「あのさぁ。いい加減にしてよ」 喧嘩腰の上忍。それに相対する同僚。 …仲裁というか立会いを頼まれた俺はどうしたらいいんだろう。 向こうの仲裁役ならかなり高名な上忍だからいざとなったら止めてくれるかもしれないが、俺じゃマズまちがいなく無理だ。 ビールジョッキ片手にたばこをふかし、くつろいでいるようにしか見えないこの人が動いてくれるかどうか疑問に思うが、信じる以外に道はない。 「いい加減に?それを言うならアンタだろ!俺の彼女に…!」 事情を何も聞かずについてきたのが失敗だった。 …あまりにも追い詰められた顔で、どうしてもついてきて欲しいと男泣きに泣くから、聞けなかったんだよなぁ…。 確かもうすぐ結婚することがきまったのどうのと聞いた気がする。 お祝い何がいいかしらなんて、スズメ先生にも聞かれて、縁遠いので分かりませんと答えたときの虚しさを覚えているから、記憶違いってことはないだろう。 まさか不倫?カカシ先生は確かにもてるらしいが、そういう人は大抵面倒な女に手を出したりしないと思うんだけどなぁ。 頭のいいくノ一ほど、やっかいな相手は避ける。遊びにしろ伴侶選びにしろ、恐ろしくシビアだ。 …もちろんさえない中忍で、ある意味こぶ付きの自分など、選ぶ女性がいるはずが…って考えたら虚しくなると学習したばっかりだろう俺!もっとしっかりしろ! 「アンタの彼女って誰なのよ…。さっきから聞いてると、俺の写真か何か持ってただけなんでしょ?それもま、機密っていっちゃ機密だけど」 ウンザリした口ぶりからして、本当ならこのまま話を終わらせたいんだろうな。 それに聞いているこっちだって意味が分からない話だ。 写真なんて、どこで。 「写真なんて…何にも関係ないのに持ってる訳ない!そんなのおかしいだろ!アンタが渡したんじゃないのか!」 「おい落ち着けって。写真なんてそんなもの渡すか?普通。上忍だぞ?」 胸倉を掴む前に止められて良かった。 代わりに怒りに満ちた視線を俺が受け止める羽目になったが、とりあえずなんとかはなるだろう。 ここは穏便にしてもらえれば、あとは一応諌められるだろうと思ったのに。 「うるさいなぁ?その写真持ってきなさいよ。処分してあげるから。知らない女の家にあるなんて気持ちが悪いし」 「なんだと…!」 火に油注いだよこの人!どうしてくれんだもう! 「待て待て待て。それある意味正解かもしれないぞ。偽造とか、任務とかだったらどうするんだよ?」 代替どうして彼女の私物だってわかったんだかも怪しい。 どこでそれを見つけたのかすらひょっとすると機密扱いになる自覚がコイツには無さそうだ。 そこまで言ったせいか、やっと目が覚めたような顔をしたから。 「…今、持ってる。これだ」 渡された写真は確かにこの人のものだ。それも隠し撮りみたいだよなぁ。これ。 演習場らしき所で木を背にして、エロ本片手に佇んでいる。覆面にエロ本って最悪の組み合わせなのにそんなに酷く見えないって凄いよな…。 「これ、どうしてアンタが?」 「知るか!彼女の机に入ってたんだ!」 「あー…それで分かった。これ、確か勝手に売ってた馬鹿がいてねぇ。渡す方法がそんな感じだったと思う。叩き潰したんだけど、配送を子どもにまで手伝わせてたらしいから」 「ってことは…彼女が買ったのか…」 「それか間違いじゃない?それが切っ掛けで摘発したんだもの。こんなもの持っててもしょうがないと思うんだけどねぇ?」 「そんな…!」 なんだか聞くだに恐ろしい話だ。 写真売られるとかなぁ…しかも覆面忍者でも色々トラブルがあるだろうに。 「じゃあ、それで解決?」 「…は、い…」 「あ、あの!済みませんでした!ホラ帰るぞ!」 引っ張って帰ろうとした途端、襟首を掴まれた。 「これ、イルカせんせが持ってて?」 「へ?」 封筒だ。何の変哲もない。…なんだこれ? とりあえず中身を見たら…素顔だ。なんだおいちょっとまて。機密だろ!? 「ちょっ!カカシ先生!…いねぇ!?」 空気みたいだったアスマ先生と、二人そろって消えている。 「お、おい?」 「わー!?見るな!これ!写真!あの人!素顔!」 「えぇ!?」 「ど、どうしよう」 …これは、なんの嫌がらせだ…!? 「そう、か。だから俺殺気飛ばされたんだな。そういやイルカに触ったときだけだったわ…」 「お、おい?なんだ?何で距離取るんだよ!?」 「がんばれ!お幸せに!今日の礼はするけど、とりあえずまたな!」 逃げられた。完膚なきまでに。なんだよおい! 「…とりあえず…隠さなきゃ…!」 うろたえた俺は気付かなかった。 …それが上忍のある意味宣戦布告であることを。 その日からおおっぴらに秘密をたてにデートなるものを要求するようになった上忍に、まんまと口説き落とされることも、当然。 ********************************************************************************* 適当。 熱暴走と戦うPCにまけました。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |