お互い様

「寝るんなら、ベッド行って下さいよ」
「んー。」
重い。
何があったか知らないが、肩に顎乗せて寄り掛かられて、もう結構な時間になる。
相手が子供ならまだしも、いい年した、しかも自分とほとんど同じ体格の男だ。
…正直いい加減にして欲しい。
「欝陶しい。」
「酷ー。」
酷いといいながら離れる気配もなく、クスクス笑いが耳を擽る。
あー。もう、これはあれだ。根競べだ。…負け掛かってる自覚はあるけれど。
「寝るなら寝る!」
寄りかかる男の耳を引っ張ってやったら、大袈裟に痛がってみせた。
「痛いよ」
冗談めかしたそれが、この男の本音かも知れない。
…冗談めかして甘える男の精一杯の。
本当は結構臆病で痛みに敏感なくせに、絶対にそれを表に出さないから。
こうして時々不必要なほど甘えてくるだけで。
「意地っ張り。」
「ふふ。…ねぇ、寝るなら、一緒に…」
そうして腕を引かれるままに、男の胸に倒れ込み…その日、結局寝たのは畳の上になってしまった。
*****
翌朝、ご機嫌な男の口から、どうやら痛みとやらが今日受け付けで同僚と話してて相手にしてくれなかったからだと知った。
要するに、すねて甘えていたわけだ。呆れるコトに、
当然。殴ってやったけど。
それにすら嬉しそうに笑み崩れる男にしてやられた感じがして、その日一日ちょっと冷たくしてやった。
そして、それでも嬉しそうにしている男は、本当に末期だ。
…そんな所もかわいいと思う自分も。
「…いいんだ。これからもどうせ…」
口の中で消えるはずの負け惜しみに気付いた男が、不満そうに肌を寄せてくる。
「なぁによ?隠し事?…やめてよね」
摺り寄せられる肌と抱き寄せる腕は強引だが、どうせ甘えているだけだ。怖くなんかない。
ただ、あれだ。…だからこういう所がツボなんだよなぁ…。
「別にー」
癪に障るので、ぷいっとそっぽを向いてやったら、慌てたように男が押し倒してきた。
「ちょっと、いいなさいよ!」
必死な顔がいいなぁ。…なんかこう、一生懸命で。
そんなコトを考えている間に、ムキになった男がサクサク服を剥いでいったけど。
とりあえず笑顔一つ返して、男の腕に応えてやるコトにした。

これが、お互い様ってやつだ。

そう、一人納得して。


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適当小話を上げてみたりして。
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