「よし!こんなもんかな!」 花壇の手入れは結構な手間だが、荒れ果ててすかすかだったものがきれいに…とはいかないまでもそこそこ華やかになると達成感がある。 積極的に花をめでる趣味はないにしても、長らく放って置かれた裏庭に小さな色とりどりの花が咲いている光景は、心を和ませてくれた。 近所のおばちゃんから大量に押し付けられたもの始末に困って適当に植えただけだが、こうしてみるとなかなか上出来だ。 「花、きれいですね?」 「うおっ!?え?あれ?カカシ先生?」 1人悦に入っている所に声をかけられて、思わずうろたえてしまった。 …なんというか、恥ずかしいところを見られてしまった気がする。 しかもあっさり背後を取られすぎだ。 落ち込んではみたものの、この人相手だから当たり前だと思い直した。 振り返ると意外なほど近くにいたことにもう一度驚かされたのだが。 「こんにちは」 にこにこと笑うこの人こそ、花が似合いそうだ。 その強さで名を馳せているとは思えないほど、普段のこの人は穏やかすぎるから。 俺の隣にかがんみこんで完成したばかりの花壇を眺めている姿は、何故か妙にしっくりきた。 これまでは…なんだか高そうなバラとか、そういう花が似合うと思っていたけど、近所のおばちゃんがくれたチューリップが意外なほど似合っている。 「綺麗だな」 思わずこぼした言葉に、突然たずねてきた男は笑みを深くした。 「そうですね。とても」 いうつもりのなかった言葉に焦ったが、花のことだと思ってもらえただろう。 そう、そのはずだ。 こんな思いに気づかれるはずがない。 …それなのに、なぜか男の視線は自分に、自分だけに向けられているように思えて。 「あ、の、そういえば、俺に何か?」 同僚なら使いっぱしりにされることもあるだろうが、この人をそんな風に使える奴がいるとは思えない。 まあ里長ならありうるが、里長からの命令が直に俺に下る可能性の方が少ないはずだ。 「顔がみたかっただけですよ?」 花を弄んでいたのと同じ手が、俺に触れる。 そっと頬を撫で、すぐに離れてしまったそのぬくもりに背筋が震えた。 …天性のたらしめ。俺みたいな無骨な男までうっかり落とすことはないだろうに。 「…花がよく似合いますね」 なんでもないように返したつもりの言葉はかすかに震えて、なんでもないように笑っている男に少しだけいらだつ。 からかわれているんだろうか。 「イルカ先生も。花が似合う」 また触れられる。 思わずぎゅっと目をつぶった。 …触れたもののすぐに目を見開くことになったんだが。 「だめでしょ?そんな顔したら」 全部欲しくなっちゃう。 「い、ま…キス…!?」 「ふふ…ねぇ。もう終わったんなら一緒に飲みに行きませんか?」 普段どおりの誘い文句。…ある意味挑戦的なそれに挑まないでいられるほど、俺は大人じゃない 「そうですね。…ちょっと泥だらけなんで体流してくる間待っていただければ」 にかっと笑ってやったら、何故か男の方が照れるからこっちまでいたたまれなくなってあわてて家に駆け込んだ。 「待ってますからー!」 大声が追いかけてきて、それがまた気恥ずかしい。 風呂から上がったら、そうしたら…何かが変わるかもしれない。ソレも決定的に。 花が似合う男を思って、湧き上がる幸福感に頬が緩む。 この思いも花のように咲くことを祈った。…あの人の側で。 ********************************************************************************* 適当。 ねむいのと血が足らんのでつぶれました…。花はきっと頭に咲いていると思います(*´∀`) ではではー!なにかご意見ご感想等ございますれば御気軽にお知らせくださいませ! |