「ねぇねぇ。いいの?」 「いいの!父ちゃんなんて知らない!」 イルカちゃんが怒ってる。 なんでかって聞いても教えてくれないからわかんないんだけど。 とりあえず家出するって言い出したから、このままどこか森の中で暮らし始めちゃいそうで恐くて、俺の家に招待することにした。 ちゃんとイルカのお母さんには式で連絡したから大丈夫だと思う。 ただいつも俺を見るだけで小僧とかまた貴様かとか近づくなっていうお父さんは…どうなるんだろうなぁ。 「うみのさん、どうしちゃったんだろうね?」 イルカちゃんのお父さんって言っただけで怒られちゃったもんね…。 俺がもう中忍だとかその辺がだめなのかもしれない。 イルカはすごーくすごーく大事にされている。お父さんにもお母さんにも。 胡散臭い銀髪の小僧って呼ばれるのは仕方がない…のかな? イルカのお父さんじゃなかったら、忍にあるまじき浅慮だとか、口を慎めって脅しちゃってるかもしれないけど。 ま、全部父さんの受け売りなんだけどね。 「父ちゃん…父ちゃんなんかしらないもん!いいもん!もう父ちゃんのご飯とかつくんないから!」 「そっか…俺、イルカのご飯好きだよ?うみのさん悲しむよ?」 「いいの!父ちゃんが悪いの!」 うーん。できるだけ懐柔しようと思ったけど無理そうだ。 もう家の前だし、今日はおとまりしてもらおう。父さんの長期任務でいないから、部屋はいくらでもある。布団だけできれば干したいからちょっとだけ手伝ってもらって、後はご飯はイルカと一緒に作ればいいかな。 …ちょっと楽しくなってきたのは、うみのさんには秘密だ。 「ついたよ。お布団干したらお茶にしよう?この間もらい物のお菓子があるんだ!」 「お菓子?カカシの持ってくるの美味しいよね!でも…いいの?お泊り…えっと、えっとごめいわく?じゃない?」 イルカはすごい。まだ俺よりずっと小さいのにこんな言葉まで知っている。 それにすっごくかわいいし! 「大丈夫。むしろ俺が食事作るとあんまりおいしくないから…」 野戦料理は出来る。焼いたりとりあえず全部放り込んで煮たりとか。でもまともな料理はあんまり得意じゃないというか…途中で面倒になる。本を読めばいくらでも作れるんだろうけど、そもそも完成形を知らないから、これであってるんだろうかって考え始めちゃって味よりそっちが気になるんだもん。 イルカのご飯はすっごく美味しい。俺なんかとは大違いだ。イルカの母ちゃんが教えてくれたらしい。他にも調薬とかもちゃんと教わってて、すごいと思う。 うちには母さんがいないし、父さんから教わるのは術とか体術とかだし、父さんは俺より家事が出来ないし、ま、がんばってくれるんだけど最終的に…ね…。 いいなぁ。イルカは。考えても仕方がないんだけど、お母さんってすごい。 「ありがとカカシ!」 ぎゅうって抱きついてきたからぎゅうって抱きしめ返した。 イルカからは幸せの匂いがする。あったかくてやわらかくてお日様みたいだ。 「ううん!お泊り楽しいよ!」 「へへ!俺も!」 イルカといっしょにいると胸がきゅってなることが多いけど、これからも一緒にいたいなぁ。俺まですっごくあったかくなる。 「ね、イルカ。俺お布団持って来るね!待ってて」 「うん!手伝う!……絶対お嫁さんになってもらうんだもん」 およめ?ってのはよくわかんないけど、イルカなりになにかお父さんとあるんだろう。うちなんて喧嘩すらしないからなぁ。あんまり家にいないのもあるけど、なにより父さんはちょっとこう…多分普通と違うから。 ま、いいや。今日はお泊りだから、一杯イルカと話せる。そのときにでもちょっときいてみればいいかな。 だってイルカが楽しそうだし、別に今じゃなくてもいいよね? ***** …二人でご飯作ってお風呂入ってお布団もいっしょにもぐりこんで、イルカにいきなりプロポーズされたと同時にお父さんが殴りこんできたのはその夜のことだった。 結婚とかは良く分からないけど勢いでこんやくしょうめいしょ?っていうのまで作った。どうせい?ってのをするには必要なんだって。 だって問題があるとすれば、父さんが帰ってきたらそのまま普通に流されそうなことくらいだし。 うーん?あとはしょっちゅううみのさんが遊びに来て、イルカと話したあと泣きながら帰っていく方が問題かも。 「カカシ?ごはん食べよう!」 「うん!洗濯ものもうちょっとだから終わったら一緒に食べよう!」 どうやって説明しようかなーなんて思いつつ、今日も一日が終わりそうだ。 とりあえず、唐突に始まった二人暮らしは幸せだからいいか。 ********************************************************************************* 適当。 ご意見ご感想お気軽にどうぞー |