「あー…里、か」 やっと帰り着いたと感じるには任務期間は短すぎるはずだった。 それなのにさっきまで俺を駆り立てていた焦りのようなものは、里にたどり着いた途端薄れ始めている。 かといって歩く速度はむしろ速まっているのだが。 「おかえりなさい」 大門の前でエロ本片手に待っているのは、大事な大事な恋人だ。まあ同じ男でしかも上忍で、夜に至ってはなぜかこんなごつい体をして組み敷かれているが。 あーあ。やっぱり泣いてるじゃねぇか。目のふちが赤い。 お迎えってのをしてみたいなんていうから、この所寂しがり屋の恋人を思って避けていた任務を引き受けたのに。 泣いてたのなんて多分口布のお陰で気づかれにくかっただろうが、恋人が往来で無防備につったってるなんてのは…最悪だ。 俺だって人並みに…いや、人並み以上に独占欲が強いってのを、多分この人は理解してないんだろうなぁ。 引く手あまたのこの男に惚れて、玉砕覚悟で搦め手を選んだってのに、俺が惚れる前にとっくに俺に惚れていたらしいこの人の中では、お人よしの中忍に甘えて隙をついてモノにしたってことになってると、この間初めて知った。 こっちとしては寂しがり屋の所を付けねらい、飯を食わせて構い倒して、ベッドも一緒で…ってまあ同じ男だし性的なことを匂わせることはしなかったが。 少なくとも特別扱いしまくった。 で、まあある日突然押し倒されて現在に至る。 惚れてくれないかなーとか考えながら構い倒しすぎて、この人が焦れていたことになんて欠片も気づかなかった結果だ。まあ要するに俺が悪い。鈍いって言われて、この人が今撫でてほしがってるのとかすぐに分かるんだからそんなはずないだろって思ってたけど、確かに俺は鈍かった。 ずーっと俺とそういうことを従ってた気配に気づかなかったからな…。惚れた以上キスくらいはしたいと思っておやすみのちゅーをこっそり習慣化してみたりはしてたけど。 キスしておやすみなさいは拷問だったって、全部終わった後ひとしきり泣かれたっけ。 まあ要は己を過信しすぎていたってことだ。 だから、いきなりお出迎えっていうのをしてみたいと言い出したときも、この人泣くんじゃないかなぁって思ったけど我侭を聞いたんだ。 案の定この有様だったけどな。 ちゃんと長期任務で留守の隙を狙って任務に出ていたっていうのに。だから嫌だったんだよ。 「イルカせんせ、おかえりなさい…!」 「はいはい。ただいま。今すぐ報告してきますから、家帰って風呂はいったらちょっとでいいからいちゃいちゃしましょうね?」 ホントは任務帰りで汚いからよごしたくなかったんだが、こんな顔されたら我慢できないだろ。 こんな、泣きそうに嬉しそうな顔されたら。 「します。休暇もとります。ちょっと歩けなくしちゃうかもしれないけど、いいですよね?」言い訳ないんだが、今この聞かん坊に何を言っても無駄だろう。 …第一こういう妙に駄々っ子な所もかわいいと思ってるんだし。 「程ほどなら。…俺も溜まってますから」 にこっと笑ってやったら、ものすごい顔で驚いていた。手なんか震えてる。 これは…さっさと報告書だしてこないとなぁ。我慢できないとか言い出しかねない。 でも、コレだけは外せない。 「え!なに?イルカせん…」 「ただいまのチューです。朝だし、今なら人通りも少ないから、手、つないでいきますよ」 「え!うそ!」 「はいはいホントです。あれだけおねだりしてたのは誰ですか。忘れるわけないでしょうが」 あーもう。真っ赤になっちゃってかわいいなぁ! 普段男前の癖にどうして…って、まあこのままのが好きだから変に気取られても困るけどな。 早く、帰ろう。手をつなぐのも好きだけど、これだけじゃ物足りない。 「急ぎましょう」 「う、ん。…イルカ先生。おかえりなさい」 照れたように、とても小さな声で呟かれたそれに、胸が高鳴った。 今日はどうやら俺のほうが歯止めがきかなそうだ。 「ただいま」 改めて口づけを交わして、おもいっきりやりたおせるから明日も休暇でよかったなぁなんて不埒なことを思った。 ******************************************************************************** 適当。 玄関開けたらケダモノ上忍と、なにげにケダモノな中忍は、さんざっぱらいちゃいちゃし倒したそうです。 ご意見ご感想お気軽にどうぞ。 |