「うぇ…」 腰は痛いし、あらぬ所の違和感はすごいし、さらには何かが滴っていく感触ときたら最悪の一言に尽きる。 なんどやったって慣れないものは慣れない。 行為自体には多分…まあその、正直言って慣れたんだと思う。 初めてだから。 そう言って里を切っての業師が無駄に気合を入れた結果、身も世も泣く喘がされた上に、途中からタガが外れたように執拗に行為を続けられて、朝になってからどうしようもなくぬけた腰と尻の激痛にのた打ち回ったあの日よりは、ずっと体は軽い。 軽やかに動き回れるかといわれれば流石に無理だから、休暇申請をしておいて正解だったけどな。 最初の夜の緊張感は相当なものだったが、今は羞恥心の方がそれに勝る。 俺がプレゼントなんて、いい年の、それも男がやるもんじゃないだろうに。 でもだな、イルカ先生が欲しいですなんて、泣きそうな顔で強請られたら断れないじゃないか! 正直言って覚悟はしていた。イベントごとも好きだが、なによりこの男はいつだって側にいることを望むから。 それも卑猥な方法で確かめたがる。愛されているのか、誰にも触れさせていないか、夢や幻じゃないかってことまで疑っている節さえある。 起き抜けに顔をぺたぺた触られるのにももう驚かなくなった。 「喜んでた、よな?」 一応プレゼントの用意もしておいた。女性ならまだしも、男相手に何を贈るか迷い、忍具の類はどうしたって好みや癖があるから、身につけるものならいいかと浴衣を選んだんだが…包みを開けるなりこれ脱がせたいのだのなんだのと…! 袖を通す前に押し倒されて突っ込まれていたから、脱がすも何もあったもんじゃない。 肝心な箇所だけ脱がされて一回、どろどろになった所でひん剥かれて一回、それから風呂に連れ込まれてまたヤって、寝室にたどり着いたときには息も絶え絶えだったというのに容赦などされるはずもなく、延々と繋がっていた気がする。 一回目がまずかったんだよな。多分。 「ごめんなさい。止まれなくて…」 って、なんなんだよ。やっちゃってから謝りやがるから、それも泣きそうな顔で言いやがるからこっちだってついついかっとなってだな。 「うるせぇ!…誕生日プレゼント、さっさと受け取りやがれ!」 って…。ついつい啖呵切って上に乗ろうとしたのがまずかったというか。まあうん俺が悪いなこりゃ。 「堪能させていただきます」 なんてつっこんだまま頭下げた男の方もどうかと思うが。 「めし…かたづけ…うぅ…後でいいか」 食い終わったか食い終わらないかの内に押し倒されたおかげで何もかも全部そのままだ。とはいえ、幸せそうに惰眠をむさぼっている男を起こしてまで片付ける気はしない。 ケーキだけは後で責任持って食わせなくては。 「イルカせんせぇ…?」 もそもそと肌を確かめるように触れて、それからぎゅっと抱きつかれた。 にへーっと笑うと驚くほど幼く見えて、夜に見せる顔との違いに驚かされる。肉食のケモノみたいな顔してたくせに。満腹になったせいってことだろうか。 「返品きかねぇからな」 こっそり唇を奪って抱きしめ返して、それから疲れを癒すためにとっとと睡眠をとることを優先することにしたのだった。 ***** 二度寝からの目覚めは、衝撃的だった。 …朝からいきなり突っ込まれそうになるのは流石に初めてだ。 「ひぅっ」 「あ、おきちゃった?」 寝ている人に突っ込んどいてこの言い草だ。 しかも行為を中断するつもりはないらしく、腰を激しく振りたてて快感を追っている。 「や、あ!なにしやが、る…ッ!」 ぶん殴ってやりたいのに組み敷かれていてはどうにもできない。 「誕生日プレゼントでしょ?…勿論俺も一生大事にしますから」 しまりのない顔だ。しかも聞いてたのか。恥ずかしくて死にそうだ。ああくそ!それなににかわいいとか思っちまうのはどういうことだ。 これが惚れた弱みってやつなのか。 「いいから…さっさと続き…!」 誤魔化すように挑発してやった。 にんまりと笑った男には全てがばれているのかもしれないが。 「ん。末永くずっと、ね?」 誓いの言葉は甘く響いて、疼く体は熱を上げてとてもじゃないが収まりそうにない。 しょうがない。何せ俺は誕生日プレゼントなんだから。痛みもだるさも耐えてやるとも。 「おたんじょうび。おめでとうございます」 口付けの後は言葉なんて紡げないほど混ざり合って、それが例えようもなく幸せで。 翌日それこそ指一本も動かせないほど疲れ果てた割りには、達成感のお陰で気分はよかったのだった。 ******************************************************************************** 適当。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |