覗き屋(適当)


「あーお暑いこって」
ゆらりと現れた人は、特別上忍だというのに妙に気さくで、ついでに言うなら若干軽薄に思えるほど言動が軽い。
声はもとより千本を咥えた特徴的な姿を見間違いようがないが、こんなときに見てなくてもいいだろうに。
「そーよ。あっつあつなの。だからじゃーま。それとも見たいわけ?」
「やーこのクソ暑いのに絡み合う野郎をみるっつーのは流石にごめんですね」
ぽんぽん言い合う二人は、こっちのことなんざ気を遣う気はないらしい。
「んぐ!んー!」
抵抗はした。したら縛られた。そして猿轡まで…。
そんな情けない状態を見られる位ならせめてみてみぬフリをしてくれるか、そうじゃないなら止めてくれよ!
「かーわいいでしょ?でもヤダとかいうんだもん!久しぶりなのに!」
こらてめぇ後で覚えとけこのわがまま上忍!なに自分が悪くないみたいなこと言ってんだ!
…っていうかあれだな。拗ねてるのと寂しいのとをこじらせたんだろうなぁ…。
毎度のことながらなんでこの男が上忍やってられるのか理解に苦しむ。
餓鬼っぽいくせに実力だけはあるのが最悪だ。
見回りも大半が終わったとはいえ、なんでアカデミーの空き教室なんかで行為に及ばなきゃいけないんだ!
「ここじゃない方がいいんじゃないですか?聞こえますよ。結構。それで前に連れ込んだ女に平手くらっちまいました。どうせなら資料室のがいいっすよ。あそこは静かだし空調効いてる」
「へー?おさかんなことで。…じゃ、そっちいきましょうね?イルカせんせ!」
どうしてこうなるんだ…。
脱力のあまり、担ぎ上げられたというのに抵抗するのが遅れた。
「んぐ!?んー!んー!」
我ながら間抜けすぎる。
慌てて暴れてみたものの、男はそれすらも楽しそうにいなし、さっさと移動しようとしている。
「はいはい。その元気はこれから使ってよね。もーでないってくらいぐちゃぐちゃになるまで離してなんかあげないから」
恐ろしいことを言いながらしりをもまれた。悲鳴すら口に突っ込まれた布切れのおかげで封じられ、ご機嫌な上忍の思うがままにされている。
…この男には何を言っても無駄だ。
せめてもの怒りを込めて、恨めしげな視線を向けると、ポロリと千本を落とした。
「うわー…カカシさん。この人ヤバイっすね」
「そうよーだからみんな。減る」
「えーまあいいじゃないっすか。ちょっと見るくらい。いやー凄い。もっさりしてんのになぁ…?」
「だーかーらー。邪魔。ほらほらどいた。イルカせんせがかわいそうでしょ?」
かわいそうだと思うならこの縄解きやがれ!
そう毒づきたいが…なんでこの人やたらまじまじ人のこと見てるんだ…!?
この馬鹿上忍なら分かる。いつだって引っ付いていたがるから。
だがこんな風にこの人に見られる理由は俺にないぞ!断じて!
「部屋教えてあげたでしょうが?ちょっと位いいじゃないっすか。それにしてもいや眼福眼福。なるほどなぁ。だからか。…気をつけた方がいいっすよ」
「俺のモノに手ぇ出す馬鹿がいるの…?」
「いえいえ。ちょっと小耳にね。いいもん見せてもらったんで、まあ後で式でも飛ばしますよ。野暮なまねはしたくないんで」
「そ?じゃ、お願い」
なんだか分からないうちに取引らしきものは終了した。
…代わりにどうやら自分の運命は決定してしまったようだが…見られながらされるよりましだろうか。
「んぐ!うー!」
「はいはい。…全力で守るから。今度こそ絶対に」
訳が分からない。だがその妙に真剣な顔に思わず見ほれてしまって、あっさりあれやこれやされてしまったことを考えると、自分も相当ダメなんだろうと落ち込んだ。


後日、妙に親しげに話している二人に、自分のされたことを思い出してイライラしたら、なんだかしらないが特別上忍の方にはまた「凄いっすねー」と言われ、恋人には「もう!ダメじゃない!俺だけにしなさいよ!でも嫉妬するなんてかわいー」なんて騒がれた挙句にまた連れ込まれた。
…訳が分からないが、今度から例の特別上忍には絶対に近寄らないと固く心に誓ったのだった。


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適当。
覗きは犯罪です。
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