「どうしたんですか」 塀に背を預け蹲る人を見かけたのは、陽盛りの路地。 こりゃあこの暑さに気分でも悪くなったんだろうと慌てては見たが、よくよく見ればその白い…いや銀髪って言うんだよな。たしか。 とにかくこの逆立った髪と、片目を隠すように曲がってつけられた額宛からして、この人は知り合いの上忍に間違いない。 少なくとも暑さで倒れるなんてことはまずありえない人だ。 ナルトの話によると二つ名の元ともなった写輪眼というのは、えらく燃費が悪いものらしい。 もしかして任務帰りにチャクラ切れ…? 「あの!?大丈夫ですか?」 声を掛けても反応がない。 チャクラ切れしたなら休ませればいいだけの話だが、動けなくなってそのままじっとしていたのなら確実にマズイ。 なにせこの暑さだ。どんなに鍛え上げられた忍だからといっても、チャクラもなしにこんなところでじっとしてたら具合が悪くなるに決まってる。 脱水だの熱中症という単語が頭を過ぎり、相手の反応を待っている余裕はなくなった。 「俺の家近くなんで、運びますよ!」 了承も得ずに担ぎ上げ、任務もかくやという素早さで走った。 ボロっちくも愛おしい憩いの我が家まで。 ***** 家についてすぐに玄関のたたきに上忍を横たわらせ、荷物を放り投げた。 とりあえず大急ぎで冷房は入れた。 それから…ああそれからどうしようか。 体温測って飲めそうなら水分取らせて、無理そうなら病院へ。 分かりきっている手順を実行しようとするのに、上忍の覆面がそれを邪魔する。 …これって、とっていいもんじゃないよな。やっぱり。 上忍であるこの人をこれだけ手荒に運びこんだにもかかわらず起きないって事は、相当なことだ。 「い、医療班…!」 手早く式を飛ばそうと印を組み始めた手を、何かが止めた。 「ん、…ああ、イルカせんせ…」 「大丈夫ですか!」 忍とは思えない鈍い動きからしても大丈夫なわけがないんだが、とっさにそう聞いていた。 大丈夫だったら普通あんな風に転がってるわけがないのにな…。 まあ意識が戻っただけまだましか。 「ごめんなさい。水、貰ってもいいですか…?」 「はい!」 かすれ声にはじかれたように冷蔵庫に手をかけ、麦茶のポットを取り出した。コップも引っつかんで戻ると、ぼんやりしていた上忍はためらいなくポットの方に手をかけ、そして。 「あ」 一気にそれを飲み干した。 だが驚いたのはその乱暴にも見える行動のせいじゃない。 …素顔が、丸見えだ。そりゃそうだ。飲み物飲むのにまさか鼻からって訳にもいくまい。できなかないけどどう考えたってこっちのが自然だ。 でも、でもだな。…なんだこの美形は。 「…ん。生き返る…ありがとうございます…あの、すみません後でべんしょう…も、ちょっとだけここで休ませていただけませんか…」 「へ!?あ、はい!どうぞうどうぞ!あの、俺!水分取れるもの買って来ます!」 なんだか居たたまれなくて上忍を乱暴に敷いた布団にこれまた乱暴に放り込むと、財布を引っつかんで家から飛び出していた。 ***** まあ買い物でちょっと冷静になって、家に帰ったら上忍がしょんぼりした顔で待ってて、しかもそれがまたなんていうか…美形は得だよな。俺だって男なのに一瞬どきっとしたもんな。 ここまで綺麗な顔してると腹も立たない。勝負のしようもないもんな。 どうやら推察どおりのことが起こったらしいと聞き、それならと素顔を見てしまった罪悪感もあってしばらくうちにいたらいいなんて言ってしまった。 …それが上忍の策ともしらずに。 独り身の寂しさを埋めてくれる生き物をうっかり1週間も家で養って、しかも元気になってきたら家事も手伝ってくれるし会話も楽しいしちょこちょこ俺のありあまる庇護欲を刺激するような顔もするし。 そんなことされたら…離れがたくなるだろう? まあそんなこんなでひっつかれてるうちに上忍はなぜか家に居つき、いなくなると寂しいしでついついそのままなんとなく一緒に暮らすのを俺も受け入れ…で、そんなことしてたらある日突然押し倒されたわけだが。 「イルカせんせなら拾ってくれると思ったんだもん」 これが上忍の言い分だ。 作戦だったのかとか、心配したのにとか、痛みと混乱もない交ぜになったまま詰ったら、倒れたのは本当だけどなんていうし! そんなこといわれたら、ほっとけないと思っちゃうじゃないか。 …そんなわけで、俺の家には今も上忍がのびのびと長く寝そべっている。 「イルカせんせ。大好き!」なんていいながら。 ********************************************************************************* 適当。 計画的落し物ねたばっかかいてるなぁ。 ではではー!ご意見ご感想等御気軽にどうぞ! |