一層辛い。辛いというか…あの馬鹿がそこら中で騒いだおかげで、後に変態バカップル呼ばわりされたことに憤死しかけた。
当然全力で説教したのだが。
ホワイトデーのための牽制だったと聞かされて、がっくりと肩を落とす羽目になった。
泣きながら突拍子もない行為をしでかしたことを詫びられて、捨てないんでなんて喚かれたら…そんなのときめくだろ!
というわけで、今月の掃除当番は、全部あの人になったってわけだ。
まあ、うん。毎日楽しいぞ?あの人といればな!


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子カカイル祭り継続中。
アホの子上忍とアホの子中忍。
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