ふさふさ的バレンタイン(肉食獣のいる生活もしも編)

もし肉食ぬこと子どものころ会ってたらどうなってたかなぁという妄想続きをさらにどんどん…(中略)…勢いあまってアップしておきます。
何度も言っちゃいますが、チョコはぬこには毒なのでご注意ー!子ぬこも母ぬこも内臓はヒトです! でもって、こそっとふさふさバレンタイン編を置いておいて見ますー。


今日はチョコの日だったようだ。
出会う部下はことごとく俺にチョコを渡そうとしてくる。俺もカカシも甘いものが苦手だ。渡されるものを全て受け取っていたら、食べることが出来ないのは確実だし、カカシがチョコレートを買い込んでいたのを知っていたから、全て礼を言って断ったが、なぜか大抵は「あきらめません…!」と言われてしまった。毎年のことだがこれには困っている。
家に帰ってカカシに話を聞いてからやっと、今日が何の日か思い出せたが、それまでに一体何があったのか随分悩んでしまった。
なにせ、驚くほど必死な顔をされるのだ。…そうまでして渡すからには、あのチョコレートに何かあるんだろうか?確かに一部に薬物の匂いがしていたが、定期耐性試験ならすでに終わっているはずなのだが。好意を示すにしてはどこか切迫した様子に、毎年戸惑ってばかりだ。
だが、お陰で以前彼女がチョコレートをうっとりと眺めていたのを思い出した。
この季節になると町の洋菓子屋からスーパーまでありとあらゆる所がチョコを取り扱い始める。
彼女は中でもチョコレートのケーキが好きだった。…のだと思う。
直接聞いたことはないが、ショーケースに並んだ茶色い塊を、うっとりと眺めていたからだ。
洋菓子屋の存在は知っていても、興味も用もなかったせいで、その物体の正体が分からなかった俺が、ぽつりとその日のことを話したら、部下は丁寧にばれんたいんというものの存在を教えてくれた。要するにチョコを渡すことでその相手への好意を表現する物らしい。
なぜか酷く赤い顔で色々と語ってくれたのだが、その謂れは良く理解できなかった。
だがとにかく。彼女はきっとあの物体を食べたいのだということだけは分かった。
けーきというものは甘くて柔らかいものだというのは、以前任務で食べたことがあるので知っていた。そして自分が普段読んでいる教本には、そういったものが載っていないというコトも。
新たな技術と知識が必要だと思った俺は、早速次の手を打った。三代目ならそういったものにも詳しいだろうと相談に行ったのだ。
「暗殺任務の報告ついでにそのようなことを聞くでないぞ?全くお主は…!まあよい。どうせならば最高の技術を身に着けてくるがよい。お主には任務以外のことを学ぶことも必要じゃ!」
そういって紹介してもらった先は、火の国の大名を始め、異国の地からわざわざ買い求めに来る者もいるという高名な菓子職人だった。
その気難しいと評判の老人の下で、通常任務と平行しながら、一週間ほど技術習得に力を入れた。適時術を使用することで、一般人よりも簡単に身に着けられたのだろうし、三代目の紹介だったからだろうとは思うが、なぜかその菓子職人に引退後は跡継ぎにとまで評価された。
だから俺は、恐らく彼女も喜んでくれるだろうと思ってしまったのだ。
デザインをしている最中にもきっとすばらしいものになると言ってもらえたから、きっと慢心していたのだと思う。
チョコレートケーキなるものを完成させて、彼女に見せたときのことが忘れられない。
「こ、これ!?これ一体どうしたんですか?」
少しでも喜んでもらえるだろうと思っていただけに、声が裏返ってしまうほど驚いて、ぐるぐるとケーキの周りを回っている彼女に、俺も酷く驚いた。
その顔は決して喜んでいるようには見えなかったから。
「…チョコレートケーキというもので…以前、見ていたので作ってみたんだが…」
「これ!?全部ケーキなんですか!?本当に!?」
「ああ」
しげしげとケーキを見つめて、彼女が溜息をついている。
ああ、俺はまた失敗してしまったのか。
食べてもらえないならと、ケーキを片付けようとした俺に、彼女が微笑んでくれた。
「サクモさん。天井に引っかかりそうな上に、テーブルにも乗り切らないほど大きなケーキは、一人では食べきれないと思うんです。だから、今度からはもっと小さい方が嬉しいです」
ちょっと困ったように彼女が笑っている。
そうか。そういえば彼女はそれほど沢山は食べない方だ。
部下に聞いたところによると、戦闘三昧の男連中と女性とを比較してはいけないとのことだったが、それを差し引いても、このケーキを彼女一人で食べるのが無理なのは確実だ。
…そういえば、パーティー用のレシピで作っていたのだと気付いたのはその時のことだった。
彼女には最高のものをと考えた結果だが、冷静さを欠いていた。
「すまない…」
これではどうしようもない。大半は残ってしまう。
だが、彼女の手がそっと途方に暮れた俺の手を握ってくれた。
「あ、あの!とっても嬉しいんです!だから…一緒に食べてもらえますか?」
それから…彼女と一緒に食べられる分だけケーキを食べた。
ずっと美味しいと蕩けそうな顔で言ってくれた彼女を見つめていると、「サクモさんも。はい。あーん!」と一口ずつ食べさせてもらえたので、苦手な甘いそれを思ったよりは食べることが出来たと思う。
それでもほんの一部しか食べられなかったが、彼女がとても喜んでくれたので、俺としてはとても満足した。
…その後、もったいないからと彼女が残りを部下の所に差し入れしてくれたらしい。驚くほど評判が良かったそうだ。
だが、彼女が。
「バレンタインはお友達にもチョコをあげることもあるけど…やっぱりサクモさんの特別なケーキだけは独り占めしたいから、来年からは二人で食べきれる量にしましょうね?」
そう言って、俺を抱きしめてくれたから。
…これからは食べきれる量というのを学ぼうと誓った。
後日、事の顛末を報告ついでに礼を言ったら、「どうしてその店でケーキを買うという選択肢が思い浮かばなかったんですか!?」と副官である部下に驚かれたが、言われてみるまで思いつかなかった。
その後も、部下に切々と一般的なバレンタインについて語られたが、そのお陰で彼女には俺の作ったものを食べて欲しかったからだと気付いた。
彼女の笑顔が見たかったんだと気付いた途端、だからあんなにも落ち込んだのだと理解できた。
ソレを一瞬で払拭してしまう彼女はやはり俺の唯一なのだと、改めて思いしらされて…同時に例えようの無いほどの愛おしさが湧き上がってきて、それを思わず言ってしまった俺に、部下がまた一際深い溜息をついたことだけは覚えている。

今ではカカシも腕を上げて、俺の教えたレシピも殆ど覚えてしまった。
二人が、いつか俺と彼女のようにケーキを一緒に食べる日も近いだろう。
そう思っていたのだが、どうやら既に実行されていたらしい。
「…サクモさん…やっぱりカカシ君はアナタにそっくりですよ…?」
力なく微笑むかつての部下はそう言ったが、やはりカカシは彼女そっくりだ。
イルカ君のチョコレートに笑み崩れる顔も、その優しさも、一生懸命さも全て彼女の面影を感じる。
だから…ばれんたいんというのはチョコに追いかけられることさえなければ、すばらしい日だと思った。

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子ぬこイルカと母ぬこと苦労する父の番外編を出来心でアップしてみる。
ふさふさ(大)の前科ってことで!似たもの親子?
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